どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

399

今の事を解決したら、シルクに自分の名の事を明かす。
わらわにとっては勇気の入ることを思った後、ラキュの部屋から出ていった。

今は廊下を歩いておる。

「あぁ……わらわ、えらい事を言ってしまったのぅ」

下を向いたわらわは、はぁ……とため息をこぼす。
あ、後悔はしてない、後悔はしてないのじゃが、なんと言うか責任……と言う奴かの? そう言う物が涌き出てきておる。

「うぅぅっ、胃がキリキリしてきおった。じゃがやらねばならんのじゃ……」

小声で頑張るぞっ、と呟きながら、わらわは部屋へ戻る。
あぁ……そうだ、シルクは部屋にいるのかの? フドウと話をしている筈じゃが……どうなんじゃろ? もう終わっているのかの?

まぁ、いなかったら待てば良いか。
しかし、フドウの奴、シルクに何を話しているのかのぅ? わらわ、すっごい心配じゃ。

「ここで、こんな事考えても仕方無いか。さっさと戻るかの」

そう呟き、足取り重く自分の部屋へと戻っていった。



姉上が僕の部屋から出ていった。
暫く僕はソファに座ったまま、ぽけぇっとする。

「姉上に言いたい事も言えたし、もう休もうかな」

ふと一息ついた後、呟いて立ち上がる。
そのままベットの方へと歩いていく。

「あ、そうだ。まだ用事があった」

うっかりしてたよ、忘れてそのまま寝る所だった。
まぁ明日でも良いんだけど、この用事は早い内に済ませた方が良いからね。

そう思って、僕は冷蔵庫の方へ歩いていき、そこからトマトジュースが入ったボトルを取り出す。

よし、準備が出来た、じゃぁ行こうか。

クスリと笑った後、僕は指を鳴らし棺桶を出現させる。
今から棺桶ワープを使って、ある場所へワープするんだ。
ある場合がなんなのか、説明するより、実際行った方が早いだろう。

あっでも、そこにあいつがいるとは限らない……まぁ、その時はその時か。

と言う訳で、棺桶の中に入る。
その瞬間、景色が暗転し身体がグワングワンと上下左右に揺らされる感覚に陥る。

そんな感覚に襲われる事数秒、目的地に辿り着いた。
ガチャっ……と、ゆっくり棺桶の扉を開けると……目の前に広がるのは、食道の景色。
そこの厨房に鬼騎がいた。
良かった、此処にいた、探す手間が省けたよ。

「やぁ、ちょっと時間ある?」

鬼騎は、驚いた様子で僕を見る。
皿洗いの途中なのかな? 手が止まっちゃってる、作業しなくて良いの? とは思ったけど、そんな事はおいておく。

「ねぇ、時間あるって聞いたんだけど?」
「え、あ、ちょっちょっと待ってくれや」

慌てながら返事すると、鬼騎は皿洗いをし始めた。
ふむ、来るタイミング間違えたかな? まぁ、いいか……すぐ終わるだろうし待ってるよ。

そう思い、椅子に座って待つ事にした。
……さっきから鬼騎がチラチラ僕を見てる、なに? 余所見してないで皿洗いしなよ。

まぁ、チラ見してくる理由は分かるけどさ。
あれでしょ? 何の用か想像つかないからでしょ? 鬼騎の所に来るのって滅多に無いからね。

だから動揺してるんだ、あの慌てた顔を見てると嫌でも分かるよ。

あ、そろそろ此処に来た理由を言った方が良いかもしれない。

ここに来たのは、さっき起きた騒動解決のお礼に来たんだよ。
殆どヘッグの奴が解決しちゃったけど、あいつが来てくれたから色々と余裕が出来た。

ヘタレで脳筋だけど、非常に助かったんだ。
……今の貶してないからね? ちゃんと褒めてるからね?

まぁ、褒めてるとか貶してるとかは置いといて、僕はお礼しに来たんだ。
ほら、こう言うのって何もしないと僕の性に合わないんだよ。

凄く気に食わない奴でもお礼はしないといけない。
まぁ……ハッキリとは言わないけどね、ぶっきらぼうに特製のトマトジュースを渡して、さっさと帰ってやる。

その時の鬼騎のリアクションに期待だね。
それが面白かったら、今度からかってやろう。
と言う楽しい事を思っていたら。

「待たせたな。で……なんか用か?」

怪しい視線を向けながら鬼騎がこっちにやって来る。
どうやら皿洗いが終わったみたいだ。
そんな警戒しなくても良いよ、今日はからかいには来てないから。

「ちょっとね、渡したい物があるんだ」
「……」

うわ、すっごい顔をしかめた。
「何言ってんだコイツ」って言いたげな顔をした、なに? 僕がプレゼントを渡すのがそんなに怪しい事に思う? そうだとしたら凄く心外だ。

……いや、イラつくのは今はよそう。
さっさとトマトジュースを渡して自分の部屋に帰れば良いんだ。

「はい、有り難く飲みなよ」

そう思って、ぶっきらぼうにトマトジュースが入ったボトルを鬼騎に手渡しながら言った。
さて、この後の鬼騎の様子を見てから帰ろうかな。

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