どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

56

あの騒動からもう何日が経っただろう、何時もの服を着せられてロアの部屋のテラスから空を見上げ思いに馳せる。
本当に地獄の様な1週間だった、いあれはそれ以上と言っても過言ではない、何が起こったのか簡単に説明しておこう。

捕まえたのがケールなケールが権利を貰った、権利って何だろうと疑問に思った俺、その時ヴァームが分かりやすく説明してくれた。
どうやら俺とラキュを捕まえたら『1週間コスプレさせ放題+オプション付き』と言う報酬を与えるとの事だった。
だから住民達は必死になって俺達を追い掛けていたらしい……全く良い迷惑だ、と言うかオプションって何なんだよ! と俺が思ってたらヴァームが一言こう言った「お客様に対するサービスです」そのサービス、絶対にまともな事じゃないだろう。

「さてお話しは以上です、さぁケール思う存分やりなさい」

もう突っ込むのも疲れてぐったりしていたらヴァームがそう言った、そしたらケールが俺に覆い被さり動けなくした、その結果色んなコスプレをされてケールに1週間襲われた、これを1週間だ……1週間も恥辱を受けたんだぞっ心が折れるぞ! ん? ケールに何されたかって? その質問にはノーコメントだ!
溜まりに貯まったストレスを吐き出すようにため息を吐き茜色の空を見る、あの美しい空には俺の写真は写っていない……安心した、今も尚写っていたら心が折れていた所だ。
因みにラキュは猫まみれになって1週間ずっと、「猫がぁぁ」って叫びながら、がたがた震えながら色々されていた、無抵抗で服を脱が乱れていく様は見ていて悲しかったしかなり心配だった、大丈夫だろうか? いや大丈夫じゃないだろうな……。

「しっるくぅ!」

おっと……奴が来たみたいだ。

「キスさせはぶぅっ!」

後ろから近付くロアに俺は正面を向いてチョップを頭に喰らわす、変な声が出てその場に止まってしまう、だが直ぐ様勢いを取り戻しタックルしてくる。

「何故最近叩いてくるのじゃ!」
「自分の胸に手を当てて良く考えて見ろ」

冷たい視線を向け冷ややかな声で語る、そしてロアを押し退け距離を取る。

するとロアは自分の胸に手を当てて考え出す……目を瞑って「んー……」と暫く考え、急に目を見開く。

「特に思い当たる事はないのぅ……」
「まじで言ってんのか?」

本当にこいつはなに言ってるんだろう……いや、分かってる筈だ俺。
ロアはそう言う奴だ! くそっイライラが止まらないぞ…。

「まぁ、固い事言わずにスキンシップするのじゃ!」
「固い事だと! って……こらっ近付くな!」

こいつ……さらっと言いやがったな? どさくさに紛れ抱き付こうとするのでロアを食い止めようとする! だが何時もの事ながら俺の力じゃ止められない、なす統べなく抱き付かれてしまった……。

「くふふふ、シルクの匂いは相変わらず良いものじゃのぅ」
「……」

うっとり目を細めるロア……くっそ、可愛いって思って力付くで引き剥がせない!

「では、キスするのじゃ」

向き合って、にやりと笑いゆっくりと俺の唇に近付いてくる、おっと、そうはさせない!

「ていっ!」

渾身のヘッドバットを喰らえ!

「ふっ、無駄じゃ!」
「……っ!」

だがロアは俺の行動を読んでいたらしく軽く交わされた、更に……。

「ほいっと!」
「うわっ!」

俺に足払いを仕掛ける……なっ、これ地面に頭ぶつける! と思った俺だが……ロアが俺の頭を支えてくれた、俺の今の状態は海老反りだ、真上にロアの顔があって、にやにや妖しく笑っている。

「……んっ」

そう思った矢先のキス、久し振りの口付け、と言うか態勢がキツい……そう俺が思っているとロアが手で支えてくれた、だからと言って助かった訳じゃない、体勢がキツいのとキスされそうな状況は変わってない。

「ちゅ……んぅ」
「くっ……んんっ!」

久し振りの口付けなのか何時もより激しい口付け、俺の事などお構いなしにしてくる。

「んっ……んん……くふっ」

何度も何度も角度を変え、時折目を細め頬を赤く染める、甘い……そして柔らかい唇、久し振りだから余計にこう思ってしまう、「理性が壊れる」と。

「くっ……んんっ」

小さな悲鳴を上げてしまう俺……するとロアは1度唇を離す、悪戯な視線を俺の方に向け妖しく笑ってくる、俺はロアを睨み付け言ってやる。

「相変わらず強引な奴だな」
「くふふ…そう誉めるでない」

俺の皮肉を間違った方に受けとりあの格好になる、そう言えばこれも久し振りだな。

「シルクは軽いからのぅ……簡単にこれが出来てしまう」

その格好はお姫様抱っこだ! 久し振りにされても嬉しくも何とも思わない、ただただ恥ずかしいだけだ! 本当に恥ずかしいだけなんだからな!

「それをされる度に何度も言ってると思うが今回も言うぞ……さっさと降ろせ!」

だからそう言ってやる、きっと鋭い視線でロアに言い放ってやった、だがロアは口元をにやつかせ無言で唇を近付けてくる、手で押し返そうとしても無駄、その頃にはもう口付けされていた。
今度のは、くちゅっ…ぴちゅっ……と言う音が小さく鳴っている、何だかやらしい……俺はそれを何時もの様に小刻みに震えながら耐えていた。
さらさらとしたロアの髪の毛……うっとりした目線で俺を見つめるロア、それらを見ていたら理性なんて吹っ飛んでしまう……暫く唇でのキスを続けていると、ロアは俺の唇を舌で抉じ開けて来る。

「っ!!」

これはいけない……今の状態でそんな事されたら余裕で理性が消え去る! 手でロアの頬に触れ、思い切り押す……しかし、全く動かなかった、どんだけ俺とキスしたいんだよ! と、内心思う。

「しりゅくぅ……」

キスをしたまま話し掛けてくるロア、まだ仕切りに俺の唇を抉じ開け様と奮闘中……そんな簡単に開けてたまるか。

「……ぷぁ」

暫くするとロアは諦めて唇を離す、初めて抵抗に成功した……でもなんだこの、もやもやした感じは。

「むぅ……押しに弱い癖に変に抵抗しおって、可愛くないぞ!」
「可愛くなくて結構だ、キスが終わったら降ろしてくれ」

じと目で見てくるロアを鼻で笑いながら言うと「ちっ」と舌打ちをしつつ、やっと降ろしてくれた。

「素直じゃない奴じゃ、本当はもっとして欲しくてたまらん癖に」 

と、その時そっぽを向いてそんな事を言ってくる、何を言い出すんだこいつは……直ぐに言い返さねば。

「べっ別にそんな事思ってない!勘違いすんな阿呆っ」

と言う事言ってみた、これで何とかなるだろう……そう思ったのだが。

「キスされてる時のシルクはまるで小動物の様に可愛い……目で語っているのじゃ、もっと欲しいとな」

ロアはしゃがみこみ、いじける様子を見せぶつぶつと言いがかりを言ってくる。

「はっはぁ!?そんな顔してないぞ!」

1度足りともそんな顔はしていない、する筈がない!

「目の前で見たわらわが言うんじゃ、間違いないっ!」
「いや、間違いだらけだからな!」

ロアはこっちを向いて言い放ってくる、そして俺に抱き付いて来た! うっ……胸の感触が、ダイレクトに感じる、俺は男だぞ? 抱きつくのに抵抗は無いのかよ。

「ロアっ! お前少しは弟を見習え!」
「ふんっ……あんな憎まれ口ばかり叩く奴、見習う事ありはしないのじゃ!」

いや、色々とあるからな! 特にラキュの大人しい所を見習って欲しい。

「それよりシルク! このままベットにいかないか?色々とやろうじゃないか!」

話を変えやがった……しかもさっきまでいじけてたのに何だよその満面の笑みは! ベットに行こうかって何でそうなるんだよ! 話が飛躍しすぎだろうが……しかも色々するって直球過ぎだろう。

「はははっ……ロア、お前って本当に欲望の赴くまま動いてるんだな」
「くふふふっ、そう誉めるでない」
「だから誉めて無いって言ってるだろ阿呆が!」

もうこの城に来て大分経つと言うのにまだロアの事が分からない……本当に何なんだよ。
好きだからキスするとか、俺を誘拐した事だとか…行動力が半端じゃない、これはただ好きなだけでする行動じゃない筈だ。

「ん、何じゃ?急に難しい顔をして」

ロアは俺に胸を押し当ててくる、やめろ……今真剣に悩んでるんだよ!

「別に何でもない!」
「ではベットに行くのじゃ!」
「行かないっ、まだ夕方だろう!」

その後、俺はロアに抱き付かれたまま阿呆らしい会話を続けた、呆れる程に突拍子も無い事を言って俺を困らせる、ロアに会ってから録な事が起きていない気がする。
終始疲れっぱなしで休む暇も無い事が長い事続いている、もう休ませてくれよ、そう思った事は何度あっただろう……だがそう思う一方、これは本当に自分でも信じられないのだが、心の奥底でこの生活が心地良く感じている俺がいる。

「るく……シルク!」
「っ!なっなんだ?」

おっと……深く考えてロアに呼ばれているのに気付いていなかったみたいだ。

「全く、さっきから呼んでおったのに……」
「すっすまん…」

頬を膨らませるロア……抱き付かれてる状態だから至近距離でその表情を見る、かっ可愛い……。

「では、今一度言うぞ! わらわは急にシルクのコスプレ試写会をしたくなったから、これからするのじゃ!」
「それ、俺がうんって言うと思うか? 絶対に嫌だからな!」

俺は心の限り叫んだ、本当にお前は自分の欲望に正直だな!

俺が断った瞬間、ロアは「えぇっ!」と言って、ぽこぽこ俺を殴って来た、それ地味に痛いから止めてくれ、本当に休む暇も無いと言う奴だな……これは誰かに相談した方が良い、さて誰に相談するべきか……よし! この騒動が終わったらそれとなく「あいつ」に聞いて見るとするか。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品