どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

48

「くそっ……これは不味いかな?」

先程休憩していた俺とラキュ……その休憩は長く続かなかった。
何故かって? その理由は……。

「ぶほぉぉっ! シルクたぁぁんっ!」

二足で走ってくる豚見たいな人間、略して豚人間が息を乱れさせながら俺とラキュを追って来るからだ、物凄く鼻息が荒い……もう大興奮だな。
そいつは俺が座って息を整えた瞬間突然現れた、「ぶひひっみぃーつけたぁ!」と言って襲い掛かって来たと言う訳だ。
だがそれはそいつだけでは無かった、そいつの側には……。

「ラキュ様ぁぁっああっラキュ様ラキュ様ぁぁ! はぁはぁ…はぁはぁ…」

と発狂しながら追って来る骨だけの人も追って来る、骨だけなのにこいつも息が荒い……軽くホラーだ。

「「まてぇぇぇ!」」

その2人だけではなく大勢の人?が追い掛けて来ている、もう路地がぎゅうぎゅうだ、それでちゃんと走れてるから驚きだ、どうしてこうなった!

「でぇ…でぇ……らっきゅ……まっ……て」

ラキュは軽快にそれから逃げる、俺はと言うともう体力の限界が近かい……走る速さはどんどん落ちていき立ち止まりそうになる、もう俺の表情は苦悶そのもの……。

「頑張れシルク君! 奴等に捕まったら死よりも恐ろしい地獄が待っているよ!」

そんな中、必死に声を掛けてくれるラキュ……そうだ、あんな奴等に捕まったら地獄(強制コスプレ)が始まる!

「そん…なの…はっ……いやだ!」
「そうっその意気だよ!」

俺はラキュの言葉でなんとか持ち直す、だがもう足が重くて辛い。

「…仕方ない」

そう言ってラキュは振り返り俺の方へ走ってくる、何事だ? と感じさせる事なく……少し怖い表情で俺を持ち上げ肩に担ぐ。

「っ!」

抵抗する暇も無く担がれる俺。

「……飛ぶよ」

そしてラキュがそう一言呟く……すると鳥が羽ばたく時の羽音が響く、ばさぁぁっと言う感じにだ。

「……って、ラキュは飛べるのか?」
「まぁドラキュラだからね、飛べるよ」

そう言って微笑むラキュの背に漆黒の大きないかにもドラキュラ! って感じの翼が生えていた、凄く格好いい……。

だがそんな事をしている内に追い掛けて来る奴等が近くによってくる。

「もう住民達を使って来るとはね……」

意味深な言葉を呟いたラキュは思い切り地面を蹴った! 浮遊感が俺に伝わる……そっ空を飛んだ! しかも一瞬でこんなに高くまで……城下町と城が見渡せる。

「どうみても不味い事になったね」
「そっそうなのか? 取り敢えず、降りて貰って良いか?」
「ごめん、それは無理だよ」

即答で断られてしまった……ラキュは上空で翼をはためかせながら話してくる、肩に担がれてるから不安定で超怖い、こんな体験をしたのは3度目だ。

「取り敢えずあそこに行こうか…」
「あそこ?」

またまた意味深な事を言って右方向を見据えてその方向に飛んで行く。

「……っ」

うぉっ……おっ落ちる! そうならない様に必死にしがみつく、ラキュの腰辺りの衣服を掴んで離さない様にする。
何度体験してもこれは超怖い、今回は助けて貰ってるから文句は言わないで置こう。


「…さっ、シルク君着いたよ」
「……おぅ」

あぁ……怖かった、あれからラキュは急降下したから「ぎゃぁぁぁぁ」って叫んでしまった。
で、たどり着いたのはじめじめした場所だ、石壁で周りが覆われた場所…どう見ても行き止まりじゃないか!

「えと、どうだったかな? 最近来てないからうろ覚えだよ……」
「…?」

そう思う俺に構わず目の前の壁をぺたぺたと触っていく……なっ何をしているんだ? ラキュの訳の分からない行動に戸惑ってしまう。

「よし、何とか出来た…シルク君、後ろに下がってくれる?」
「……?」
「良いから」

良くわからないが……言う通りに下がってみよう、すると……ゴゴゴッーーと大きな音をたてて地面に四角の穴が開く。

「……!!」

隠し扉……いや、隠し穴か? そんな物がこの城下町にあったのか!?

「驚いた?これは城下町地下の入り口だよ」

そう言って穴を飛び越え俺の方へやってくる、そして腕を掴んで穴の方に走る。

「じゃ、行こうか……」
「行くって何処へ?」

疑問を浮かべラキュに聞くが彼は無言のまま、にっこりと微笑んだ……察してしまった。

「まっ待てラ……」
「ごめん、もう無理」

制止を促すのが遅かった……俺は予想通り穴へと落ちて行く。

「ぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「くふふふ……声裏返ってるよ?」

そう言うラキュは落ちていると言うのに冷静だ、今日こんなのばっかりだな……と言うか今落ちてる穴……これは一体何なんだ? そう感じた時だ、ラキュが俺をまた肩に担いでくる。

「舌噛まないでね?」
「……え?」

その不吉な一言はなんだ? 気の抜けた声を俺が上げた時、その理由は直ぐに分かった。

「よっ……」

すたんっーーとラキュは軽快に地面に着地、その勢いで俺は舌を少し噛んでしまった……痛い、くそっ! こうなる事を予測してたなら事前にその事を言っておいてくれ! 急に言われても対処不可能だ!

「今の所ここにいれば安心だよ」

俺の怒りは何のその……ラキュに下ろされ地に足を着く俺、たどり着いたその場所は。

「……夜?」

そう、周りは夜なのだ……上を見上げれば俺が落ちてきた穴が見える、そこから光が射していて少し幻想的だ。

「……っ」

じっくり見ていると、ある事に気が付いた、落ちてきたこの場にあっあら可笑しい物が目に写っているのだ。

「月だ……星もある!」

目に見えたのは神々しく白く輝く三日月と散りばめられた星……。

「ふふ……綺麗な場所でしょ?」
「確かにそうだが……どっどうなってるんだ?」

不思議な光景に同様する俺は周りを見てみる、見た所ここは上にあった街並みと代わり無い路地が見える、路地だから人通りは少ないがここにも人では無い奴等が歩いていた。

「此処は城下町地下一階だよ、因みに此処は上と違って夜でしょ?
 ここは何時も夜だから気にしないでね」

じょっ城下町地下一階? 何時も夜だから気にするな……だと? 何もかもが有り得なすぎて気にせずにはいられない! とっ取り敢えずその事は今は置いておいてこれだけは聞いておこう。

「此処はどんな場所なんだ?」

そんな疑問を浮かべるとラキュが説明してくれる。

「あの城下町は住む人が多くてね…住む所が無くて地下に街を造ったんだよ」

成る程そう言う理由か、住民が増えたから地下に街を作ったか……此処に来てから常識離れな物を見てきたが……ここまで来たか。
ロアが軽く「よしっ地下に街を作るのじゃ!」と言ったのが目に写ってしまった……。

「そっそうか……地上とはあんまり変わらないんだな……」
「んー……上と違う所と言えば此処には城が無い事くらいかな? だから姉上達が居なくて安心とはいかないけど隠れられる筈だよ」

ラキュは路地の方へと歩いて行くからそれに着いて行く、城が無いならそこに住むロアがいないのは当然だ……ラキュは俺に振り返り滅入った表情で語る。

「姉上が僕とシルク君に懸賞金を掛けた……」
「何でそんな事が分かるんだ?」

ラキュが急に気になる事を言ったのですかさず聞いてみる。

「上にいた住民達が追い掛けて来たでしょ? あれが証拠さ、姉上達が本腰を入れ始めたと言う訳さ」
「それ……不味くないか?」

苦笑しつつ俺は語る、聞いていたらもう詰んでるんじゃ無いか? と思う。

「いや、ここまでは情報は届いて無いみたいだよ? だって追い掛けて来ないでしょ?」

たっ確かにそうだ……情報が届いていれば地上同様に追い掛けて来る筈だ。

「それと姉上達が住民達を動かしただけで終わるとは思えない……きっとあの魔法を発動する」

地上であんなに追い掛けられたのに気になっている『あの魔法』を発動する……圧倒的不利な状況に一瞬理解が出来なかった、そう言えばラキュは言っていた"あの魔法"一体それは何なんなんだ?

「あっ言い忘れたけど懸賞金と言うのはお金じゃないと思う、それは僕とシルクにとって苦行になる物だと思う」
「……」

俺は恐ろしさのあまり身体が震えてしまった、くっ苦行……へっ変な汗が吹き出て来た。

「シルク君……作戦を立てようか、城下町脱出の作戦をね!」

滅入った表情から一変気合いの入った表情になる、ラキュの眠たい感じの目が真剣その物になる、ラキュは諦めてはいなかった! 俺は無言で頷き気合いを入れる、どうするべきか……真剣に良く考えなければいけないな。

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