どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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今回のコスプレは水着だった、因みに色は白色で可愛い感じのビキニ……ラキュは既にコスプレされていたが再びコスプレさせられて俺同様に水着のコスプレをしている、色は黒、クールな感じのビキニだ。
あぁ……胃がきりきりとダメージを受けていくのが分かる、ヴァームは何で男にビキニを着せようと思ったのか? 訳が分からなかった……。

そんな事を乗り越えて次の日になる、ストレスでまた風邪になるかと思ったがそんな事は無かった。
因みに今の服装は勝手に女性物に仕立てあげられた俺の服を着ている、今朝寝起きと共に襲撃されてこの服を着せられた……俺に安息の時間は無いのだ、でもこの服装が一番楽だと思ってしまっている俺がいる、そんな俺に言っておこう……これっ! 女性が着る服だからな? 安心するんじゃないぞ!

「はぁ……」
「ため息なんかついてどうしたの? なんでかは想像は付くけど……」

俺がため息を吐くと隣にいたラキュが声を掛けて来た、彼もまた被害者、今日はバニースーツを着せられている。
そのバニースーツは垂れ耳のウサ耳が頭にあり、胸元がV字になっている、ヴァーム曰く「チラ見せです!」と言っていたが俺には理解出来ない、それだけならまだしも網タイツを履かされている。
正直、クールビューティで可愛いと思ったが、決して本人に言わないでおこう、と言うかこれ俺より酷いじゃないか?

こっこんな事考えてたら気分が滅入ってしまうな……話を変えよう、そうだ……今俺達がいる場所を言っておこう。
今、いるのは俺の店だ、あれから開店してなかったからな……やっと開店したと言う訳だ、どうやら俺が寝込んでる間、ヴァームとラムが店の準備とかをしてくれたらしい。
圧倒的感謝だ、内装も1度来た時よりもぴかぴか、シンプルな木造造りの内装、その棚に色んな商品が並んでいる、それを見渡していた時だ、ラキュが暗い表情で話してきた。

「ねぇ、シルク君服を交換しない?」
「すまん絶対に嫌だ」
「だよね、ごめんね……」
「いや、こっちこそごめん……」

二人同時のため息…店内には既にお客がいるがそんなの関係あるか! 重苦しい心境になったんだ、ため息ぐらいつかせて欲しい。

「ラキュ様っ、商品の補充が完了しましたの! それにしてもそのバニースーツ……垂れ耳が可愛くて凄く似合ってますわっ」

ラムが身体を、ふるふるとツインテールを振るわせながらラキュに話し掛けて来た、今地雷を踏んだな……。

「ありがとうラム」

あれ? 怒るかと思ったが俺の想像とは違っていた、ラキュは笑顔を浮かべラムに微笑み掛ける。

「ラム……」

ラキュはカウンターに両手を置いてラムに笑顔のまま話し掛ける。
……少し威圧感を感じた。

「なんですの?」

それを感じないラムは小首を傾げ疑問を浮かべる。

「それ以上このバニースーツを誉めたら……ぶちまけるよ? 分かったらこのまま失せなよ」

怒っていないかと思ったがそんな事はなかった、いつもの優しい少年の様な声音とうってかわって冷たい声音の一言に凄まじい狂気を感じた、ぶっぶちまけるって一体何をぶちまけるんだよ……ラムはその言葉を聞いた瞬間に身体が、ごぼぼっーーと沸騰してしまう、今興奮したな……恍惚な笑みを浮かべたラムは俺とラキュに一礼して商品棚の方へと掛けていく。

「……はぁ」

再び大きなため息を付くラキュ……。

「お客、結構いるな」
「そうだね……あのコスプレ狂いの糞ドラゴンが素敵なコスプレをした店員達がお出迎えって言うポスターを配ったみたいだよ」

あのドラゴンめ、余計な事をしやがって……だから開店初日にこんなに客が来ているのか。
目の前に写ったのは大勢のお客、その中には色んな奴がいて商品を見ている、中には「でへへへ……」と気持ちの悪い声を出しながら俺とラキュを見つめる客もいる、それもこれも全てヴァームのせいだと言うのか……。

「そうか……なぁ、嫌ならそのバニースーツ脱いだらどうだ?」
「……駄目なんだよ」

至極当たり前の事を俺が話すと、急にラキュが自分の身体を押さえ震え始めた、あのラキュが怖がっているだと?

「どっどうしてだ?」

恐る恐る聞いてみる。すると……。

「猫……」
「は?」
「脱いだらこの場に大量の黒猫を出現させる魔法を掛けているんだよ、あの糞ドラゴンは!」

……よっ良く分からないがその程度なら脱いで大丈夫じゃないか? 猫は可愛い生き物だから苦にはならないだろう。

「なんだ、そんな事か……」
「シルク君! 君にとってはそんな事でも僕にとっては深刻な問題なんだよ!」

怒られてしまった……両肩を持たれてがくがく揺らされる俺、猫と何かあったんだな。

「すいません、店員さん」

おっと、お客が話し掛けて来た、ラキュの手を払って前を見る、そこには蜥蜴とかげ男がいた、こいつはリザードマンだったな……ん? この男シルクハットを被ってる、何処かであった様な気がする。

「何かご用ですか?」

何時も喋っている言葉とは違い言葉使いを営業っぽくする、多分会った気がするのは気のせいだろう。

「そちらの通常の服を来た男の娘さん……この海賊コスをしてくれないかい?」

あぁ……この鼻息が凄いリダードマン、前に会ったわ、俺がメイド服を来た時に出会ったリダードマンだ。
そいつは『コスプレ表』と言うボードを持って指を指す、そこには、『クールでエレガントな海賊コスプレ! 1回1000G』と書かれている。

「あっ、オプションで尻を踏んでくれないだろうか? あと頬に強めのビンタも1つ頼もうか!」

きりっとしたキメ顔をしてる所悪いが、俺はこいつに言ってやらねばいけない……。

「阿呆か貴様、誰がやるかそんな物っ分かったら2度とその面見せるな!」
「ふっ……辛辣な一言恐悦至極だね」

そう言ってリダードマンはにやっと笑ってボードをカウンターに置いて去っていく。

「どうやら色々としてくれたみたいだね……」
「あぁ、そうだな」

そのボードを手にして見る。

『可愛い男の娘コスプレがコスプレしてくれるお店は雑貨屋シルクだけ! 因みに色々売ってますよ』

物売りの店だった筈なのに趣向が変わってしまっている、本来は雑貨屋だったのに「次いでにやるか…」と言う感じになってしまった……。

「人間の店員さーん、ビキニアーマーのコスプレお願いします! それで写真撮影おねがいしまーす!」
「ドラキュラさん、是非このウェディングドレスを着て下さい! オプションは疑似結婚式でお願いします!」

色んな客が色んなふざけた事を言ってくる……はははっ此処までくると笑うしかないな。

「さぁ人間の店員さん! このビキニアーマーを是非!」
「ドラキュラさん! 結婚式をあげましょう!」

俺とラキュは深呼吸する……1度心を落ち着けるんだ、じゃないと思わずこいつ等を殴り飛ばしてしまいそうだ。

「皆様っ、料金は前払いでお願いしますの!」

ラムはお客からお金を貰っていく……なるほどラムも荷担していると言う訳か。

「あははは……シルク君」
「あぁ、分かってる」

俺とラキュは顔を見合せお互いの気持ちを確認する、どうやらラキュも同じ事を思っているみたいだ。

「逃げるよ!」
「分かってる!」

そんな訳で俺とラキュの逃走劇が始まる、ラキュを先頭に休憩室の扉を開けて逃げ出す、そこには裏口の扉がある。

「何処に行きますの!お待ちなさいですわ!」

ラムそう叫ぶが知った事か! こんな事が起きたら素直に逃げるに限る……お互い場数を踏んでいるんだ、後はどう逃げるかだな。
休憩室に入り裏口の扉を素早く開けて外へ出る俺達、出来るだけ早く逃げる! さぁ風の様に掛けるんだ理不尽なコスプレから逃げる為に!

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