どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

44

昨日1日ゆっくり休んで、もうすっかり体調が良くなった、まぁゆっくり眠るまで大分時間が掛かってしまったが……それはロアが部屋を去った時に遡る。


「…にひひひぃ」

魂の抜けた鬼騎に未だ抱き付いているメェ。

「そろそろ帰ってくれないかなぁ……」

そんな心からの呟きを口にするも一行に帰る気配は無い……もう目を瞑ってただ耐えるしか無いと思った時だ、突如メェと鬼騎が姿を消した、驚きのあまり声を失った俺……だが驚きはさらに連鎖した。

「ぬわぁぁぁっ!」

と言う声あげて今度はベットの真上からロアが降って来た。

「……!!」

目を見開く俺の身体に落ちてくるロア。

「ぐはっ!!」

そんな事をされたら当然悲鳴を上げてしまう俺、ロアは直ぐ様ベットから降りあたふたと慌てる。

「なっなっ何でこんな所に……」

と声を上げるロアに声を掛けようとしたその時だ、扉の前にヴァームが現れる、何? 今日は突然人が現れる日なのか? と思った時、ヴァームはゆっくりと口を開く。

「ロア様、ラキュ様のご命令です、今日一日ゆっくり休んで寝ろとの事です、と言う訳でロア様が今日一日働いたら……爆発します
のでご注意を……では」

それだけ言ってヴァーム直ぐには消えてしまった、そして俺とロアは顔を見合せ。

「「えぇぇぇぇ!!」」

2人して叫んでしまった、これは叫ぶしかないだろう……と言うかなんだよ働いたら爆発するって! と、そんな事があり時間は経つ、ロアとの2人の休日は以外な事に何も無かった……ただロアと食事したり話したりしただけだ。
まぁ、ラキュがくれた強引な休日のお陰でロアもゆっくり休めたと思うのでよしとしよう……で、昨日の夜寝る時間になってロアが「どうせなら一緒に寝るのじゃ」と言う事になり俺は何故か黙ってしまい一緒のベットに入って寝た……ここに来た時から何度も同じ様な事を言われて一緒に寝てきたが、あの時のロアの言い方は妙に色っぽかったのを覚えてる。


そんな訳でに至る、俺は上体を起こし伸びをする、そして隣でまだ寝ているロアを見る。

「むにゃ……んんっ」

気持ち良さそうに眠ってる……俺は上体を起こしロアの頬を軽くつつく、するとくすぐったそうに身をよじる……可愛い寝顔だ、とその時扉を叩く音が聞こえる、誰だ?

「お早うございますシルクさん」

ヴァームだ、何時ものメイド服を着込んで深々と礼をする、なんか久しぶりに会った気がするのは気のせいか?

「おはようヴァーム」

まぁそんな事はおいておき挨拶を返す。

「うふふふ、もうお元気そうですね……安心しました」

どうやら心配してくれてたみたいだ、ヴァームにも迷惑を掛けてしまった、謝らないといけない……そう思った時だ。

「さて、シルクさん……」

呟きながらゆっくりと近付いて俺の前にやってくるヴァームその顔を良く見ると妖しく笑っていた。

「久しぶりにやりましょうか」

その瞬間、背筋にとてつもない悪寒が走った。

「一応聞くが何をだ?」
「決まってるじゃありませんか……コスプレです」

俺は目を見開き身体中に力を込める、ベットから飛び上がりヴァームの横を抜け全力疾走する! 病気が治ったのにコスプレなんてされてたまるか!

「あらあら、なぜ逃げるんですか? させませんよ……」

指を鳴らすヴァーム、すると目の前に巨大な水の塊が現れた、気付いた時にはもう遅かった……俺はその水塊にぶち当たってしまう、こっこのぶにぶにした感じ……もしかしなくてもラムか!

「お元気になられた様で嬉しいですわ、一応言っておきますけどその中では呼吸が出来ますのでご安心を」

思った通りだった、このお嬢様口調はラムに間違いない、ラムはぐねぐねと形を変え何時もの人型になる。

「ごぼごぼっ……ごぼぼっ! 」

離れる様に必死に叫ぶがヴァームとラムには届かず、くっ……水の中にいるから声が届かないのは当たり前か。

「シルクさん、貴方は勘違いしています、私は病気の完治祝いにコスプレさせてあげるんですよ?
ありがたくコスプレしてください!」

誰がするかっ! なんだよ病気の完治にコスプレって、そんなもん有り難迷惑だ!

「ヴァーム、約束は守ってくれるんですわよね?」

ラムの声が聞こえる、ん? ラムはヴァームの手助けをしているのか?

「分かっていますよ、後程ロア様の恥ずかしがってる写真や動画を渡します」
「分かってるのなら良いですわ、あぁ……何だかたぎってきますの」

成る程……買収されたと言う訳かあのドMスライム、いや待てよ? 今の台詞から察するにロアとの一面をヴァームに見られてたと言う事になるな……盗撮しやがったのかこの野郎!

「うふふ、興奮しすぎて沸騰しない様に注意してくださいね?」
「分かっていますわよ!」

そう言って近づいてくるヴァームは胸元に手を入れ服を出す、本当にその胸ポケット便利だな!

「さて、今回は趣向を変えて水着でいってみましょうか」

そう言って出されたのは白いビキニだ、ははっ死んでも着たくない!

「さぁラムさん! 服を溶かして下さいっエロ漫画の様に!」
「わっかりましたわぁっ!」

ふざけんなっ、何だよその展開は! くっ……何かしゅわしゅわして来たぞ? 本当に服を溶かす気でいる、このピンチにロアはすやすや寝てる、助けを呼べそうもない! いやこの場合起きてくれない方が良い……奴は絶対にヴァーム側に加勢する!

「ごぼっがぼぼっ……」
「ご安心下さいですのっ、間違っても身体は溶かしませんわ」

それも怖いが、何より服を溶かされた後が怖い! 今までで散々好き放題やられて抵抗しても無駄だと思い無抵抗だったがこれだけは絶対に阻止してやる! 火事場の馬鹿力と言うのを見せてやる!

「ごぼっ……がぼっ!」
「あぁぁんっ! 暴れちゃいやですのっ」
「らっラムさん、その喘ぎ声はグレーゾーンです!」

全力で暴れる俺、服が溶ける前に脱出する!

「シルクさんっ、抵抗は止めてください」

此処でヴァームがロアの中に手を突っ込んでくる、俺を押さえこむつもりか!

「ひぃぃんっそこ弱いんですわぁっ!」
「ラムっ少し黙りなさい!」

くねくねと身をよじるラムは危なげな発言をしている、珍しくヴァームが突っ込んでる……と思ってる場合じゃない! 俺は身を傾けヴァームの手を交わす。

「あっ……たぎるったぎってしまいますわっ!」
「くっ、シルクさん!動かないで下さいっ!」

そうは行くかっ! 捕まったらコスプレされるんだ絶対に動きを止めてなるものか! このままだと全裸になる事は必須! ならば逃げるしか無いだろう!

「このっ!」

するとヴァームは水着を床に置きもう片方の手をヴァームに突っ込む! その時だった……。

「あっあぁ……あぁぁぁっ!」
「ちょっ、ラム!沸騰は駄目ですよ!」

っ、熱い……熱くなって来た!不味いっラムが別の意味でいってしまう! 完全に興奮する前に逃げないないと! だがヴァームの方も必死で俺を捉えようとしてる……この猛攻を交わすのに必死で此所から脱出出来ない! くそっ! こんなの何時まで持つか分からない……この時、俺の脳裏にある事が思い浮かんだ。
・捕まれば服を溶かされ全裸
・このままだと全身火傷を負った上で服を溶かされ全裸
・ヴァームの手を回避する事に精一杯で此所からの脱出が困難
……俺は既に詰んでいる。

またコスプレされる……またストレスがたまる……こいつらの思い通りになってしまう、駄目だ……そんなのは嫌だ! だがもう勝ち目がないじゃないか! 俺が諦めようとしたその時だ。

「シルク君、貸し1つだよ」

何も無い所から棺桶が現れる……この棺桶と声は!

「僕が助けてあげるよ、有り難く思いなよ?」

その声と共にラキュが姿を現す。

「ラキュ様!」
「やぁヴァーム…何時も言ってるけど無理強いは良くないよ?」

そして、ラキュがヴァームに向かってハイキックを繰り出す! それを後ろに飛んで交わすヴァーム。

「っ、しまった!」

ラキュは無邪気に微笑みラムの中に手を突っ込む!

「あっラキュ様……そっそんなごっ強引には…いっいけませんわ」
「ラム……君は相変わらずドMだね」
「っ!それは……誉め言葉ですわぁぁ!」

っ! その台詞はラムには禁句だ!

「よっとっシルク君回収! 後は……ほいっと!」

じゅぽんっーーとラムの身体から抜け出した俺、ラキュは俺を肩に担いだ後身震いするラムに向かって。

「じゃぁね……」

額に凸ピンを喰らわせる。

「ひゃんっ!」

凸ピンとは思えない程の威力を受け盛大に吹っ飛んで行くラムはヴァームに当たってしまう。

「くっ、邪魔です! 退きなさいっこの変態スライム!」
「ドMのラムにそんな事言って良いの? もう限界なんじゃないかな?」

そう言ってラキュは棺桶の方へと走っていく。

「さっさいっさいっ……」
「! らっラム! おちつい……」
「最高っですわぁぁぁ!!」

遂にラムが沸騰した! 白い蒸気が身体中から吹き上がりヴァームを覆う……凄い、ラムの興奮を利用してあのピンチを切り抜けた。

「ありがとうラキュ」
「お礼なんて良いよ、僕も同じ立場なんだからさ……」

苦笑するラキュは棺桶の扉を開き一歩脚を踏み入れる、何はともあれ助かった! 初めてあの窮地から脱出出来たんじゃないか? これは本当に感謝しなければいけない!

「取り敢えず僕の部屋に行こうか……」
「あぁ、その辺は任せるよ」

「くふふ」と笑うラキュ……このご恩は絶対に忘れない様にしないとな、だが1つ気掛かりなのは……ラキュは何で犬耳と犬尻尾をつけてるんだ? と言う事だ。

……あっ、成る程俺と「同じ立場」と言う台詞で分かった、ラキュもヴァームの被害者と言う訳か、俺は心の奥底で思って深く同情する、ラキュの部屋についたら今まででの苦労を聞いてあげようかな。

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