どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

296

それは昼間に起きた。
嵐のように、なんの予告もなく唐突にソレはやってきたんだ……。

「えと……なんだって?」

それを聞かされたのは昼食の最中。
食堂でパンをかじりながら俺は隣でニヤニヤしながら俺を見てるロアに聞き返した。

「んう? 聞こえとらんかったのかえ? 今度は良く聞くのじゃぞ? はろうぃんパーティをしようと言ったのじゃ、シルクの所では今の時期するんじゃろ?」

はろうぃん……間違いない、今ハロウィンって言ったな。

「何を企んでるんだ?」
「む、酷いのぅ……まるで迷惑な事をしてるかの様な物言いじゃ」

勿論そう言う風に言ったんだ。
だから、目を細めて睨み付けてやる、ロアはケラケラ笑ってる。

ロアがこう言う笑い方してる時は今後良くない事が起きる予兆だ。

つまりだ、ハロウィンでロアは何かをするつもりなのだ。
俺はソレを予測して対策し逃げるか隠れなきゃいけない……。

「……しっシルク? なんでそんなにわらわを見るのじゃ、てっ照れるじゃろう」
「ん、あぁ……ごめん」

だが、今ロアが何を企んでるか分からない。
だから対策のしようがない、さて……どうするかな。

「おっおぅ……がっガン見ではないか、なんじゃ? あれか? あれなのか? 今日のシルクはわらわを凝視する日なのかえ?」

……顔を紅くしながら可笑しな事言ってるな。
まぁ無視だ無視、ここで下手に突っ込んだらもっと可笑しな事になる。

「……ロア、ハロウィンで何をするつもりだ? と言うか……何するか知ってるのか?」

それすら知らないのに「やる」って言ってないよな?
あ、そう言えば……ハロウィンの事、ラムも聞きに来たなぁ……もしかしてラムはロアの命令で俺に聞きに来たのか?

……まぁ、考えるまでもなくそうだろうな。

「くふふふふ、その点は安心するのじゃ。情報は確りと得ておるのじゃ」
「得てるのか、そうか」

ほらみろ、ラムに言った事は既に説明されてる。
自分で分かったわけじゃないのに胸を張って、むふぅ……と鼻息を出してドヤ顔をしてくる。

「そうなのじゃ、じゃから心配は無用じゃ」

何を得意気にいってんだか……お前の知るハロウィンの知識は元々俺が知るハロウィンの知識だろうが。

「じゃからな? シルクには協力してほしいのじゃ」
「協力か……勿論、ハロウィンの準備をだよな」
「ほほぉ、良く分かってるではないか」

正直分かりたくなかった。
とてつもなく嫌な予感がするからだ。
……俺、ラムになんていったかな? 恐らくだが、ロアはラムから聞いた情報をやりたがってるんだ。

なんか変な事言ってないよな?
……よし、言った事を可能な限り思い出してみるか……えーと……確か。

・街に屋台が出て皆が楽しんだ。
・トリックオアトリートと言ってお菓子を貰う。

あとは…………。
俺は目を瞑って暫く考える。
そして思い出した。

「分かってるのなら話が早いのじゃ、シルクは今からヴァームの部屋に……んあ?  どうしたシルク、黙って立っちおって……」

思い出した瞬間、俺は無表情で立ち上がり斜め上を向く。
さてと……やらかしたなぁ、俺はすっごくやらかした。

昔の俺に言ってやりたいよ、今まで起きた事を考えて発言しろ! ってな。

……ちらり。
ロアを見てみると、不思議そうに俺を見上げてる。

「ロア」
「ん?」
「お前の言いたい事は分かった……だから直ぐに行動してくる」

俺がそう言うと、ロアは暫くポカーンとした後、ぱぁぁっ! と瞳を輝かせる。

「おぉぉぉっ! そうかっ、そんなに熱心に協力してくれるのか! わらわは嬉しいぞっ」
「あぁ、俺はその為なら行動するぞ……じゃぁな」

超強引だが、話しを終わらせる。
はやく、はやく此処から逃げるんだ、はやくはやくはやくはやく……。

頭の中でそればかり考えてしまう。
あぁ、焦る……超焦る。

「うむ」

ロアは笑顔で返事する、それを見た後俺は足早に部屋を出た。

そして、廊下を走る、タッタッタッタッ! と勢い良く廊下を走る。

不味い不味い不味い不味い……。
俺がラムに与えた知識の性で不味い事になってる。

くっ……なんで俺はあんな……あんな事を言ったんだ。
ハロウィンは色んな物に仮装する日だと、なんで言ったんだ俺! バカじゃないか?

「いや、いっ今は悔やんでも仕方ない……」

そう、仕方無いのだ。
今する事は悔やむ事より、今後起きるであろう強制コスプレをどうすべきかを考える為に行動する事が先決だ。

それと、この事をラキュにも伝えないといけない。
そして、土下座しないとな……そう思い俺は走った、力の限り走った。

全てはコスプレを回避するために……!

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