どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
301
「うふふふふぅ、ダメねぇ、自己紹介は挨拶の基本なのにねぇ」
ゆるぅい喋りをしながら頬に手を当てるシズハと名乗る着ぐるみ。
シズハ……間違いなくそう言った、聞き間違いじゃない、確実にそう言った。
……と言うか、違和感半端じゃないな。
「シズハ ブレイブ……ブレイブ? と言う事は貴女は……」
ヴァームは何かに気付いたのか、着ぐるみの方を見る。
「はーい、そうでぇす。可愛い可愛いシズハさんですぅ」
ばっ! と手をあげて元気良く言った着ぐるみの人。
この着ぐるみがシズハおばさんと言う事は信じられないけど……。
このノリ、陽気に着ぐるみを着て人前に現れるこの器量……。
そして、はっきりと自分の事を可愛いと言っちゃう。
こっこの感じは、間違いなくシズハさんだ!
あと突っ込み遅れたけど、シズハさんでぇすって言ってもヴァームには伝わらないからな? 初対面だからな? あと自分で可愛いって言うなっ! あんたもう良い年だろう!
「そうですか、シズハさんですか……私はヴァームと申します。察してると思いますが私はドラゴン、ヴァハムートと言うドラゴンです」
「ほへぇ、ドラゴンちゃんなんだぁ。コスプレじゃないんですねぇ」
「はい、角も尻尾も本物です」
パタパタと尻尾を動かすヴァーム、それを見てシズハさんが「わぁ、動きましたぁ」と言って感激してる。
そのあと、ずいっとヴァームの方へ近付いて見回していく。
すっごい見てるなぁ……ヴァームも困ってるな、若干だが後ろに下がってる。
「そう言えばぁ、角生えてたり、ホネホネの人だったりする人ちらほら見ましたぁ」
あ、見たんだ。
と、その時だ……ヴァームが肩をぴくっと動かした。
「……ちょっと待って下さい。貴女、どこで見たんですか?」
そっそうだ。
見たって事は相手にもシズハさんの姿が写ってる筈……だが、そんなの目撃証言はない。
シズハさんは一体何処で魔物達を見てたんだ?
「ほえ? あぁ……私、ここにこっそり潜んだんですぅ。つまり侵入者じゃないですかぁ、バレたら怒られると思ってぇ……こっそり見ましたぁ」
にゃぁって感じに手をあげてとんでもない事を口走った。
しっシズハさん、今さらっと不法侵入した事を言ったよな……。
それにしては偉く楽観的だ。
シズハさんらしい……常に自分のペース、周りなんて気にしない。
これがアヤネの母、ある意味尊敬に値する性格の人だよ。
「あらあら、そうですか。でも、どの様に潜んでたんですか? 魔物達は人間以上に五感がしっかりしてますよ?」
「あぁ、それですかぁ」
腕を下ろして腕を組むシズハさん。
ヴァーム、普通に立ってる様に見えるけどイラついてるな、尻尾をパタパタ床に打ち付けてる……。
「えぇとですねぇ、それはですねぇ……天井に張り付いたりぃ、お相手さんの死角に入ったりして潜みましたぁ」
常人に出来ない潜み方だ。
と言うか、シズハさんならこれくらいの事は出来るよな。
だってこの人、物凄い強いから。
「なるほど……どうりで魔物の五感を持って尚見付からなかった訳です。貴女強いんですね、こうして立ってるだけでもソレが伝わってきます」
「えぇ、私ぃ強くないですよぉ……。熊を素手で仕留めるくらいしか出来ません。よわよわですよぉ」
熊を仕留める奴が弱いわけないだろう! と言ってやりたいが、あの人相手にそんな突っ込みしようものなら。
「何処がですか? 充分強いように見えますよ」
「強くないですよぉ。私はか弱い乙女ですぅ」
とこんな感じに返される。
熊を素手で仕留められる奴はか弱くないだろ、なんて突っ込みはしてはいけない。
延々と「弱いですよぉ」てな感じに返されると言うループに陥る。
それを悟ったのか、ヴァームは頭を抱えてため息をはく。
もうどうしたら良いか分からないって感じだな。
……と言うか、俺、そろそろ何か喋るべきなのかな? さっきからヴァームとシズハさん2人だけで会話している。
それにシズハさん、完全に俺がいるってわかってないよな? さて、どうしようか。
「えぃっ!」
なんて考えてると、シズハさんが突然ヴァームの胸を触りだした。
「なっ! 突然何をするんです! 私、そっちには興味ありませんよ? 興味あるのはコスプレとBLだけですからね!」
シズハさんの手を払い退け、胸を腕で隠す、きっと顔は真っ赤になっているだろう。
シズハさん……あんた何やってるんだよ、行動がアヤネ以上に唐突すぎる。
で、俺はヴァームの言った事を突っ込むべきなのか? いや、考えるまでもない……する意味なんてない!
「わぁ、突然のカミングアウトですねぇ。でもでもそれよりもぉ、私ヴァームちゃんのおっぱいずぅっと見てて可笑しいなぁと思って触ったんですぅ……」
いや、だからと言って触るのはダメだろう。
……待て、今なんて言った?
「そんなに大きな胸なら腕を動かしたらぁ、ちょっととは揺れる筈なんですぅ。でも揺れないんです。たゆんたゆんって揺れないんですよぉ」
え、えと、シズハさん? 貴女何を言ってるんだ? そして、何を言うつもりだ?
「で、触ってみて分かりましたぁ」
ずびっ!
シズハさんは勢い良くヴァームに指を指す。
まっまずい、これ……言っちゃう。
ヴァームが気にしてる事を平然と言っちゃう流れだ。
今、ヴァームは黙ってるけど……怒ってる。
背中から感じるんだ、ゴゴゴゴゴって感じの怒りのオーラが徐々にだが出始めている!
もしシズハさんが、あの言葉を言おう物なら……ここら一体が消し飛ぶ!
身の危険を感じた俺はカタカタ震える。
そして願った、シズハさん……どうか変な事を口走りませんように。
「ずばり貴女の胸はニセ乳ですねぇ!、それに加えてぇ、つるぺたですねぇ、貧乳ですねぇ、無い胸ですねぇ! うふふふぅ、正解ですよねぇ。天才的な頭脳を持つ私が言うんです。間違いないですぅ」
言った、それも連続で……。
危機感を感じていない、ゆるふわバカは踏んどりかえって「うふふふふぅ」と笑う。
笑ってる場合じゃない! 逃げろっ、今すぐ逃げるんだ! じゃないと……消されてしまう!
シズハさんがその言葉を言った数秒、ずっとヴァームは黙っていた。
だが突然「ふふ、ふふふふふふ」と不適に笑いだす。
その瞬間だった……ヴァームから怒りのオーラが完全に吹き出た。
今この瞬間、終わりの始まりが始まってしまった瞬間である。
素早く部屋の角に避難した俺は願った、どうか命だけは助けて下さい……と。
さぁ、怒り狂ったドラゴンの攻撃が今、始まる……。
ゆるぅい喋りをしながら頬に手を当てるシズハと名乗る着ぐるみ。
シズハ……間違いなくそう言った、聞き間違いじゃない、確実にそう言った。
……と言うか、違和感半端じゃないな。
「シズハ ブレイブ……ブレイブ? と言う事は貴女は……」
ヴァームは何かに気付いたのか、着ぐるみの方を見る。
「はーい、そうでぇす。可愛い可愛いシズハさんですぅ」
ばっ! と手をあげて元気良く言った着ぐるみの人。
この着ぐるみがシズハおばさんと言う事は信じられないけど……。
このノリ、陽気に着ぐるみを着て人前に現れるこの器量……。
そして、はっきりと自分の事を可愛いと言っちゃう。
こっこの感じは、間違いなくシズハさんだ!
あと突っ込み遅れたけど、シズハさんでぇすって言ってもヴァームには伝わらないからな? 初対面だからな? あと自分で可愛いって言うなっ! あんたもう良い年だろう!
「そうですか、シズハさんですか……私はヴァームと申します。察してると思いますが私はドラゴン、ヴァハムートと言うドラゴンです」
「ほへぇ、ドラゴンちゃんなんだぁ。コスプレじゃないんですねぇ」
「はい、角も尻尾も本物です」
パタパタと尻尾を動かすヴァーム、それを見てシズハさんが「わぁ、動きましたぁ」と言って感激してる。
そのあと、ずいっとヴァームの方へ近付いて見回していく。
すっごい見てるなぁ……ヴァームも困ってるな、若干だが後ろに下がってる。
「そう言えばぁ、角生えてたり、ホネホネの人だったりする人ちらほら見ましたぁ」
あ、見たんだ。
と、その時だ……ヴァームが肩をぴくっと動かした。
「……ちょっと待って下さい。貴女、どこで見たんですか?」
そっそうだ。
見たって事は相手にもシズハさんの姿が写ってる筈……だが、そんなの目撃証言はない。
シズハさんは一体何処で魔物達を見てたんだ?
「ほえ? あぁ……私、ここにこっそり潜んだんですぅ。つまり侵入者じゃないですかぁ、バレたら怒られると思ってぇ……こっそり見ましたぁ」
にゃぁって感じに手をあげてとんでもない事を口走った。
しっシズハさん、今さらっと不法侵入した事を言ったよな……。
それにしては偉く楽観的だ。
シズハさんらしい……常に自分のペース、周りなんて気にしない。
これがアヤネの母、ある意味尊敬に値する性格の人だよ。
「あらあら、そうですか。でも、どの様に潜んでたんですか? 魔物達は人間以上に五感がしっかりしてますよ?」
「あぁ、それですかぁ」
腕を下ろして腕を組むシズハさん。
ヴァーム、普通に立ってる様に見えるけどイラついてるな、尻尾をパタパタ床に打ち付けてる……。
「えぇとですねぇ、それはですねぇ……天井に張り付いたりぃ、お相手さんの死角に入ったりして潜みましたぁ」
常人に出来ない潜み方だ。
と言うか、シズハさんならこれくらいの事は出来るよな。
だってこの人、物凄い強いから。
「なるほど……どうりで魔物の五感を持って尚見付からなかった訳です。貴女強いんですね、こうして立ってるだけでもソレが伝わってきます」
「えぇ、私ぃ強くないですよぉ……。熊を素手で仕留めるくらいしか出来ません。よわよわですよぉ」
熊を仕留める奴が弱いわけないだろう! と言ってやりたいが、あの人相手にそんな突っ込みしようものなら。
「何処がですか? 充分強いように見えますよ」
「強くないですよぉ。私はか弱い乙女ですぅ」
とこんな感じに返される。
熊を素手で仕留められる奴はか弱くないだろ、なんて突っ込みはしてはいけない。
延々と「弱いですよぉ」てな感じに返されると言うループに陥る。
それを悟ったのか、ヴァームは頭を抱えてため息をはく。
もうどうしたら良いか分からないって感じだな。
……と言うか、俺、そろそろ何か喋るべきなのかな? さっきからヴァームとシズハさん2人だけで会話している。
それにシズハさん、完全に俺がいるってわかってないよな? さて、どうしようか。
「えぃっ!」
なんて考えてると、シズハさんが突然ヴァームの胸を触りだした。
「なっ! 突然何をするんです! 私、そっちには興味ありませんよ? 興味あるのはコスプレとBLだけですからね!」
シズハさんの手を払い退け、胸を腕で隠す、きっと顔は真っ赤になっているだろう。
シズハさん……あんた何やってるんだよ、行動がアヤネ以上に唐突すぎる。
で、俺はヴァームの言った事を突っ込むべきなのか? いや、考えるまでもない……する意味なんてない!
「わぁ、突然のカミングアウトですねぇ。でもでもそれよりもぉ、私ヴァームちゃんのおっぱいずぅっと見てて可笑しいなぁと思って触ったんですぅ……」
いや、だからと言って触るのはダメだろう。
……待て、今なんて言った?
「そんなに大きな胸なら腕を動かしたらぁ、ちょっととは揺れる筈なんですぅ。でも揺れないんです。たゆんたゆんって揺れないんですよぉ」
え、えと、シズハさん? 貴女何を言ってるんだ? そして、何を言うつもりだ?
「で、触ってみて分かりましたぁ」
ずびっ!
シズハさんは勢い良くヴァームに指を指す。
まっまずい、これ……言っちゃう。
ヴァームが気にしてる事を平然と言っちゃう流れだ。
今、ヴァームは黙ってるけど……怒ってる。
背中から感じるんだ、ゴゴゴゴゴって感じの怒りのオーラが徐々にだが出始めている!
もしシズハさんが、あの言葉を言おう物なら……ここら一体が消し飛ぶ!
身の危険を感じた俺はカタカタ震える。
そして願った、シズハさん……どうか変な事を口走りませんように。
「ずばり貴女の胸はニセ乳ですねぇ!、それに加えてぇ、つるぺたですねぇ、貧乳ですねぇ、無い胸ですねぇ! うふふふぅ、正解ですよねぇ。天才的な頭脳を持つ私が言うんです。間違いないですぅ」
言った、それも連続で……。
危機感を感じていない、ゆるふわバカは踏んどりかえって「うふふふふぅ」と笑う。
笑ってる場合じゃない! 逃げろっ、今すぐ逃げるんだ! じゃないと……消されてしまう!
シズハさんがその言葉を言った数秒、ずっとヴァームは黙っていた。
だが突然「ふふ、ふふふふふふ」と不適に笑いだす。
その瞬間だった……ヴァームから怒りのオーラが完全に吹き出た。
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