どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

302

「うへへぇ、しぃちゃん。私の事覚えてるぅ? 久しぶりですねぇ」
「ちょっ! シズハさんっ、前! 前見て!」

バシッ! バシッ!
シズハさんの背中を叩く、どんどん叩く。
この人、状況理解できてない! 目の前に命の危険があるってのに!

「くふっくふふふふ……。わらわはアイツの顔を吹き飛ばす。身体はヴァームの好きにせい」
「ありがとうです。ですが……あの着ぐるみを脱がしてからにしましょう。着ぐるみに罪はありません」
「うむ、よかろう」

あぁ、どう仕止めるかの相談してる。
くっ……やばい、心臓のバクバクが止まらない。

「あれぇ? しぃ君怖がってますぅ? 汗っかきですねぇ……どうしたんですかぁ?」
「あんたの性だよ!」

状況を理解できてないアホ(シズハさん)の額にポコンとパンチ。
「あいた」と言った後……。

「もぅ、ぶっちゃめっですよぉ」

と、ゆるぅく返される。
だっダメだ、これは離れてくれそうにない。
そうこうしてる間に2人は既に側にいるってのに!

「おい貴様、今すぐシルクから離れろ」
「んう? わぁ……ビックリしましたぁ。新しい人がいますぅ」

ロアが低い声で問いかけてきた。
それに振り向くシズハさん、呑気に驚く仕草をとる。

……ロア、すっごい冷ややかな目をしてる。

「しっかも、おっぱい凄いですねぇ。褐色おっぱい初めてみましたぁ」

よいしょっ、シズハさんは小さな声でそう言って立ち上がり冷たい目を向けるロアなど構いもせずに近くに寄り……。

むみんっ……と勢い良くロアのおっぱいを揉んだ。
その瞬間だった、恐ろしい顔をしていたロアの顔が一気に真っ赤になった。

「なっなななっ、なにしてるんじゃぁぁぁぁっ!!」

ぶんっ! 腕を振るってシズハさんに攻撃、しかしそれをひらりと交わす。
すかさずヴァームが守るようにロアの前に立つ。

「大丈夫ですか、ロア様」
「大丈夫かじゃと? そんなわけないじゃろう! シルク以外の者に胸を触られたんじゃぞ! ぐぁぁぁぁっ、わらわのヴァージン奪われたのじゃぁぁぁっ!!」

いや、ヴァージンって……それだと意味合いが違ってくるんじゃないか?
胸を隠しながら、ふぅ……ふぅ……と息を荒くするロア、今度は恥ずかしさが混じった怒りの視線をシズハに向けている。

当然、シズハさんは「ふはぁ、私のよりやわやわでしたぁ」と空気の読めない事を言っている。

「ヴァーム、構わん……奴の着ぐるみ剥いだ後、考え付く限りの恥辱を食らわし身の毛のよだつ様な一撃をかましてやれ」
「……承りました」

っ! なんか物騒な事を言ってる。

「ろっロア! 落ち着け、この人は……」
「シルク、何も言わずとも良い……こやつを葬った後、わらわの包容で上書きしてやるのじゃ」
「ほっ葬る!? あっアホ! 物騒な事を言うなっ、あっあのな? この人は……」
「シルク様、お静かに……そして離れていて下さい。これより処刑を執行します」
「っ!? いっいやいやいやいやっ、ヴァームも落ち着け! おっ俺の話しを聞け!」
「くふふふふふ……さぁヴァーム、やってしまうのじゃ!」

あぁ駄目だぁっ、聞く耳持たない! ガチの戦闘が始まる!
と、思った瞬間……ヴァームが目の前から消えた、と思ったらシズハさんの背に現れた。

はっはやい……いつの間に動いたんだ?

「わぁぁ。速いですねぇ……」
「ふふ、呑気に笑っていられるのも今のうちですよ」

って、驚いてる場合じゃない!
ギラついた目をするヴァームはにこりと笑う。

「っ!!?」

その瞬間、俺は驚いてしまった。
いや、俺だけじゃない……ロアとヴァームもだ。

「あらぁ、着ぐるみとられちゃいましたぁ。お陰ですっぽんぽんの姿見られちゃいましたぁ」

ふわっと自分の長い黒髪を手で靡かせる、いっいやほれよりも! はっはっ裸……しっシズハさんが、はっ裸に……。

「へっ変態じゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」

口をポカーンとしてると、ロアが叫んで素早く俺の側にやって来て手で目を覆ってくる。
そしたら、ぐぐっと……俺のがんきゅうが押されてしまう。

「っ! 痛ぁぁぁっ、めっ目を、おっ押さえん……なぁぁぁっ!」
「おっ押さえぬと、いっ色々見えてしまうじゃろうがぁぁっ!」
「だっだからって……いっいだだだだだっ!」

痛い、痛い、痛い!!
ジタバタ暴れるもロアに押さえ付けられる。
こっこのままじゃ、俺の目が潰される!

「……巨乳ですね、ふふっふふふふふ。巨乳は排除しないとダメですね」

ん? 今のヴァームの声か? なんか変な事いってない? そっそれより俺を助けてくれないか? 「いだいぃぃぃぃ」って言ってるの聞こえてるだろ?

「ふわぁ……なんかあれですねぇ。賑やかになった気がしますぅ」

そんな慌ただしい中、またシズハさんが妙な事を口走る。
賑やか? 貴女にはそう見えるんだろうな! もうちょっと場の空気を読め!

ぎゃいぎゃい騒ぐ俺達、このまま騒いだままなのか、ヴァームかロアが破壊する系の魔法を放ってこの騒動に終わりを告げるのか、そんなドキドキの心臓に悪い時間は長く続いた。

だが……破壊される前に、この騒動に気付いて他の奴等が来るまでに時間が掛かった。
勿論、それまでに危険な事が起き掛けたのは言うまでもない……。

流石アヤネの母、空気の嫁なささが常人を凌駕している、この人……昔から変わってない。

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