どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

289

僕は走った……出来るだけ早く走った。
その甲斐あって、目的地に素早く辿り着く事が出来た。

その場所は城下町地下、今日もここは何時もと同じ景色が広がっている。

はぁ……まさか朝から走る事になるなんてね……。
苦笑いをしながらうつ向く、そして前を見る。

「見るの2回目だけど……やっぱりインパクトあるね」

なんせ家がカボチャの形してるからねぇ……普通じゃないよ。
と、こんな事考えてる場合じゃない……早いとこ家に入らせて貰おう。

例のごとく、いやらしい目線を嫌程感じるからね……あぁうっとうしい。
それに気のせいかも知れないけど、今日は一段とそんな視線を感じる。

チラリと周りを見てみると、女の魔物達も僕を見てヒソヒソと何かを言ってる。

……なんだろう、何か違和感を感じる。

まぁ、何時もの事だから気にしないでおこう。
女の人が見てるのはきっとアレだ。
さっき走って少し息切らしてるから「どうしたんだろ?」とか言ってるんだ。
男共は考えるまでもなく変態じみた事考えてるから考える必要なしっ!

と言う風に考えた後、僕はノックした。

コンコンコンッ……。
「クータン、来たよ……開けてくれる?」

…………?
あれ、可笑しいね……返事がない。
もう一度ノックしようか。

コンコンコンッ……。

…………返事がない。
聞き耳を立ててみても物音1つ聞こえない。
まさか、誰もいない? いやいや、わざわざ手紙書いて僕を招待するんだからいる筈だ。

もし留守だったら……流石にキレる。
ここまで走らせておいて嘘なの? と容赦なくキレさせてもらう。

でも見た感じ、そう言う事する娘じゃなさそうだからなぁ……なんで返事がないんだろう?

「…………あ、そうか」

ピンっと来た。
忘れてた、彼女の性格を……急いでたから抜け落ちてたなぁ。

多分あれだ、きっと扉を開けるのに苦戦してるんだ。
クータン、他の魔物と顔を合わせるの極度に苦手だからねぇ。

それと、扉を開けた後どうやって中に招待しようか考えてて扉を開けられないでいる……と言う風にも考えられる。

「もう一度ノックしたいけど、絶対する度身体がビクついてるよね」

苦笑いを浮かべてそんな事を考えてみる。
多分この考えは当たってると思う、コンコンコンッてノックされる度、クータンの身体がビクっとなって「あぅあぅ」って小声で呟いてるんだろう。

そうなるんなら何故、僕を呼んだの? って言いたいけど……まぁその事は置いておこう。
今回僕は、彼女に言っておきたい事があるから来たんだ。

だから扉を開けて貰わないと困る。
でも、扉を開ける気配がないから困ってる。
だからと言って扉を蹴破る訳にもいかないから大変困ってる。

さて……どうしようか。
腕を組んで色々思考してみる。
んー……とりあえずもういっかいノックしてみる?

「ノックって、何度もするの気が引けるけど……そうするしか無いか」

と言う訳でノックしよう。
コンコンコンッ……。

「おーいクータン、いる? ラキュだよ。手紙貰ったから来たよー」

更に声もかけてみる。
周りに結構魔物がいるから恥ずかしい……注目浴びまくってるから早く開けて欲しいな。

『……すか』

ん? 今、何か聞こえた気がする……。

『らっラキュ様……です……か?』

扉越しからクータンの声が聞こえた。
良かった、中にはいるみたいだね、まったく……いるなら早く開けてよ。

「うん、僕だよ」
『はっはひっ、いっ今……とっ扉をあっ開けます……ね』

はぁ……良かった。
やっと開けて貰えるよ、さっきから視線が痛い程浴びてるんだよね……。

ギギッ……ギギギギッ……ギギギィッ

「どっどうぞ……はっははっ入ってくっくくっ下さい」

……えっ偉くゆっくり扉を開けたと思ったら、目にくまを浮かべて手招きしてきた、身体を扉に隠してるから不気味さが凄い……。

「はっはやっ早く……はっはいはい……入って……くっくれま……せん……か?」

そしてクータンの喋り方も凄い、今日も緊張してるらしいね。
それと今はカボチャの被り物をしていない……。


ここは、彼女の為にも早く入ろうか……。

「お邪魔するよ」

一言いった後、僕はクータンの家に入る。
そしたら、バタァァァンッ!! と勢い良く扉を閉めた。

そして、僕の方を向く。

「よっよよっようこそ……」

ひきつった笑顔をしてペコリと頭を下げてくる。
……さて、部屋に入ったし言いたい事、言わせて貰おうかな。 

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