どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「姉上、また見てるの?」
「うむ……悪いのかえ?」
「いや、悪くないよ」

とある日の午前の話し、今日は城内にいる。
そこの姉上の部屋に僕はいた、来た理由はただ単に暇だったからだよ。

外に出掛けるても良かったんだけど、今日はそんな気分じゃないんだよね……。
と、僕の事情は置いといてだ……姉上は自分の部屋に大きな鏡を置き、その前に椅子を置いて食い入る様に鏡を見ている。

「そんなに近くで見てると目を悪くするよ?」
「大丈夫じゃ、わらわの視力は25じゃ。多少悪くなっても問題ない」
「問題あると思うんだけどなぁ……」

そんな僕の心配なんて構いもせずに鏡を見続ける。
やれやれ、ずっと見てても仕方無いのにね。

あ、1つ言っておくと……姉上は鏡の自分を見てるんじゃないよ?
通常、鏡は自分を見る為の道具……だけと、姉上が使ってるのはただの鏡じゃない。

人間界を写し出す鏡を見てるんだ、当然この鏡は人間界には存在しない。
いわゆる魔界にしかない鏡、それを姉上が使ってる。
因みにその鏡の名称は"魔鏡"って言うよ。

「……おっ! ラキュっ! ちとこっちに来るのじゃ!」

なぁんて説明してたら姉上に呼ばれた。
なんなのさ、顔を鏡に向けたまま呼んで……何か面白い物でも写ったの?

半分、面倒臭いなぁと思う気持ちで姉上に言われるがまま、その鏡を覗き込んでみる。

「…………ねぇ姉上」
「しっ、今良い所なんじゃから静かにせい!」

しぃぃっ、と言った後姉上は人差し指を立てて唇に当てる。
いやいや、煩くしても今写ってる人に声は届かないんだから静かにする必要は無いでしょ。

……って、そんな事よりも。
姉上が今見ている光景の方が問題、いや……大問題だ。

「くぅぅ、生着替え……生着替えじゃぁ。いやぁ、良い時に覗き見出来たのぅ」

満足げに言ってる所悪いんだけどさ……それ、普通にやっちゃダメな事だから。
と言うか、それを僕に見せてどうするつもりなの? 鏡に写ってる人って男だよね? それを僕に見せた理由は何かな?

生憎僕は、男の着替えに萌えるなんて性癖は持ち合わせていないよ。

「くふ、くふふふ、ぐふふふふ……」

あぁあ、下品な笑い方しちゃってまぁ。
たまに思うよ、こんな姉を持って嫌だなぁって……。

「程々にしときなよ?」

取り合えず注意した、だけど聞こえなかったのか返事は無し。
はぁ……やれやれ、付き合うのがしんどくなって来た。

今日は外に出ていかないつもりでいたけど、出ていこう。
そうと決まれば、即行動だ。


と言う事で、ささぁっと城から外に出て来た訳だけど……何をしようか。
適当に散歩でもする? と言うか、最近用もないのに町を歩くのが多い気がする。

別に暇って訳じゃ無いんだよ? あ、いや……暇だから用もないのに町をぶらつくのか。
城にいたらヴァームに追いかけ回されるしね……だからこうやって外に出て来ていると言うわけだ。

うん、納得……納得したけどそれがどうしたって話だよね。

「……取り合えず、裏通りを歩こう。表通りは人通りが多いからね」

まぁ、納得できたから良しとしてそろそろ歩こう。
歩くのは言った通り裏通り、表通りを歩くと変態的な視線を沢山感じるから歩かない。

だから裏通りを歩こう。
コツッ……コツッ……コツッ……。
青空の元、僕は靴をならして歩く。
花屋と小物屋の間の道を入っていく……今日はこの辺りを歩いて時間を潰そう。

コツッ……コツッ……コツッ……。
間の道に入ると、一気に魔物達を見なくなった。
よしっ、このまま進もう。

ツカッ……ツカッ……ツカッ……。
家と家との間を歩いてく、たまぁに美味しそうな匂いがしたり、家の中で声が聞こえたりする。

それを聞きながら前へと進んでいく。

ツカッ……ツカッ……ツカッ……。

あ、道が別れてるね……右か左かどっちにしよう。
右か左か、左か右か……行き先は決まってないからどっちに曲がったって構わないんだけど迷ってしまう。

えぇと……右に曲がったら何があるんだったけ? 表通りなら詳しく分かるんだけど、流石に裏道りの道は詳しくない。

んー……どうしようか?
歩きながら悩んでみる、よし決めた、僕の直感が「右に曲がれ」と言っている。

だから僕は右に曲がる事にした。

ツカッ……ツカッ……ツカッ……。
曲がり角に差し掛かった、僕は2つある曲がり角を右に曲がる。
と、その時だった……。

ドンッ……。

「ひゃっ!?」

どさっ……。

誰かにぶつかってしまった。
で、その誰かが尻餅をついてしまう。

「ごっごめん、大丈夫?」

しまったなぁ、ちゃんと確認すべきだった。
そう反省しつつ、ぶつかった相手を見て手を差し出す。

ソレをし終わった瞬間、「え……」と声をあげてしまった。
 
その娘はオレンジ色のソバージュヘア、ジト目で鼻の頭の辺りにソバカスがある女の子の魔物……。

そう、僕がぶつかった相手は……最近会ったあの娘だった。

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