どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

257

ここは魔王城城下街地下。
そこを改めて説明すると、常に夜みたいな所、住む魔物も地上のとは違う。
主に、お化け系が多い所だね、今もそう言う魔物が歩いてるよ。

で、僕とアヤネはその大通りにいる。

ここに着くのは凄く時間が掛かったよ……。
あの後、途中でアヤネに追い付いて止めなかったらどうなってただろう?
……考んがえるのはよそう。

「……疲れた」
「そりゃ、あれだけ走れば誰でも疲れるよ」

でぃでぃと息を切らすアヤネ、肩で息してる。
そりゃそうだ、僕が止めるのも聞かずにずぅっと走ってたからね、自業自得だよ。

「……らっ君」
「ん、なに?」
「無駄に走らせてごめんなさい」
「……うん、別に良いよ。」

若干、息を切らしながら言ってきたね。
で、さっきの事を謝ってきた。
一応悪い事だと思ってたんだ……だったら、初めから走らなければ良いのに。

「あの時、テンション上がっちゃって走りたくなったの」
「そっそうなんだ」

てへへ、と照れながら言うアヤネ。
いやいや、照れながら言う事じゃないからね?

「……」
「……」

えっえと、なんで急に黙るの?
じぃっと僕の顔見ないでくれるかな? なっなんか気まずいんだけど……。

「まだ着かないの?」
「え?」
「ロアの知らない場所」
「……あぁ、えと、この辺がそうだよ」

あと急に話を変えないで、反応に困る。
そんな僕に構わずに、目を細めて辺りを見渡す、「ふむ……おぉ」って感じで呟く。

1度来た事あるよね? だから、そんなに初めて来た様な反応取らなくて良いんじゃ……いや、それは個人の自由か。

「良いとこだね、また来て良かった」
「そう言って貰えると嬉しいよ」

そう言いながら髪の毛をふわっとかきあげる。
……そのしぐさを見てドキッとしてしまった。

「あ、らっ君かお赤くなった」
「そう?」
「うん」
「ふぅん……」

そんな指摘を軽く流した僕、そうした後、パンッ! と手を叩き頼まれた事を実行する事にした。

「そろそろ行こっか、それらしい所は案内してあげるよ」
「ん、ありがと」

とことこ、と前を歩きながら言うと、アヤネは着いてきた。
よしっ、上手く話を反らせた……。

「あ、らっ君……いっこ注文」
「ん?」

なんて思ってたら、話し掛けられた、なので振り返ってみる。
注文か……それってなんだろう?

「チーズの美味しい所、案内して。シルクはチーズが好きなの」
「あぁ、なるほどね……ちょっと待って思い出すから」

そう言えばそうだね。
シルク君って、チーズを使った料理を出されると明らかに表情に出るからね。
その事を突っ込んだら「うっ煩い! そんな事ないっ!」って真っ赤になって怒られたよ。
あの時は面白かったなぁ。

と、思い出に浸ってる場合じゃないね。
えーと、チーズが美味しいお店か……。

顎に手を当てて考えてみる。
んー……確か、ここから真っ直ぐ行った所のお店で出されるチーズケーキ、此処に住んでる人達によると人気だったよね。

それと、2つめの曲がり角を右に曲がって直ぐの所にあるお店のピザも絶品だった筈。
よし……そこに連れていこう。

「らっ君、思い出した?」
「うん、思い出したよ」

そう思い立った僕に、心配そうな顔をしながら言ってきたのでそう返してあげた。

「ほんと?」
「うん、本当だよ」
「嘘じゃない?」

え、なに? 疑ってるの? 失礼な人だね。

「なんで嘘つく必要があるのさ」

少しムカッとしたので言ってやった。
そしたら、少し考える仕草をとった後、こう返された。

「……からかうため?」
「僕が何時も人をからかってるみたいに言うのは止めてくれるかな?」

ほんと、失礼だ。
僕だって、からかう時は色々と考えてやってるよ。

「違うの?」
「…………案内するの止めた」
「っ! ごめん! 許して! 止めないで!」
「謝るなら、最初から言わないでよ」

呆れながらそう言うと、伏せ目がちに「ごめんなさい……」って呟いた。

「……じゃ、今度こそ行こう。次は走ったりしないでよ?」

あの時、アヤネが走り出して捕まえるのには骨が折れたよ。
なにせアヤネは早いからね……狭い道をどんどん走るから追い付くのが難しかった。

お陰で疲れたよ。
魔物を疲れさす脚力を持ってるなんてね……アヤネは本当に人間か疑問に思うよ。

「ん、走らない」

さっき、しょんぼりした顔をしてたのに、ぱっと表情が変わる。
えっえーと、反省してたよね? その場凌ぎの表情じゃないよね?

えらく表情が変わって戸惑う。
しかし、これまでの事を振り返ってみる。

……そう言う事、何度かあった記憶がある。
つまりはあれだね、アヤネはそう言う人か。
うん、そうだ、そう言う人なんだよ。
アヤネは気持ちの切り替えが早過ぎる、そう思う事にしようか。

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