どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
33
街のとある喫茶店……静かな雰囲気で過ごしやすい空間、ジュークボックスから優しい曲が流れて客達の心を落ち着かせる、天井にはウインドファンがゆっくりと回っている。
「くふふ…良い店だろ? 我が見付けたんだ」
「確かに良い店だな……と言うか、この街にこんな店があったなんて今まで気付かなかった……」
1人で喫茶店に入る事なんて無かったし街の外に住んでいたからあまり街の事を把握してないからなぁ……知らないのは無理もないか。
「さて、存分にゆっくりして行こう」
「おっおい、手を引っ張るな!」
ナハトに引っ張られ一番奥の席に座る。
「さて、話す前に何か頼まないか?」
「別に良いが…」
そんな会話をしていると、店員がメニュー表を2つ持って来る、その店員は小声で「ごゆっくり」とだけ粒いやいて他の席へと向かっていく。
……ナハトに連れられて喫茶店に来たわ良いが、こう言う店は初めてだから何か緊張してしまう。
「ほぉ…我の住む所には無い飲み物があるね、とても興味深い……」
そう言いながら、ぺらぺらとメニュー表を捲る……そう言えば、この席は互いに顔が見える席だったな……何時もと違って表情も良く見えると言う訳か……これ……かなり恥ずかしいな。
「ん? どうしたんだい? 我の顔を見つめて……」
「なんでもない……」
おっと……あんまり見ていては駄目だ、俺も頼む物を決めないと……。
暫くして、俺とナハトが注文した物がテーブルに出される。
「おぉ……これがコーヒーと言うのか、少し苦いね」
「だったら砂糖入れるか?」
ナハトが注文したコーヒーを飲む、飲むのは初めてみたいだ……少し飲んで苦かったのか表情を歪ませる、という訳で砂糖を進めてみた、因みに俺はコーヒーは苦手なので紅茶を頼んだ。
「うん、頂くよ…シルクが飲んでいるのは何だい?」
「紅茶だ、これも飲んだ事ないのか?」
「ないね……」
徐に言って見るとナハトは俺のティーカップを見てくる、そして人差し指を口に加えた、あぁ……1口欲しいアピールか。
「飲むか? 口をつけたが……」
あげなかったら騒ぎそうだ…そう思いティーカップをテーブルに置いた瞬間、それを素早く手に取る。
「勿論頂こう!」
ぐびっーーと飲むナハト、すると表情が一辺する。
「何だか良く分からない味だ…」
「口に合わなかったか?」
「いや……なんと言うか、美味しかったよ?」
曖昧な返答だな、それに少し顔が赤い……何故だ? そんな疑問が浮かぶと、ナハトがティーカップを返してくる。
「シルクは紅茶好きなのか?」
「いや、コーヒーが苦手だから紅茶を頼んだんだ」
「そうか……あっ、それより気づいているかシルク?」
気付く? 何の事だ? 全く検討がつかないぞ?
「気付くって何にだよ?」
「くふふふふ……成る程、本当に気付いてないようだね」
「なんだよ気持ち悪いな……」
肘をついて上目使いで見てくる、しかもくすくす笑って…何なんだ一体。
「ならば答えを教えよう……」
そんなナハトの言葉を聞きながら俺は紅茶を飲む、どうせまたからかって来るんだろうな…。
「今、間接キスしたよ」
「…………っ!」
それを聞いた瞬間、顔が真っ赤になり言葉が詰まる、かっ間接キスっ……たっ確かにしてしまった! くっ……全く気付かなかった……。何故気付かなかったんだよ俺っ!
「くふふ、本当に気付いてなかったんだね……最初にあんな事を言うから気付いていたと思っていたよ」
「さっ最初にって……何の事だ?」
「忘れたのかな? シルクは言ったじゃないか」
ナハトが顔を近付けてくる……ちっ近い…そう思ってナハトの顔を手で押さえる。
「一口飲むか? 口をつけているっむがが…」
「取り敢えず黙ってくれ!」
言った! 確かに言った! 何故言った時に気付かなかったんだ! っと言うかこの言葉……まるで俺が間接キスを誘った見たいじゃないか!
「もごもごご……」
ぺちぺちと俺の腕を叩いてくるナハト、今手を退けたら何を話すか分からない、暫く口を塞いでいたい気分だ、そう思うも少し可哀想なので手を退ける。
「ぷはっ……今のは照れ隠しかな?」
「うっ煩い……阿呆」
ぐぬぬ、はっ恥ずかしい……ナハトと間接キスしてしまった。
「嫌がらないんだね……」
「なっ何だよその言い方は……」
「我と間接キスしたのは嫌かな? と思ったんだ……」
……今、嫌じゃないと思ってしまった、表情が曇っているナハトにこう言えば良いんだろうが……恥ずかしくて言いたく無い。
「そんな事言うなよ……そう思わせたのは悪かった、謝るからそんな顔しないでくれ」
「……シルク」
真っ直ぐと見つめてくるナハト、それを直視できない俺は視線を反らした。
「すまなかった…」
「いっいや……気にしないで良い、我も意地悪だったかもしれない」
くっ空気が変な感じになってしまった……どうにかしないと駄目だな、間接キス騒動を吹き飛ばす程の話題をしなければ……俺が色々考える……すると良い話題を思い付いた。
「そっそう言えば……ナハトの親は今何処にいるんだ?」
流石に強引過ぎだと思うがあのまま何も言わないよりかは増しだ。
「あっあぁ……親は街を歩いていると思うよ、何せ我の親は旅好きでね……良く旅行に連れて行かれるんだ」
ナハトはこの話題に乗ってくれる、有り難い……このまま話題を広げてあの騒動の空気を吹き飛ばしてしまおう、そう息づく俺に対してナハトも俺に聞いてくる。
 「シルクの親はどうなんだい?」
「母さんは今は家で家事仕事、父さんは……」
話している途中で俺は下を向く……そうだった、この話題をしたら父さんの事に触れてしまうな……するとナハトは急に慌て出す。
「すっすまない……もしかして聞いてはいけなかったか?」
「いや……別に良い、死んだとかそう言うのじゃないんだ」
「それはどう言う事かな?」
正直どう説明したら良いのか分からない、何故ならあまりにあれ過ぎて話すのを遠慮したいからだ……だがナハトは聞きたそうにこっちを見ている……。
「旅に出てるんだ」
「へぇ……旅にか………って! 母と子を残してかい!?」
そうなのだ、あれは忘れもしない……俺が8歳になった時だ、その時父さんは急にこう言った『風が俺を呼んでいる…流浪の旅に出掛けなければ』と……当時8歳の俺は何が何だか良く分からなかったが今になって分かった事がある。
「俺の父さんは阿呆だから仕方無い、何が流浪の旅だよ……くそ親父がっ!」
「えっえと……シルク? 何を言っているんだ?」
俺は遠くを見て語り出す。
「今思えば全てが阿呆らしかったんだ……虹の先に俺の求める何かがあるって言い出したり……」
今思い出したら頭が痛くなってきたらそんな父の事を母はどう思っていたかと言うと……『格好いいわっあなた!』とこんな風に思っていた。
信じられるか? 俺……この夫婦の間に俺が生まれたんだぞ?
「ははっ……人間って不思議だな」
「なっ何だか良く分からないが……苦労しているんだね」
全くもってその通りだ……父さんと母さんの変な発言に何度振り回された事か……。
「はぁ……」
「えっえと…はっ話を変えようか?」
「そうしてくれると助かる」
なんか話して悲しくなって来た……ナハトのフォローに感謝しよう。
「そうだね……! 夢っ! 夢について話そうじゃないか!」
「夢……か」
家族の事の次は夢の事か……ふむ、良い話題かも知れない、ナハトの夢は何なのか物凄く気になる。
「では、言い出しっぺの我から話そうじゃないか」
「あぁ」
むんっと胸を張り息づくナハト……さぁ、どんな夢なんだ? 変なのだったら思いっきり笑ってやろう。
「我は、完璧な女性になって素晴らしい嫁になる事だね」
「…………」
どうしよう……真面目な奴だこれ、と言うか聞いてて恥ずかしいぞ……異性に向かって言う夢じゃないだろ!
「すっすす、素敵な夢だな」
何緊張してるんだ俺は! 落ち着けよ!
「くふふふ…ありがとう」
少し恥ずかしかったのか、頬をこりこり掻いて、照れる仕草を見せてくる……つっ次は俺の番か。
「さて、シルクはどんな夢を持っているんだい?」
「……いっ言わないと駄目か?」
「我も言ったんだ、言わないと駄目だね」
だっだよな……向こうも恥ずかしがりながら言ったんだ、覚悟を決めないと駄目だよな?
「商人になる事だ…」
「ん、それだけかな? 何か隠していないかい?」
じとっーーと睨んでくるナハト…いや鋭すぎだろう、出来ればこれだけで勘弁して欲しい……商人になるのが俺の夢……だが実はもう1つある、それは他人が聞けば吹き出すであろう内容だ。
「すっ好きな人を作る事だ…そしたらやりたい事がある」
「……それはなんだい?」
自分でも顔が真っ赤になっていくのが分かってしまう……そんな恥ずかしさを抑えながら話す。
「商いで儲けた金で……好きな人に、さっ最高の結婚式を開いてやる事だ」
「っ!! それ異性に向かって言うと誤解されてしまうよ?」
「あっ阿呆! お前だって似たようなもんだろう!」
あぁ! だから言いたく無かったんだ! ぐっ……また妙な空気になってしまったじゃないか……するとナハトが急にそわそわし始める……。
「しっシルク、変な事を聞いても良いかな?」
「駄目だ」
「そっ即答!? 変と言っても困らす事じゃ無いんだ!」
いやそうは言われてもな……今までがあれだったからなぁ、と嫌そうな顔をしていると……。
「だっ駄目か?」
そう言って座ったまま前屈みになり手を握りしめて来た……やっ柔らかい……って! そうじゃなくて!
「おっおいっ! なっ何を……!?」
「本当に聞いて欲しい事なんだ……頼むよ」
涙ぐみながらの懇願、くっ……その表情は卑怯だろう、そんな顔されたら聞かないと駄目じゃないか。
「わっ分かった! だから手を離してくれ! だからそんな顔をするな」
「きっ聞いてくれるのか? 恩に着るよ」
ナハトは嬉しかったのか、表情が笑顔になっていく。
「で? 聞きたい事ってなんだよ」
あれ? これと同じ事前に無かったか? まぁ……気のせいか、と言うか手を離して欲しい、そんな俺の思いを知れないナハトは恥ずかしそうに話してくる。
「えと…しっシルクは我の事をどう思っている?」
「本当に変な事を言ったな…」
「いっいや、言い間違えた…そっその、あの…」
言い間違い? 何なんだ? 急にもじもじし始めたが……なっ何でだ?
「変な奴だな……はっきり言ったらどうなんだ?」
そう言うと、ナハトは伏せ目になる……そしてこほんっーーと咳払いして上目気味で口を開く。
「でっでは率直に聞こう」
真剣な物言い……先程から訳が分からない事を言ってたからな、少し怖いが気になるので聞いておこう。
「我に惚れているのか?」
「…………は?」
そのナハトの言葉は俺の耳に何度も繰り返し響いた……呆けた俺の声、こんな声が出る程衝撃的な言葉だったのだ。
静かな雰囲気の喫茶店、だが俺の心は慌ただしくなってくる……なっナハトは一体何を言っている?
「…ちっ因みに我はシルクに惚れている、そんなに会っていないのに何を言ってるんだっと言われるかも知れないけどね…」
その言葉を最後に俺とナハトは互いに黙ってしまった
何とも言えない雰囲気が流れ、何も言えないまま時間だけが過ぎていく。
なっナハトは…俺に惚れている? そっそれてつまりこれは間違いなく、こっ告白……! 俺は告白されたのか! 度肝を抜いた俺はどう答えて良いか分からなくなってしまうのであった。
「くふふ…良い店だろ? 我が見付けたんだ」
「確かに良い店だな……と言うか、この街にこんな店があったなんて今まで気付かなかった……」
1人で喫茶店に入る事なんて無かったし街の外に住んでいたからあまり街の事を把握してないからなぁ……知らないのは無理もないか。
「さて、存分にゆっくりして行こう」
「おっおい、手を引っ張るな!」
ナハトに引っ張られ一番奥の席に座る。
「さて、話す前に何か頼まないか?」
「別に良いが…」
そんな会話をしていると、店員がメニュー表を2つ持って来る、その店員は小声で「ごゆっくり」とだけ粒いやいて他の席へと向かっていく。
……ナハトに連れられて喫茶店に来たわ良いが、こう言う店は初めてだから何か緊張してしまう。
「ほぉ…我の住む所には無い飲み物があるね、とても興味深い……」
そう言いながら、ぺらぺらとメニュー表を捲る……そう言えば、この席は互いに顔が見える席だったな……何時もと違って表情も良く見えると言う訳か……これ……かなり恥ずかしいな。
「ん? どうしたんだい? 我の顔を見つめて……」
「なんでもない……」
おっと……あんまり見ていては駄目だ、俺も頼む物を決めないと……。
暫くして、俺とナハトが注文した物がテーブルに出される。
「おぉ……これがコーヒーと言うのか、少し苦いね」
「だったら砂糖入れるか?」
ナハトが注文したコーヒーを飲む、飲むのは初めてみたいだ……少し飲んで苦かったのか表情を歪ませる、という訳で砂糖を進めてみた、因みに俺はコーヒーは苦手なので紅茶を頼んだ。
「うん、頂くよ…シルクが飲んでいるのは何だい?」
「紅茶だ、これも飲んだ事ないのか?」
「ないね……」
徐に言って見るとナハトは俺のティーカップを見てくる、そして人差し指を口に加えた、あぁ……1口欲しいアピールか。
「飲むか? 口をつけたが……」
あげなかったら騒ぎそうだ…そう思いティーカップをテーブルに置いた瞬間、それを素早く手に取る。
「勿論頂こう!」
ぐびっーーと飲むナハト、すると表情が一辺する。
「何だか良く分からない味だ…」
「口に合わなかったか?」
「いや……なんと言うか、美味しかったよ?」
曖昧な返答だな、それに少し顔が赤い……何故だ? そんな疑問が浮かぶと、ナハトがティーカップを返してくる。
「シルクは紅茶好きなのか?」
「いや、コーヒーが苦手だから紅茶を頼んだんだ」
「そうか……あっ、それより気づいているかシルク?」
気付く? 何の事だ? 全く検討がつかないぞ?
「気付くって何にだよ?」
「くふふふふ……成る程、本当に気付いてないようだね」
「なんだよ気持ち悪いな……」
肘をついて上目使いで見てくる、しかもくすくす笑って…何なんだ一体。
「ならば答えを教えよう……」
そんなナハトの言葉を聞きながら俺は紅茶を飲む、どうせまたからかって来るんだろうな…。
「今、間接キスしたよ」
「…………っ!」
それを聞いた瞬間、顔が真っ赤になり言葉が詰まる、かっ間接キスっ……たっ確かにしてしまった! くっ……全く気付かなかった……。何故気付かなかったんだよ俺っ!
「くふふ、本当に気付いてなかったんだね……最初にあんな事を言うから気付いていたと思っていたよ」
「さっ最初にって……何の事だ?」
「忘れたのかな? シルクは言ったじゃないか」
ナハトが顔を近付けてくる……ちっ近い…そう思ってナハトの顔を手で押さえる。
「一口飲むか? 口をつけているっむがが…」
「取り敢えず黙ってくれ!」
言った! 確かに言った! 何故言った時に気付かなかったんだ! っと言うかこの言葉……まるで俺が間接キスを誘った見たいじゃないか!
「もごもごご……」
ぺちぺちと俺の腕を叩いてくるナハト、今手を退けたら何を話すか分からない、暫く口を塞いでいたい気分だ、そう思うも少し可哀想なので手を退ける。
「ぷはっ……今のは照れ隠しかな?」
「うっ煩い……阿呆」
ぐぬぬ、はっ恥ずかしい……ナハトと間接キスしてしまった。
「嫌がらないんだね……」
「なっ何だよその言い方は……」
「我と間接キスしたのは嫌かな? と思ったんだ……」
……今、嫌じゃないと思ってしまった、表情が曇っているナハトにこう言えば良いんだろうが……恥ずかしくて言いたく無い。
「そんな事言うなよ……そう思わせたのは悪かった、謝るからそんな顔しないでくれ」
「……シルク」
真っ直ぐと見つめてくるナハト、それを直視できない俺は視線を反らした。
「すまなかった…」
「いっいや……気にしないで良い、我も意地悪だったかもしれない」
くっ空気が変な感じになってしまった……どうにかしないと駄目だな、間接キス騒動を吹き飛ばす程の話題をしなければ……俺が色々考える……すると良い話題を思い付いた。
「そっそう言えば……ナハトの親は今何処にいるんだ?」
流石に強引過ぎだと思うがあのまま何も言わないよりかは増しだ。
「あっあぁ……親は街を歩いていると思うよ、何せ我の親は旅好きでね……良く旅行に連れて行かれるんだ」
ナハトはこの話題に乗ってくれる、有り難い……このまま話題を広げてあの騒動の空気を吹き飛ばしてしまおう、そう息づく俺に対してナハトも俺に聞いてくる。
 「シルクの親はどうなんだい?」
「母さんは今は家で家事仕事、父さんは……」
話している途中で俺は下を向く……そうだった、この話題をしたら父さんの事に触れてしまうな……するとナハトは急に慌て出す。
「すっすまない……もしかして聞いてはいけなかったか?」
「いや……別に良い、死んだとかそう言うのじゃないんだ」
「それはどう言う事かな?」
正直どう説明したら良いのか分からない、何故ならあまりにあれ過ぎて話すのを遠慮したいからだ……だがナハトは聞きたそうにこっちを見ている……。
「旅に出てるんだ」
「へぇ……旅にか………って! 母と子を残してかい!?」
そうなのだ、あれは忘れもしない……俺が8歳になった時だ、その時父さんは急にこう言った『風が俺を呼んでいる…流浪の旅に出掛けなければ』と……当時8歳の俺は何が何だか良く分からなかったが今になって分かった事がある。
「俺の父さんは阿呆だから仕方無い、何が流浪の旅だよ……くそ親父がっ!」
「えっえと……シルク? 何を言っているんだ?」
俺は遠くを見て語り出す。
「今思えば全てが阿呆らしかったんだ……虹の先に俺の求める何かがあるって言い出したり……」
今思い出したら頭が痛くなってきたらそんな父の事を母はどう思っていたかと言うと……『格好いいわっあなた!』とこんな風に思っていた。
信じられるか? 俺……この夫婦の間に俺が生まれたんだぞ?
「ははっ……人間って不思議だな」
「なっ何だか良く分からないが……苦労しているんだね」
全くもってその通りだ……父さんと母さんの変な発言に何度振り回された事か……。
「はぁ……」
「えっえと…はっ話を変えようか?」
「そうしてくれると助かる」
なんか話して悲しくなって来た……ナハトのフォローに感謝しよう。
「そうだね……! 夢っ! 夢について話そうじゃないか!」
「夢……か」
家族の事の次は夢の事か……ふむ、良い話題かも知れない、ナハトの夢は何なのか物凄く気になる。
「では、言い出しっぺの我から話そうじゃないか」
「あぁ」
むんっと胸を張り息づくナハト……さぁ、どんな夢なんだ? 変なのだったら思いっきり笑ってやろう。
「我は、完璧な女性になって素晴らしい嫁になる事だね」
「…………」
どうしよう……真面目な奴だこれ、と言うか聞いてて恥ずかしいぞ……異性に向かって言う夢じゃないだろ!
「すっすす、素敵な夢だな」
何緊張してるんだ俺は! 落ち着けよ!
「くふふふ…ありがとう」
少し恥ずかしかったのか、頬をこりこり掻いて、照れる仕草を見せてくる……つっ次は俺の番か。
「さて、シルクはどんな夢を持っているんだい?」
「……いっ言わないと駄目か?」
「我も言ったんだ、言わないと駄目だね」
だっだよな……向こうも恥ずかしがりながら言ったんだ、覚悟を決めないと駄目だよな?
「商人になる事だ…」
「ん、それだけかな? 何か隠していないかい?」
じとっーーと睨んでくるナハト…いや鋭すぎだろう、出来ればこれだけで勘弁して欲しい……商人になるのが俺の夢……だが実はもう1つある、それは他人が聞けば吹き出すであろう内容だ。
「すっ好きな人を作る事だ…そしたらやりたい事がある」
「……それはなんだい?」
自分でも顔が真っ赤になっていくのが分かってしまう……そんな恥ずかしさを抑えながら話す。
「商いで儲けた金で……好きな人に、さっ最高の結婚式を開いてやる事だ」
「っ!! それ異性に向かって言うと誤解されてしまうよ?」
「あっ阿呆! お前だって似たようなもんだろう!」
あぁ! だから言いたく無かったんだ! ぐっ……また妙な空気になってしまったじゃないか……するとナハトが急にそわそわし始める……。
「しっシルク、変な事を聞いても良いかな?」
「駄目だ」
「そっ即答!? 変と言っても困らす事じゃ無いんだ!」
いやそうは言われてもな……今までがあれだったからなぁ、と嫌そうな顔をしていると……。
「だっ駄目か?」
そう言って座ったまま前屈みになり手を握りしめて来た……やっ柔らかい……って! そうじゃなくて!
「おっおいっ! なっ何を……!?」
「本当に聞いて欲しい事なんだ……頼むよ」
涙ぐみながらの懇願、くっ……その表情は卑怯だろう、そんな顔されたら聞かないと駄目じゃないか。
「わっ分かった! だから手を離してくれ! だからそんな顔をするな」
「きっ聞いてくれるのか? 恩に着るよ」
ナハトは嬉しかったのか、表情が笑顔になっていく。
「で? 聞きたい事ってなんだよ」
あれ? これと同じ事前に無かったか? まぁ……気のせいか、と言うか手を離して欲しい、そんな俺の思いを知れないナハトは恥ずかしそうに話してくる。
「えと…しっシルクは我の事をどう思っている?」
「本当に変な事を言ったな…」
「いっいや、言い間違えた…そっその、あの…」
言い間違い? 何なんだ? 急にもじもじし始めたが……なっ何でだ?
「変な奴だな……はっきり言ったらどうなんだ?」
そう言うと、ナハトは伏せ目になる……そしてこほんっーーと咳払いして上目気味で口を開く。
「でっでは率直に聞こう」
真剣な物言い……先程から訳が分からない事を言ってたからな、少し怖いが気になるので聞いておこう。
「我に惚れているのか?」
「…………は?」
そのナハトの言葉は俺の耳に何度も繰り返し響いた……呆けた俺の声、こんな声が出る程衝撃的な言葉だったのだ。
静かな雰囲気の喫茶店、だが俺の心は慌ただしくなってくる……なっナハトは一体何を言っている?
「…ちっ因みに我はシルクに惚れている、そんなに会っていないのに何を言ってるんだっと言われるかも知れないけどね…」
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