どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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人も魔物も、焦ってる時は自分でも何を言うか分からないと言うのが身に染みて分かった。

俺が喋った後、微妙な空気が流れた。
しーん……と、物音1つ聞こえなくなった。

盛大にやらかした。
なんだ、俺は何を言ってるんだ? バカじゃないか?

噛みまくりなうえ、訳の分からない事を言ってしまった。
メェさんの顔を見てみろ、ぽかーんとしてるぞ。
妙な事を言われて、戸惑ってるからだ。

こっここは、言い訳をいわんとダメだ。
だっだが、なんと言う?
「今のは冗談です!」と言うか? アホか! 緊張しながらも真剣に言ったんだ、それは通用せん。

だったら、とぼけてみるか? 「なっなぁんてな、かっかっかっ」って感じに笑い飛ばしてみるか?
そっそれこそ出来る訳がない。

くそったれ! アホみたいな事しか思い付かん!
どっどうする? どうしたらこの微妙な空気を吹き飛ばせると言うんだ!
色々と思考を巡らせて、メェさんをちらっと見てみる……すると。

「ぷふっ……」

吹き出した……そして。

「にひゃひゃひゃっ、なんです今の、にひひっ、すっ凄く面白いですよぉ、にひひひひっ」

お腹を抱えて笑いだした、そしたら豊満な胸がぷるんぷるん小さく揺れる……えっエロ可愛い。
じゃなくて!

「わっ笑わんでくださいますです!」
「だっだって、きぃ君が変な事言うからですよぉ」

ひぃひぃ苦しそうに笑うメェさんは、ダンダンとカウンターを叩く。
と言うか、変と来たか……きっ傷付くな。

「確か……あの時もそうです」
「……ん、あの時?」

笑いすぎて涙が出たのか、それを指で拭い、息を整えて言った。

「10年前、メェがお薬の調合をしてた時……きぃ君は、おっお待たせしやがりましたですございます! サンドウィッチ持ってきたですぜます! って言ったですよね?」
「ちょっ、うっうおぅわぁぁっ! めっめめっメェさん! そっそれ、それはっ!」

言った。
言うのを止めてくれって言ったのに言ったよ……メェさん、酷いです。
それ、俺にとっては消したい過去なんですぜ?

「あの時は、顔真っ赤にしながらプルプル震えて言ったですよね……」
「うっ……おっ追い打ちは勘弁してくだせぇですます」

たっ確かに、メェさんの言う通りだ。
サンドウィッチが出来て、メェさんの所に運ぶ際、物凄い緊張して、そこに辿り着いたら緊張感がピークに達して……カミカミの情緒不安定の状態で扉を打ち開けて言ったんだよな……。

あん時の驚いたメェさんの顔は今でも覚えてる。
……目を見開いて俺を見て「へ?」とも言ってたな。

「にひひ、あの時は驚いて固まっちゃったですね」
「うっ……そっそうです……ね」


確かに、メェさんは固まってた。
そんで暫く時間が経った後、戸惑いながら「あっありがとです」と言った。

そのメェさんの表情を見て、言葉を聞いた時、完全に距離が空いたと俺は察した。

「きぃ君、かくかく動きながら、メェの所にやって来てサンドウィッチを渡してくれたです……良い匂いなの、覚えてるですよ」
「うっ……あ、ありがとうございます……」

にっ、と笑うメェさん。
その表情を見て、どきっとした。

そう言えば、あの時もサンドウィッチの匂いを嗅いだ時、メェさんは笑ってくれた。
そして「良い香りです」と言ってくれた。
あの時の嬉しさ……それも今でも覚えている。

「メェの側に立ったきぃ君、緊張でガチガチだったですよね? サンドウィッチの感想、なんて言うか心配だったですか?」
「あっ、はっはい……そう……です」

メェさんの言う通りだ。
あの時は、美味しいと言ってくれるのか、本当に心配だった。
だが、その心配は杞憂に終わった、サンドウィッチを一口した後、メェさんは驚きながら笑顔を見せて「美味しいですぅっ」と言ってくれた。

そん時は凄く嬉しかった。
そこからは、薬の研究そっちのけで、ばくばく食べてくれた。

終いには用意した分のサンドウィッチを食べ終わって「御代わりですっ」と言った。

俺は嬉しさのあまり笑ったな……そしたらメェさんは、くすりと笑って「きぃ君の笑顔、恐くて面白いです」そう言って、つんっと頬をつつかれた。

……そっその次だ。
俺はさっきよりも、物凄い恥ずかしい事を言ったんだよな。

「にひひぃ、きぃ君は心配性で、緊張しいで、ラキュ様といつも喧嘩して、いつも美味しい料理を作ってくれるです。そのきぃ君が……メェの為ならば、全てを投げ出してでも料理を作ります! おっ俺は命懸けでメェに料理を作ります! そう言ってくれた時、メェはきぃ君に惚れたです」

……っ! また、言った。
俺の恥ずかしい言葉を……って、ちょっとまて、最後に気になる事を言った気がするが……きっ気のせいか?

「きぃ君」
「はっはひ」

すっ……。
手を伸ばして、俺の頬に手を触れるメェさん。
優しい眼差しだ、さっきから心が高鳴って仕方がない。

「きぃ君は口下手だから、直接的に言えないのは分かってるです。だから、メェが勝手に解釈したですが……それ、言って良いです?」
「……いっいいです……よ」

どっどっど……。
心臓が痛いくらいにドキドキしてる。
俺の言葉を聞いたメェさんは、「そうですか」と呟いて、続けて話し出す。

「さっきのきぃ君の台詞ですけど……」

うっ、さっきの言葉か……たっ確か、カミカミなのを直して纏めると。

俺に、メェさんだけの為にっ、毎日サンドウィッチを作らせてくっください。

だったな。
はぁ……なんて台詞を言ってるんだ俺は、頭可笑しいだろ。
そんな感じで、自己嫌悪してると、恥ずかしがりながらメェさんが言い始めた。
めっメェさんは俺の言葉をどう解釈したんだ?

「そっ、それは……結婚を前提に付き合って下さい……って事ですか?」

……一瞬頭が真っ白になった。
え、なっなに? なっなっななっ、なんでそうなるんだ?
訳が分からなくなった俺は……無意識に口を開いて。

「はっはい……そっそうです……」

と答えた。
その瞬間、胸が熱くなるのを感じた。
それを聞いたメェさんは驚いた表情を見せた後、嬉しそうに微笑んだ。

「そうですか……そう言う意味ですか、にひひひひ」

俺から手を離して、自分の顔を押さえるメェさん。

「うっうぅ……なっなんか恥ずかしくなってきたですよ」

メェさん……それ、俺もです。
今、一瞬でも気を抜いたら……多分気絶する。
それほどまでに、俺の精神がヤバイ。

あぁ……どうするんだ、これ。
俺はこの後、どうすれば……良いんだろうか。

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