どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
233
俺は過去に1度だけ、メェさんただ1人の為に料理をした事がある。
確かその時は日が落ちて辺りが暗くなった時だ。
料理を作ろうと思った切っ掛けは、ただ単に料理を食べて欲しかったから……いや、少なくとも料理で気を引こうとしていた気持ちもあった。
その時のメェさんは、今みたいに俺に抱き付いてこなかったからな……。
会っても素っ気なく挨拶をする仲だった、あの時の俺には心に傷がついたのを覚えている。
……魔王城の唯一の医者で、怪我人を優しく看病するメェさんの為に料理を振る舞いたかった。
その思いが一番強かった。
たまに変な薬を作って誰かに試し打ちしたくなる、そんな迷惑な癖もあるが……それすらも俺にとっては好きになった理由の1つだ。
そんなメェさんの為に作った料理……あの時は何を作ろうか悩んでいたのを思い出す。
あの時のメェさんは、医務室にこもって薬の研究をしていた。
メェさんは薬の研究をすると、没頭して何も食べないと言う事がある。
俺はそれが心配でならない、本人にとったらありがた迷惑かもしれないが、料理を作る事にした。
だか、あまり汚れない食べ物がいいんじゃないか? だって薬の研究をしてるんだからな。
薬品にこぼれでもしたら、大変な事になるかもしれん。
だったら量を少なくして汚れるリスクを減らすか?
だが……それだと、意外と大食いなメェさんは満足しない。
だったらガッツリと量の多い料理を作るか?
いやダメだ、メェさんは薬の研究で忙しい。
量が多くて、汚れなくて、手軽に食べられる物……。
その時俺はそんな事を考えていた。
暫く悩んだ末、俺はある答えに辿り着いた。
当時人間界の料理を調べている中で気になる料理があった。
それは具材をパンで挟む料理だ、その名もサンドウィッチ。
それが頭に浮かんだ俺は直ぐに行動に移していた。
冷蔵庫からレタス、トマト
それ等を包丁でトントントンッ……。
後は、戸棚から出した食パンに挟む。
それを沢山作った。
勿論、トマトとレタスのサンドウィッチだけではない。
卵とウインナー、だったりチーズ、ベーコン、ケッチャップだったりと……色んなバリエーションのサンドウィッチを作った。
食べやすい様に半分に切った、これなら片手で食べられるし、汚れる心配もない。
そんな気持ちで作った料理、今俺は、それと同じ物を作っている。
いや、美味しさはあの時より旨くなる様に作っている。
……今思ったが、これをラキュに見られていたら、回りくどい事しないで言葉で伝えてあげなよ、と抜かした所だろう。
そん時は、それが出来んからこうして料理で気持ちを伝えてるんだろうが! と言ってやるつもりだ。
……だがしかしだ、ほぼ毎日、ラキュにメェの事をからかわれて俺は怒鳴っていたが、ラキュがあぁやってからかってくれんかったら、俺はこうやって料理を作っとらんかもしれんな。
何時ものように身体が震えて、こうやって厨房に立つ事すら出来んかっただろう。
だが、メェさんに告白されたあの時、ほんの少しだけラキュが「告白されたのに緊張して言葉を返せなかったの? うわぁ、ヘタレ過ぎて引いちゃうね」と言いながらほくそ笑む姿が思い浮かんだ。
奴なら絶対にそう言う。
そしたら、それを言わせない為に行動せんとダメだ! そう思って身体が動いた。
メェさんに「料理で気持ちを伝える!」と言える事が出来た。
…………くくっ、なんやかんやでラキュは俺を後押ししたのかもしれんな。
いや、これは俺の考えすぎか。
あいつがそんな事を考える奴じゃないのは長年の付き合いで分かっている。
だが……いつも見たいに仏頂面を見せてそっぽを向くのは俺の性に合わない、ラキュにあったら礼ぐらい言ってやるか。
そんな事を思いながらも……俺はサンドウィッチを作り上げた。
前よりも旨く、前よりも見栄えが良い良いものだ。
それを皿に綺麗に盛り付ける。
ふわふわのパンに、シャキシャキのレタスと瑞々しいトマトを挟んだサンドウィッチ。
同じくふわふわのパンに、ジューシィなベーコンとチーズとケッチャップを塗ったサンドウィッチ。
今日作ったのはこの2種類、あの時より1種類少ないが……先程夕飯も食べたし、今は量は少なくて良いだろう。
コトッ……。
それをメェさんの前に置いて、俺は再び震え出した身体を落ち着ける様に息を吸い込む。
「メェさんは……おっ覚えとりますか? あの時のサンドウィッチを……」
落ち着けた筈なのに、声が震えた……。
相変わらず情けない、そう思っていると、微笑しながらメェさんは答えてくれた。
「うん、覚えてるですよ……あの時のサンドウィッチは、とっても美味しかったです。メェにとって思い出の味になってるですよ」
そう言って、メェさんはトマトとレタスのサンドウィッチを食べた。
そしたら直ぐに「おいひぃれす」と言ってくれた。
それも良い笑顔でだ、そんな顔見せられたら……ニヤけちまう。
めっメェさんに見られない様にせんと、そう思って直ぐにそっぽを向くと。
「きぃ君、今はメェだけを見て欲しいです。余所見したらダメです」
「へっ、あっ……はっはい」
怒られた。
……余所見をしないと、ニヤけた顔を見せてしまうから、前を見たくないだが……そっそう言われると、見だるを得ない。
仕方なく前を見ると、メェさんは微笑んで、サンドウィッチを食べ始めた。
もぐもぐもぐ……暫く口を動かして、ごくん。
飲み込んだ後、にっ、と白い歯を見せてこう言ってくれた。
「あの時のサンドウィッチより、美味しいです! あの時のサンドウィッチも美味しかったですけどね」
「そっそうですか……うっうれしい……でっですます」
緊張しながらそう言うと、メェさんは更に続けた。
「きぃ君……メェはですね、前のサンドウィッチを食べ終わった時に言った、きぃ君の台詞……忘れてないですよ?」
どきっ……。
その言葉を聞いて心臓が高鳴った。
あっあの時の台詞……あっあの時の……。
「あ、メェにサンドウィッチ持ってきた時にいった台詞も忘れてないですよ? きぃ君は覚えてるですか?」
「え……あ……うぅ」
俺は困惑した。
忘れてるからではない、メェさんが覚えてる事に困惑してるんだ。
メェさんはくすくす笑ってる。
うっ……出来れば思い出したくなかった。
だって、あれは……とても恥ずかしい台詞だったからだ。
「えと、確か……持ってきた時は」
「ちょっ! めっメェさん!? おっ思い出させないでくだせぇ!」
必死に止めた、前のめりになって、手をバタバタさせてメェさんの口を塞ごうとした。
だが、メェさんはひらりと交わした。
「にひひっ、焦ってるですね……面白いです」
「くっ……あのシスコンみたく、かっからかわないで……くっくださいですます」
あぁ、身体が熱い。
一気に体温が上がった気がする……。
くぅぅ、メェさんは悪戯っ娘な所があるからな。
ラキュみたく、からかってくる時があるから困る。
だが、ラキュと違って可愛らしいから許してしまうんだがな。
と、心の中でほっこりしてると……メェさんは俺の手をとった。
っ! なっなんだ……どっどうした!
再び高鳴る心臓を落ち着かせて、メェさんを見ると、ぽつりといった。
「今日は……言ってくれないですか? あの時みたいに」
その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
そして、直ぐに焦りが生まれた。
熱い眼差し、俺に対する気持ちがこもった視線。
そんな目で見つめられ、俺は硬直して口をだらしなく、ぽかーんと開けてしまう。
そのまま、口を開けたまま立ち尽くす俺だったが……何を思ったのか。
俺は焦りからか、妙な言葉をメェさんに投げ掛けてしまった。
「えとあのっ、おっ俺にっ! メェさんだけの為にっ、まっ毎日サンドウィッチをっ、つっつつっ作らせてくっくだひゃい!」
それを聞いたメェさんの病状は……そのカミカミで緊張感丸出しの世界一妙な言葉を言い終わった後の俺には知るよしもなかった。
ただ、目を見開いて固まっていたのはハッキリと見えた。
あぁぁ……やらかした。
妙な言葉を言ってしまった俺は、そう思って酷く後悔したのは言うまでもない。
確かその時は日が落ちて辺りが暗くなった時だ。
料理を作ろうと思った切っ掛けは、ただ単に料理を食べて欲しかったから……いや、少なくとも料理で気を引こうとしていた気持ちもあった。
その時のメェさんは、今みたいに俺に抱き付いてこなかったからな……。
会っても素っ気なく挨拶をする仲だった、あの時の俺には心に傷がついたのを覚えている。
……魔王城の唯一の医者で、怪我人を優しく看病するメェさんの為に料理を振る舞いたかった。
その思いが一番強かった。
たまに変な薬を作って誰かに試し打ちしたくなる、そんな迷惑な癖もあるが……それすらも俺にとっては好きになった理由の1つだ。
そんなメェさんの為に作った料理……あの時は何を作ろうか悩んでいたのを思い出す。
あの時のメェさんは、医務室にこもって薬の研究をしていた。
メェさんは薬の研究をすると、没頭して何も食べないと言う事がある。
俺はそれが心配でならない、本人にとったらありがた迷惑かもしれないが、料理を作る事にした。
だか、あまり汚れない食べ物がいいんじゃないか? だって薬の研究をしてるんだからな。
薬品にこぼれでもしたら、大変な事になるかもしれん。
だったら量を少なくして汚れるリスクを減らすか?
だが……それだと、意外と大食いなメェさんは満足しない。
だったらガッツリと量の多い料理を作るか?
いやダメだ、メェさんは薬の研究で忙しい。
量が多くて、汚れなくて、手軽に食べられる物……。
その時俺はそんな事を考えていた。
暫く悩んだ末、俺はある答えに辿り着いた。
当時人間界の料理を調べている中で気になる料理があった。
それは具材をパンで挟む料理だ、その名もサンドウィッチ。
それが頭に浮かんだ俺は直ぐに行動に移していた。
冷蔵庫からレタス、トマト
それ等を包丁でトントントンッ……。
後は、戸棚から出した食パンに挟む。
それを沢山作った。
勿論、トマトとレタスのサンドウィッチだけではない。
卵とウインナー、だったりチーズ、ベーコン、ケッチャップだったりと……色んなバリエーションのサンドウィッチを作った。
食べやすい様に半分に切った、これなら片手で食べられるし、汚れる心配もない。
そんな気持ちで作った料理、今俺は、それと同じ物を作っている。
いや、美味しさはあの時より旨くなる様に作っている。
……今思ったが、これをラキュに見られていたら、回りくどい事しないで言葉で伝えてあげなよ、と抜かした所だろう。
そん時は、それが出来んからこうして料理で気持ちを伝えてるんだろうが! と言ってやるつもりだ。
……だがしかしだ、ほぼ毎日、ラキュにメェの事をからかわれて俺は怒鳴っていたが、ラキュがあぁやってからかってくれんかったら、俺はこうやって料理を作っとらんかもしれんな。
何時ものように身体が震えて、こうやって厨房に立つ事すら出来んかっただろう。
だが、メェさんに告白されたあの時、ほんの少しだけラキュが「告白されたのに緊張して言葉を返せなかったの? うわぁ、ヘタレ過ぎて引いちゃうね」と言いながらほくそ笑む姿が思い浮かんだ。
奴なら絶対にそう言う。
そしたら、それを言わせない為に行動せんとダメだ! そう思って身体が動いた。
メェさんに「料理で気持ちを伝える!」と言える事が出来た。
…………くくっ、なんやかんやでラキュは俺を後押ししたのかもしれんな。
いや、これは俺の考えすぎか。
あいつがそんな事を考える奴じゃないのは長年の付き合いで分かっている。
だが……いつも見たいに仏頂面を見せてそっぽを向くのは俺の性に合わない、ラキュにあったら礼ぐらい言ってやるか。
そんな事を思いながらも……俺はサンドウィッチを作り上げた。
前よりも旨く、前よりも見栄えが良い良いものだ。
それを皿に綺麗に盛り付ける。
ふわふわのパンに、シャキシャキのレタスと瑞々しいトマトを挟んだサンドウィッチ。
同じくふわふわのパンに、ジューシィなベーコンとチーズとケッチャップを塗ったサンドウィッチ。
今日作ったのはこの2種類、あの時より1種類少ないが……先程夕飯も食べたし、今は量は少なくて良いだろう。
コトッ……。
それをメェさんの前に置いて、俺は再び震え出した身体を落ち着ける様に息を吸い込む。
「メェさんは……おっ覚えとりますか? あの時のサンドウィッチを……」
落ち着けた筈なのに、声が震えた……。
相変わらず情けない、そう思っていると、微笑しながらメェさんは答えてくれた。
「うん、覚えてるですよ……あの時のサンドウィッチは、とっても美味しかったです。メェにとって思い出の味になってるですよ」
そう言って、メェさんはトマトとレタスのサンドウィッチを食べた。
そしたら直ぐに「おいひぃれす」と言ってくれた。
それも良い笑顔でだ、そんな顔見せられたら……ニヤけちまう。
めっメェさんに見られない様にせんと、そう思って直ぐにそっぽを向くと。
「きぃ君、今はメェだけを見て欲しいです。余所見したらダメです」
「へっ、あっ……はっはい」
怒られた。
……余所見をしないと、ニヤけた顔を見せてしまうから、前を見たくないだが……そっそう言われると、見だるを得ない。
仕方なく前を見ると、メェさんは微笑んで、サンドウィッチを食べ始めた。
もぐもぐもぐ……暫く口を動かして、ごくん。
飲み込んだ後、にっ、と白い歯を見せてこう言ってくれた。
「あの時のサンドウィッチより、美味しいです! あの時のサンドウィッチも美味しかったですけどね」
「そっそうですか……うっうれしい……でっですます」
緊張しながらそう言うと、メェさんは更に続けた。
「きぃ君……メェはですね、前のサンドウィッチを食べ終わった時に言った、きぃ君の台詞……忘れてないですよ?」
どきっ……。
その言葉を聞いて心臓が高鳴った。
あっあの時の台詞……あっあの時の……。
「あ、メェにサンドウィッチ持ってきた時にいった台詞も忘れてないですよ? きぃ君は覚えてるですか?」
「え……あ……うぅ」
俺は困惑した。
忘れてるからではない、メェさんが覚えてる事に困惑してるんだ。
メェさんはくすくす笑ってる。
うっ……出来れば思い出したくなかった。
だって、あれは……とても恥ずかしい台詞だったからだ。
「えと、確か……持ってきた時は」
「ちょっ! めっメェさん!? おっ思い出させないでくだせぇ!」
必死に止めた、前のめりになって、手をバタバタさせてメェさんの口を塞ごうとした。
だが、メェさんはひらりと交わした。
「にひひっ、焦ってるですね……面白いです」
「くっ……あのシスコンみたく、かっからかわないで……くっくださいですます」
あぁ、身体が熱い。
一気に体温が上がった気がする……。
くぅぅ、メェさんは悪戯っ娘な所があるからな。
ラキュみたく、からかってくる時があるから困る。
だが、ラキュと違って可愛らしいから許してしまうんだがな。
と、心の中でほっこりしてると……メェさんは俺の手をとった。
っ! なっなんだ……どっどうした!
再び高鳴る心臓を落ち着かせて、メェさんを見ると、ぽつりといった。
「今日は……言ってくれないですか? あの時みたいに」
その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
そして、直ぐに焦りが生まれた。
熱い眼差し、俺に対する気持ちがこもった視線。
そんな目で見つめられ、俺は硬直して口をだらしなく、ぽかーんと開けてしまう。
そのまま、口を開けたまま立ち尽くす俺だったが……何を思ったのか。
俺は焦りからか、妙な言葉をメェさんに投げ掛けてしまった。
「えとあのっ、おっ俺にっ! メェさんだけの為にっ、まっ毎日サンドウィッチをっ、つっつつっ作らせてくっくだひゃい!」
それを聞いたメェさんの病状は……そのカミカミで緊張感丸出しの世界一妙な言葉を言い終わった後の俺には知るよしもなかった。
ただ、目を見開いて固まっていたのはハッキリと見えた。
あぁぁ……やらかした。
妙な言葉を言ってしまった俺は、そう思って酷く後悔したのは言うまでもない。
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