どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
206
「……」
「……」
無言の時間が続く。
あれからずっとだ、でも仕方ない、何故ならこの状況を打開する方法が思い付つかないからだ。
思い付いていれば、直ぐに実行して、この気まずい雰囲気を吹き飛ばしている。
それが出来ていたら苦労はしない!
「っ……」
ロアに見えない様に顔をしかめる俺、なんか無いか? 何か話さないと気持ち的にしんどい、と言うか、さっきからこんな事ばかり考えてるな。
それは仕方ない事だ。
俺がしっかり足を踏ん張ってれば、あんな事にならなかったんだ。
いっいや、ロアもロアで、手を離してくれていたらあんな事にならなかったんじゃないか?
……いやいやいや、ここでロアの性にしたら話がややこしくなって解決出来なくなる。
くそぅ、喫茶店に来てなんでこんなに悩まなくちゃいけないんだ!
俺は騒ぎを起こしたくないのにな……俺って、ハプニングに見舞われやすい人なのか?
どう形容したら良いか分からない気持ちのまま、無言で待ち続ける俺。
その時だ、何故かは知らない、何故このタイミングで思い出したのかが分からないのだが……とある過去を思い出した。
「……ぁ」
小さな声を上げる俺、それに反応したロアが俺の方を向く。
「どっどうかしたのかえ?」
「いっいや……なんでも」
ない、そう言おうとしたが、続きの言葉を飲み込んだ。
いや、ここはどんな話だろうが会話した方が良いんじゃないか? このまま無言よりかは何10倍もマシだ。
「ん、なっなんじゃ? 言い掛けて止めると気になるではないか」
そう決心すると、言葉を途中で止めたのが気になったのか、ロアが不思議そうな顔をして、俺を見て来る。
まだ、顔は少しだけ真っ赤だが、さっきよりかはマシだ。
俺は、ゆっくりとロアを見て唾を飲み込む。
あぁ、何だろうな……なんでこんなに緊張してるんだろう? ただ、さっき思い出した話をするだけなのに。
でも、その思い出話……ナハトの事なんだよな。
ロアとそっくりの女性、俺が15の時に出会った女性、誰もが驚く様な速さで好きになり、誰もが驚く様な速さで告白をした。
そのナハトがロアに重なるから緊張しているんだろうか? しょっ正直 良く分からない……だが、色んな意味で話した方が良いだろう。
俺は、ぎゅっと拳を握って話す事を決意した。
「あぁ、えと……話そうか迷ったんだが……今話そうって思ったんだ」
「おっおぅ、なんか良くわからぬが……きっ聞こうかのぅ」
うっ……そう言われると言い辛くなるな。
だっだが、そうも言ってられないか……よしっ、言うぞ!
「えと、俺が15の時の話なんだが……」
「っ、ほっほぉ……それで?」
ん? 今ロアが目を見開いたな、その後は何事も無かったかの様に相槌をする。
なっなんだ今の? 何かに驚いたか? いっいや、気にしちゃダメだ、話を続けよう。
「あぁ、そのとある日にな……喫茶店に行ったんだよ」
「ほっほぉ、その者は誰か聞いても言いかえ?」
誰と……か、まぁ聞かれるよな。
「ナハトって人だ」
「なっナハト……か、なっなるほど」
ん? なんだか変な表情になってるな、多分俺はナハトの名前は言って無いから初耳の筈なのに、まるで知ってる様な顔をしている。
気になるな、よし……ここは聞いてみるか。
「もしかして、知ってる人か?」
まぁ、その可能性はないだろう。
ナハトは人間、ロアは魔物、知ってたら驚きだ。
その時は、人間の知り合いも居たんだな、と言おう。
「いっいや、知らぬ! 全くもって知らぬ人じゃ!」
「うぉっ、なっなんだよ……そんなに否定しなくても良いだろう」
身体全身を使っての否定、なんか必死さを感じてしまう。
知らないなら普通に知らないって言えば良いのに。
「で、でじゃ……そっそのナハトとか言う女がどうしたのじゃ?」
ん?
俺はまだ名前しか言ってないのに……。
「え? なんで女って分かったんだ?」
「ふぇぁっ!? そっそれは……その、まっ魔王の力じゃ!」
? よっ良く分からないが、そう言う事にしておこう。
「そっそうか、えっえと、話を戻すが、ナハトと喫茶店に行った時、似た様な事が起きたんだよ……お互い恥ずかしくなる様な事がな」
俺はそう話した後、急に身体が熱くなった。
ぐっ……今になって気付いたが、この話し言うの凄く恥ずかしいぞ!
お互いが好きって告白して、夢を語って、婚約までした。
凛としてはいたが、それを語っているナハトは、とても恥ずかしそうだった。
だが、その表情には喜びも含まれてたのを覚えている。
俺もそんな顔をしていたのか? いや……多分だが、恥ずかしかったから、ずっと顔を真っ赤にしてアタフタしていただろう。
「そっそうか……」
ロアが下を向いた。
そして、真剣な眼差しで再び俺を見て来る。
そっと手を伸ばし、俺の頬に触れて、ロアは口を開いた。
「もしかして、そのナハトって女がシルクの好きな相手かえ?」
……。
心臓が高鳴ったのが分かった。
そうか、まだ俺は言ってないのか。
いや、好きな人がいると言うのはいったが、その人の名前を言っていなかった。
俺の事が好きな奴に、面と向かって好きな人の名前を言うその行為が、ロアに悪い気がするからだ。
何故悪いのかは知らない、だが好きな人がいる、といってる時点で、その考えは矛盾しているのは自分でも分かっていた。
だが、悪いと言うのは矛盾してても思ってしまうんだ。
「シルク……」
切ない声を出すロア、頬に触れた彼女の手は暖かくて柔らかい。
何度も触れた彼女の手だが、今この瞬間……その感触が敏感に感じた。
ロア、お前は聞きたいのか? その返事を……。
俺は、俺の事を好きだと言ってくれる奴を悲しませたくない。
なのに、その答えを聞きたいのか?
「わらわは大丈夫じゃ、じゃから……答えてくれんか?」
暖かい視線、例えるなら女神の様な慈悲に溢れた眼。
相手は魔王なのに、変な事を思ってしまった。
ロアは覚悟を決めているのかもしれない。
普通なら聞きたく無い事の筈なのに、それを聞きたがっている。
こうなると言わないでいるのが悪いじゃないか。
いくらあの状況を打開したいからって、この話を言うんじゃ無かったな。
……いや、そんな事を思っても仕方無い。
俺は、真っ直ぐロアを見つめて低い呼吸をする。
ひとしきりやって落ち着いた後、俺はロアに答えを言った。
「あぁその通りだ、俺の好きな相手は……ナハトだ」
この言葉を言い終わった俺は、ある事を予想していた。
悲しませてしまった、そんな予想をした。
だが事実だ、ロアにはこの事実を受け止めて欲しい、俺はそう強く願った。
「……」
無言の時間が続く。
あれからずっとだ、でも仕方ない、何故ならこの状況を打開する方法が思い付つかないからだ。
思い付いていれば、直ぐに実行して、この気まずい雰囲気を吹き飛ばしている。
それが出来ていたら苦労はしない!
「っ……」
ロアに見えない様に顔をしかめる俺、なんか無いか? 何か話さないと気持ち的にしんどい、と言うか、さっきからこんな事ばかり考えてるな。
それは仕方ない事だ。
俺がしっかり足を踏ん張ってれば、あんな事にならなかったんだ。
いっいや、ロアもロアで、手を離してくれていたらあんな事にならなかったんじゃないか?
……いやいやいや、ここでロアの性にしたら話がややこしくなって解決出来なくなる。
くそぅ、喫茶店に来てなんでこんなに悩まなくちゃいけないんだ!
俺は騒ぎを起こしたくないのにな……俺って、ハプニングに見舞われやすい人なのか?
どう形容したら良いか分からない気持ちのまま、無言で待ち続ける俺。
その時だ、何故かは知らない、何故このタイミングで思い出したのかが分からないのだが……とある過去を思い出した。
「……ぁ」
小さな声を上げる俺、それに反応したロアが俺の方を向く。
「どっどうかしたのかえ?」
「いっいや……なんでも」
ない、そう言おうとしたが、続きの言葉を飲み込んだ。
いや、ここはどんな話だろうが会話した方が良いんじゃないか? このまま無言よりかは何10倍もマシだ。
「ん、なっなんじゃ? 言い掛けて止めると気になるではないか」
そう決心すると、言葉を途中で止めたのが気になったのか、ロアが不思議そうな顔をして、俺を見て来る。
まだ、顔は少しだけ真っ赤だが、さっきよりかはマシだ。
俺は、ゆっくりとロアを見て唾を飲み込む。
あぁ、何だろうな……なんでこんなに緊張してるんだろう? ただ、さっき思い出した話をするだけなのに。
でも、その思い出話……ナハトの事なんだよな。
ロアとそっくりの女性、俺が15の時に出会った女性、誰もが驚く様な速さで好きになり、誰もが驚く様な速さで告白をした。
そのナハトがロアに重なるから緊張しているんだろうか? しょっ正直 良く分からない……だが、色んな意味で話した方が良いだろう。
俺は、ぎゅっと拳を握って話す事を決意した。
「あぁ、えと……話そうか迷ったんだが……今話そうって思ったんだ」
「おっおぅ、なんか良くわからぬが……きっ聞こうかのぅ」
うっ……そう言われると言い辛くなるな。
だっだが、そうも言ってられないか……よしっ、言うぞ!
「えと、俺が15の時の話なんだが……」
「っ、ほっほぉ……それで?」
ん? 今ロアが目を見開いたな、その後は何事も無かったかの様に相槌をする。
なっなんだ今の? 何かに驚いたか? いっいや、気にしちゃダメだ、話を続けよう。
「あぁ、そのとある日にな……喫茶店に行ったんだよ」
「ほっほぉ、その者は誰か聞いても言いかえ?」
誰と……か、まぁ聞かれるよな。
「ナハトって人だ」
「なっナハト……か、なっなるほど」
ん? なんだか変な表情になってるな、多分俺はナハトの名前は言って無いから初耳の筈なのに、まるで知ってる様な顔をしている。
気になるな、よし……ここは聞いてみるか。
「もしかして、知ってる人か?」
まぁ、その可能性はないだろう。
ナハトは人間、ロアは魔物、知ってたら驚きだ。
その時は、人間の知り合いも居たんだな、と言おう。
「いっいや、知らぬ! 全くもって知らぬ人じゃ!」
「うぉっ、なっなんだよ……そんなに否定しなくても良いだろう」
身体全身を使っての否定、なんか必死さを感じてしまう。
知らないなら普通に知らないって言えば良いのに。
「で、でじゃ……そっそのナハトとか言う女がどうしたのじゃ?」
ん?
俺はまだ名前しか言ってないのに……。
「え? なんで女って分かったんだ?」
「ふぇぁっ!? そっそれは……その、まっ魔王の力じゃ!」
? よっ良く分からないが、そう言う事にしておこう。
「そっそうか、えっえと、話を戻すが、ナハトと喫茶店に行った時、似た様な事が起きたんだよ……お互い恥ずかしくなる様な事がな」
俺はそう話した後、急に身体が熱くなった。
ぐっ……今になって気付いたが、この話し言うの凄く恥ずかしいぞ!
お互いが好きって告白して、夢を語って、婚約までした。
凛としてはいたが、それを語っているナハトは、とても恥ずかしそうだった。
だが、その表情には喜びも含まれてたのを覚えている。
俺もそんな顔をしていたのか? いや……多分だが、恥ずかしかったから、ずっと顔を真っ赤にしてアタフタしていただろう。
「そっそうか……」
ロアが下を向いた。
そして、真剣な眼差しで再び俺を見て来る。
そっと手を伸ばし、俺の頬に触れて、ロアは口を開いた。
「もしかして、そのナハトって女がシルクの好きな相手かえ?」
……。
心臓が高鳴ったのが分かった。
そうか、まだ俺は言ってないのか。
いや、好きな人がいると言うのはいったが、その人の名前を言っていなかった。
俺の事が好きな奴に、面と向かって好きな人の名前を言うその行為が、ロアに悪い気がするからだ。
何故悪いのかは知らない、だが好きな人がいる、といってる時点で、その考えは矛盾しているのは自分でも分かっていた。
だが、悪いと言うのは矛盾してても思ってしまうんだ。
「シルク……」
切ない声を出すロア、頬に触れた彼女の手は暖かくて柔らかい。
何度も触れた彼女の手だが、今この瞬間……その感触が敏感に感じた。
ロア、お前は聞きたいのか? その返事を……。
俺は、俺の事を好きだと言ってくれる奴を悲しませたくない。
なのに、その答えを聞きたいのか?
「わらわは大丈夫じゃ、じゃから……答えてくれんか?」
暖かい視線、例えるなら女神の様な慈悲に溢れた眼。
相手は魔王なのに、変な事を思ってしまった。
ロアは覚悟を決めているのかもしれない。
普通なら聞きたく無い事の筈なのに、それを聞きたがっている。
こうなると言わないでいるのが悪いじゃないか。
いくらあの状況を打開したいからって、この話を言うんじゃ無かったな。
……いや、そんな事を思っても仕方無い。
俺は、真っ直ぐロアを見つめて低い呼吸をする。
ひとしきりやって落ち着いた後、俺はロアに答えを言った。
「あぁその通りだ、俺の好きな相手は……ナハトだ」
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