どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

26

「くふっ、綺麗な白い肌をしているのぅ……すべすべのもち肌じゃ」
「あっあんまり、そう言う事を言うな…」

時間は気付けば夜だった、そんなに経っていたんだと思う暇なんてなかった、何故かって? それはベットに座る俺の後ろでロアが俺の背中を濡れたタオルで拭いているからだ、っっ! 熱を出しているから冷たさが良く感じてしまってなんか変な感覚だ、身体が震えてるし早い所終わって欲しい。

「脇も汗を掻いているな……拭いてやるから脇を上げるのじゃ」
「そっそんな丁寧に、しなくて良い……はっ恥ずかしいだろ」
「馬鹿を言うでない! 汗を掻いたままだと風邪が悪化してしまうだろう」
「そっそうだが……恥ずかしい物は恥ずかしいんだ!」

ぐぬぬ……看病してくれるのは有り難い、だがこっちは風邪を引いていてしんどいと言うのにこの言い様…向こうが言う事はもっともなんだから文句は言えないな、ここは話を変えて紛らわすとしようか。

「なぁ、俺の風邪って…どう言う症状なんだ?」

けほけほと咳き込みそうなのを我慢しつつ聞いてみる、ロアは俺の脇を拭きながら暫く黙り混む。

「熱と咳に身体に気だるさが襲うらしい…」
「なんだ、普通の風邪じゃないか」
「いや少し違う、シルク……変なキノコの胞子を吸わなかったかの?」
「ん? けほっけほっ! 吸い込んだ記憶はある」

俺が咳き込んだのを見て背中を擦りつつ身体を拭き終わったのか服を着せてくる、あの茸やっぱり毒茸だったのか。

「それは、紫と黒色のキノコかえ?」
「あぁ……そう……だ」

身体の震えを感じつつ答える、ロアは俺を気づかってベットに寝かせて布団を掛けてくれる。

「やはりか……メェの見立て通りじゃのぅ」
「随分と、気になる……言い方だな……そんなに悪い症状でも出るのか?」
「命に関わる物ではないから安心するのじゃ、ちょっとした身体の変化程度じゃ」

ちょっとした身体の変化…何だか良く分からないな。
ぐっ、駄目だ! 気になるが体調が悪くて考えられない……でも命に関わらないと聞いて安心した。

「今はゆっくり休むと良いのじゃ、わらわがずっと看病してやろう」
「それだとロアに風邪がうつるぞ?それにずっとなんて駄目だ、俺の事は良いから辛くなったら休んでくれ」

今俺の声、掠れたな……今気付いたが喉が痛くなってきたな、そんな俺の言葉を聞くと、ロアはくすりと笑い俺の額に手を置いた……その手は、すべすべで柔らかい手で暖かかった。

「わらわは大丈夫じゃ……シルクと違って柔な身体では無いのじゃ」
「そっそうか……ってそれ嫌味か?」

こんな時に人をからかいやがって……まぁそれでこそロアなんだけどな。
しかしこのロアの笑顔…度々見ているが何時も以上に可愛く見えるのは何故だ?

「ん? 顔が赤いのぅ、熱が出て来た様じゃな」
「…」

くっ……なんなんだこの気持ちは! 風邪の性か? 風邪の性なんだよな? 心配そうに俺を見つめてくるロア、何時もは過剰なスキンシップを仕掛けてくるのに今はしなかった、何時もと違って優しく俺を看病してくる、俺はロアから視線を反らす……このまま見ていたら気分の悪さと恥ずかしさでどうにかなりそうだ、布団を頭まで被ってこの場を誤魔化すとしよう。

「どうしたのじゃ? もう寝るかえ?」
「あっあぁ……けほっ! そう……させてもらう」
「では…」

…ん? 少し身体が重くなった、ギシッーーとベットが軋む……何だ? 俺は気になって布団をずらしてロアの方を向く。

「!」

目の前には優しい目をしたロアがいた、ベットに寝ている俺に寄り掛かって柔らかい胸が俺の身体に当たっている、その瞬間俺の心音が早鐘を打つ、こんな状況はここに来てから何度か味わった事だ、しかし……そんな顔して顔を近付けた事無かった。

「わらわ流のおまじない…受け取ってくやれ」

俺の髪の毛にロアの柔かな手がゆっくりと触れてくる、少しくすぐったい……何だが良くわからない感覚が襲った、俺はそんな状況にドキドキして何も行動を起こせなかった、きっとこれは風邪の性に違いないだろう……体調が良ければ突っ込みの1つでもだた筈だ、だけど何故だ? 体調が良い時でもこんな顔をしたロアを見てしまったらあいつのする事を何でも受け入れてしまいそうだ。

「ちゅ……」

優しく唇を重ねて直ぐ離れる、それはいつもと違って軽いキス……いつもと違って激しい物じゃなく、温かで優しくて包み込む様なそんなキスだ。
可笑しい、何故俺は何も言わない? 何故こんなにドキドキするんだ? 落ち着け……これは風邪の性なんだ、だから何時もと違う感覚がするんだ、俺は心の中で何度も言い聞かせる。

「ではの……ゆっくりと休むのじゃよ?」

そう言ってロアは身体を起こす、そしてそのまま部屋を出ていく、すると部屋の灯りが消える。

「なんだよ、急に優しくして……」

あんなに優しく出来るんだな、ロアは本当に俺の事を心配してる、じゃなきゃ、あんな笑顔を見せない筈だ、本気で俺の事が好きなんだ、ロアが部屋から去ってから脳内であの優しい笑顔が思い浮かんでくる、それが恥ずかしくなって目を細め布団を頭まで被る、俺……今絶対に顔が真っ赤になってるだろうな。

「あっ……俺のバンダナと髪ゴム持っていったな」

元気になったら返して貰おう。

「そう言えば……ナハトは、どうしてるかな?」

幼い頃誓いあった約束……俺がこんな事してる間に君はどうしてるんだ? きっと夢の為に頑張ってるんだろう、もしかしたらもう叶えたかも知れない。

「俺は必ず夢を叶える」

そう呟いて俺は目を閉じた、すると強烈な睡魔が襲って来た、風邪を引いていると言うのにこんなに眠気が出るとはな……まぁ有り難い事だな、そのまま深い眠りにつく俺……今はゆっくり休もう、身体が良くなったら全てを考えるとしよう。


軽く寝息をたてるシルク、静まり返った部屋の扉をゆっくり開け1人の男がやって来る。

「やれやれ……これは手を貸さないといけないね」

その者は黒いタキシードに黒いマントを付けた服装をした少し背の低い男であった、と言うかこの男棺桶から出て来て水色ショートヘアのドラキュラである、その男が布団をシルクの肩付近までずらす。

「姉上に張れたら怒られるかな? でも、見ていて焦れったいんだよね…だから勝手に手を貸さして貰うよ」

そしてシルクの顔付近に手を持ってくる、すると男の手が青白く光る。

「んっ…んん」

眩しそうに横を向くシルクであったが目を覚ます様子は無かった。

「姉上の初恋なんだ、早く思い出して貰うよ……シルク君」

そう言い放ちその男はマントを翻して部屋から出ていく、その際にタキシードの中から真っ赤な何かを取り出す……それにかぶりつき静かに部屋を出ていく謎の男、口元から滴る赤い液体を手で拭き取りながら月明かりが窓から差し込む廊下を歩く。

「ふぅ……さて魔法を使ったからお腹が空いたよ」

ため息をつく男は窓の側に立ち下を見てみる。

「あいつはいない様だね」

何かを確認して窓を開ける。

「さていつも通り食べて来ようかな? くふふっ、考えるまでもないか……」

ペロリと舌を出す謎の男、ドラキュラの食事……不吉な事しか思い浮かばない、シルクが病気で寝ている時に何かが起ころうとしている、男が窓のさっしに足を掛けたまさにその時だ。

「出て来てくれたんですねラキュ様」
「っ!?」

がしっと両肩を掴まれるラキュと呼ばれた男、肩を掴んだ声の主は、はぁ…はぁ…と息を乱していた、これは興奮していると言っても良いだろう。

「ヴァっヴァーム…」

顔をひきつらせるラキュ…そんな表情を見てヴァームが満面の笑みを浮かべる、そのヴァームの笑顔は月明かりに照らされ妖しさと妖艶さが滲み出ていた、身体を震わせるラキュ、瞬時に身の危険を悟ったらしい。

「最近、ラキュにシて無かったから欲求不満何ですよ……男の娘らしく責任取って下さいね?」
「誤解を招くエロい言い方は止めて欲しいね……それに僕は男だよ? あと僕は食事しに行くとちゅ」
「やりませんか?」

ラキュの言葉を遮ってヴァームが言葉を発したその直後…「あぁぁぁぁっ!」と言う悲鳴が城中に響きヴァームとラキュは城の何処へ消えて行ったと言う……。
結局突如現れたラキュが何なのか分からず仕舞いで終わってしまった、まぁ言える事はラキュは今とんでもない事をされていると言う事だけだ……健闘を祈る!

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