どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

203

「ん?」
「どうしたのじゃシルク、突然立ち止まって……」
「いや、なんでもない」

俺とロアは城下街を歩いてる、気温的には、少し寒いくらい、相変わらずここは、色んな魔物達が歩いてる。
時折俺を見ては「おほっ」と嬉しそうに声をあげる魔物がいるが……お前等は俺に対して一体何を感じてるんだ?
変にデレデレした目を向けてくるんじゃない! イライラするだろう。

おっと、そんな事は置いといて、今お洒落な雰囲気がある喫茶店を横切った所だ。
丁度その頃、微かにだが叫び声が聞こえた気がする。

だが、気のせいかもしれないな。
ここは平和な場所だ、俺とラキュに被害が出る事があるが、それ以外に目立った被害は出た事はない。
つまり、俺の聞き間違い、きっと思い込み過ぎたんだろう。

そう悟った俺は、再び歩き始めた。

「くふふふ、もしかして、立ち止まってるのは緊張からかえ?」
「……まぁ、そう言う事にしておこう」

側にいるロアは腕を組んでくる。
恥ずかしかったが、ここは抵抗はしなかった……これも、自分自身の為、そう思ったからだ。

「おぉ、おぉ……顔を紅くさせおって、今はツンデレで言う所のツンなのかえ? ならば、早うデレを見せてくれんかの?」
「口を開いたらそんな事ばっかり言うんだな、飽きないのか?」
「くふふふ、飽きるわけなかろう」

なるほど、飽きないのか、まぁいつもの返答と同じだな。
はぁ……ため息をはいて肩を落とすと、ロアがニヤニヤしながら、肩を押し付けてくる。

「なんだよ、あんまり寄ってくるな、歩き辛いだろ」
「そう言うでない、これはあれじゃ、もっと構って欲しいと言うアピールじゃ」
「…………」

アピールか、そう言えばロアは、頻繁にアピールしてくるな。
俺はそれをスルーしたり軽くあしらったりしてる……。

1度、ロアを見てから空を見る俺、1度くらいは乗っても良いかも知れない。

ふと頭の中で、そんな考えが出てしまう。
と言うかロアを外に連れ出したのは俺だ、だから何らかのアクションをしないといけない。

このまま何もせず帰ったらロアに悪い、だから何かを仕掛けてみよう。

……と、考えて見たが直ぐには思い付かない。
いや、1つだけ思い付いた。
ここは定番のあれでいこう、心に決めた俺は、真っ直ぐと瞳を見つめ、もう一度ロアを見る。
真っ直ぐと瞳を見つめ、視線を反らさない様に真剣に。

「なぁロア」
「うぉっ、なっ何じゃ、急にキリッとした表情かおをしおって」

俺の言葉を聞いて、小さく身体が跳ねたあと、頬を赤く染めるロア。
そんなロアに俺は続けて話していく。

「さっき通り過ぎた喫茶店、よっていかないか?」

それを言った瞬間、ロアの身体が小さく跳ねた。
目なんか、大きく開いて俺を見つめ返してくる。

「なっ、そっその……良いのかえ?」
「別にいいぞ、と言うか俺が誘ったんだから良いのかも何も無いだろう」
「そっそそっ、それもそうじゃな」

急に俺から離れて頬を押さえるロアは、回り右して来た道を戻っていく。

「なっならば、ゆっ行くぞ!」

……。
なんか知らんが、ロアの方が緊張してる、緊張するのは俺だと言うのに、やはり誘われた側も緊張するものなのか?

「あっ、待ってくれ……」

そんな事を考えつつ、ロアを呼び止める。
すると「ん?」と呟き、こっちを見てくる。
普段なら、こう言う事は言わないが……自分の為とロアの為だ。
勇気を出して言おう。

「先に行くな、そっその……一緒に行くぞ」

この台詞を言った瞬間、身体が熱くなるのを感じた。
うわぁ、自分らしくもない事を言ってしまった。

ほら、それを聞いたロアは、口をぽかぁんっと開けてしまってるじゃないか。

硬直してるロアに近寄った後、俺はロアの手を握る。

そしたらだ……。

「ひゃひっ!?」

ロアは変な声を出した。
直ぐに手を引っ込めようとしたが、俺はロアの手を強く握る。
ロアを見る為には、ここで手を話すのは駄目だ。

「ほっほら、行くぞ……」

そう言って、ロアを引っ張っていく。
チラリと後ろを見ると、うつ向いて、何かぶつぶつ言ってるロアがいた。

恐らくだが、「いつものシルクじゃない」だとか呟いてるんだろう。
そう、口に出されてしまえば俺はきっと「そっそうか?」と誤魔化すだろう。

とっと言うか、この行動、強引過ぎないか? 逆にロアは引いてないか? 大丈夫だよな? がっつき過ぎてないよな?

色んな考えが頭を過って、身体の温度がどんどん上がる。
熱い、恥ずかしい、出来る事なら走って逃げたい。

そんな弱い考えを振り払うかの様に、俺は勢い良く首を横に振るう。

そして、喫茶店に目を向ける。
向かう喫茶店は、先程話した通り良い雰囲気が出ている。
木造で、周りには綺麗な華が咲いてる鉢植えが置いてある。

近付くにつれ感じる、珈琲と紅茶の匂い。
それが唯一、俺の緊張を解している様に感じた。

……。
さぁ、ここからが本番かもしれない。
店に入ればより緊張する事になるだろう、先程から一言も喋らないロアと、どうにかして会話とかをしないといけない。

さぁ……頑張る時が来た。
十分に気を引き閉めて行こうじゃないか。
決意を固めた俺は、入り口に近付き、ドアノブに手を掛けた。

さて、ここから何が起こるんだろうか、出来れば平穏に終わる事を……願いたいが無理そうだな。
必ず何か起きそうだ、よっよし、だったら色々と頑張って乗り越えてやるさ。

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