どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

199

日の当たる廊下を歩く僕とアヤネ、一緒に行動するのは珍しいかもしれないね。


さて、シルク君の手助けをしたつもりだけど……上手くいったかな?

「らっ君、次もまっすぐ?」
「いや、次は右だね」
「ん」
「そっちは左だね、そのまま後ろ向こうか」
「ん」

僕の指示の元、アヤネは方向転換、その際に黒髪ポニーテールが、ふわりと揺れた。

「どしたの?」
「いや、何でも無いよ」

僕の視線に気付いたのか、アヤネが僕を見てくる、きょとんとした顔をしていて可愛いね。

「ほら、早く行くよ」
「ん」

アヤネを追い抜かして、前に進む僕。
料理は魔法で収納したから、今は手ぶら、これがあるからアヤネに頼まなくても僕1人で行けたんだけど……これもシルク君の為だ。

まぁ、結果的にアヤネの恋路を邪魔してる事になってるから罪悪感は残ってる。
ごめんね、アヤネ。

「ねぇ、らっ君」
「何かな?」

前を向いたまま、アヤネは話し掛けて来た。

「メェちゃんの所は、まだ?」
「んー……そうだね、もう少ししたら着くよ」
「そう」

メェは、食堂を出る前に「」って言った。
それはもう終わってるだろうから、今いる場所は自室だろう。

そこにいなかったら、魔法で探そう。
とか、考えながらとことこ歩いていく。


そして、メェの部屋の前についた。
場所は医務室の隣、扉には木のプレートが掛けてあり、そこに可愛く"メェのお部屋"と書かれている。
その扉を、コンコンコンっと叩く。

アヤネも僕と同じ様に叩く、ココンッコンッコッコッコンっ……コンッーー
とてもリズミカルな叩き方だ。

そしたら、声が聞こえてくる。

「はぁい、今行くですよぉ」

メェの声だ。
とっとっとっ、と足音が聞こえ、扉が、ガチャっと開く。
そこからは突然メェが出てくる。

「おぉ、なんか珍しい組み合わせですぅ」
「それ、僕も思ってたよ」

やはり、メェもそう思ったらしいね、そんなやり取りをしてると。

「メェちゃん、ご飯持ってきたよ」
「めぇ?」

アヤネが、そう言った。
ぴょこんっと僕の前に出て来て、メェの両手を掴む。

「ご飯食べよ」
「めっめぇ……そう言えば、きぃ君の事があって、まだ食べてないです」

そうだね、鬼騎のせいでメェはご飯を食べてない、全く、迷惑な鬼人だね。

「ですけど、話題よ入りが突然過ぎるですね……」

あぁ、アヤネはそう言う所あるからね。
突然話を変えて、相手を困らせちゃう人、それがアヤネだ。
僕は気にしないんだけど、メェは気になったみたいだ。

「……ダメだった?」

そしたら、しょんぼりするアヤネ、それを見たメェは、目を見開いて、首を横に振りまくる。

「いっいや、ダメじゃないです! お陰でご飯が食べれるですよ」

笑ってアヤネに訴えると「そう、良かった」と言って微笑んだ。

「えと、じゃぁ……中に入るよ?」
「はい、どうぞですっ、盛大にくつろぐいで行くと良いですよ」

メェは部屋の奥へ行く、なので僕とアヤネはメェの部屋に入る。
そう言えば、メェの部屋に入ったのは、初めてだね。

……なっなんと言うか。
非常に、趣味が分かる部屋だね。

「凄い、筋肉マッチョマンのポスターばっかりはっつけてる」
「にひひぃ、全部メェのコレクションです」

アヤネの言う様に、メェの部屋の壁紙は、マッチョな男が写ったポスターが沢山張ってある。
それならまだ良いんだけど、あのベット……物凄く気持ち悪い。

「あのベットは……なぁに?」
「めぇ? あぁ、あのベットはマッチョマンの腹部を再現したベットですっ、名付けてっ、シックスパックベットです!」

そんなの、筋肉好きの人間でもやらないと思うよ? そんなので安眠出来るのか心配になってくるね。

はぁ、変わった部屋を持つ奴の考えは理解できないね。

「にっひっひぃっ、メェは筋肉が好きですぅ、この部屋はまさに、メェの好みを具現化したものです!」
「へぇ、なんか……凄いね」

あっ、アヤネが苦笑いした。
多分あれは本心で言ってないんだろうね、思いっきり気を使ってる。
メェは気にしてないのか、笑ったまま。

……そろそろ本題に入ろうかな。

「ねぇ、ご飯食べないの?」
「っ! 忘れてたですっ、早く出すですよ!」

思い出したかの様に手を叩くメェ、直ぐに丸いテーブルの方に指差す。
そこに出せって事だね、と言うか、あの丸いテーブル、何か掛かれてるね、えーと、ぷ……プロテイン? なんだろう、プロテインって、意味わからないや。

……おっと、それはさておき、さっさと出そうか。


「おぉぉっ、トマト! トマトですよぉぉっ!」

魔法で収納した料理を、ぽぽんっとテーブルに出したら、メェはきちんと座った後、手を合わせて「いただきますです!」と言った後、空腹の肉食獣の様な勢いで食べていく。

もっと味わって食べて欲しいなぁ。
と思ったけど、言わないでおく、言った所で聞き流されるだろうからね。

「……メェちゃん、食べるの早い」

ぽつりと呟いたアヤネは、まじまじとメェを見つめる。
その視線にメェは気付いてない、完全に食べるのに頭が一杯の様だ。

……さて、僕は用が済んだからおいとましようかな。

「じゃ、僕は行くから」
「めぇ? もぅ、出てくでしゅか?」
「うん、この後用があるからね」
「しょうでしゅか、残念でしゅ」

もきゅもきゅと口を動かすメェ、食べながら喋るのは行儀が悪いから止めようね。

「アヤネ、そう言う訳なんだけど……どうする?」
「私は、ここにいる、そう言う気分」
「ん、分かった」

アヤネが、そう言うなら良いかな。
側にはメェもいるし大丈夫だよね。

そう思った僕は「じゃ、ゆっくり味わって食べてね」と言い残して部屋から出る。

そのまま、隣の部屋に向けて、スタスタ歩いていく。

さて……不甲斐ないあいつをからかいに行きますか。

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