どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

193

「めっメェさん! しぃ坊が困ってらっしゃるざす!」

それは突然の事だった。
大きな声が辺りに響く、この声は鬼騎、そうか……助けてくれたんだな。
そう思って声のする方を見てみると、背を向けた姿の鬼騎がそこにあった。

「めっ迷惑かけちゃダメですぜよます!」

あいもかわらず変な口調、注意してくれたのは有り難いが、まっすぐ前を向いてビシッ! と言って欲しかったなぁ。

「はっ、はは、早くはななっなれてくだせぇですますっ!」
「ちょっ、鬼騎、落ち着け」

だが、それは無理な話なんだろう、鬼騎は好きな人を前にするとこんな風になってしまうからな。

「くふふふ、ほんと、面白い位にキョドってるね、恥ずかしくないの?」

って、ラキュ! 面白い光景だからってからかうんじゃない!

「ラキュ、今からかうのは止めてやれ、事態がややこしくなる」
「えぇやだよ、こんな面白い事、放っておけないね」

悪戯に笑うラキュは鬼騎を見て言う。
これじゃぁ再び喧嘩が起きる、そうなったら、この場は収まらない気がする。

こうなったら俺がなんとかするしかないか、と、そう思った時だ。

「むぅ、きぃ君がそう言うなら離れるですよ」

なんと、メェが渋々離れてくれた。
たっ助かった、ほっと安堵すると、メェはてこてこと鬼騎の所に歩いていく。

「きぃ君」
「はっひゃい! なんでしょう!」

ちょんっ、と鬼騎の背中をつっつくメェ、それに驚き飛び上がる鬼騎、そしたら急に身体が震えだした。
……えらく緊張してるのが見て分かる、こう言う事を見るのは初めてじゃないが、あえて言おう。
驚き過ぎ、緊張し過ぎ、キョドり過ぎ、少しは落ち着け! と思った時だ、メェがにやりと笑った。

「言う事聞いたですからハグさせろです」
「………は?」

その刹那、メェは大きく手を広げて、鬼騎の大きな背中に、がばぁっと飛び付いた。
そしたら鬼騎は飛び付かれた勢いで、身体が少しに前に傾き転けそうになる。
しかし、そこは筋肉がある鬼騎、足を前に出して踏ん張り、転けずには済んだ。

だが……。

「うっ、あっ、うっ、えっ、おぐっ!」

悶えた。
恐らく、いや確実にメェの柔らかい部分が背中にダイレクトに当たったからだろう。

「にひひひぃ、きぃ君の筋肉さいこぉですぅ」

そんでもって、頬擦りしかけてくるからだ。
そんなもん鬼騎でなくとも誰だって顔真っ赤にして震えて、あうあう言うに決まってる。

「あ、うっ……あぁ」

鬼騎が呻いてる、それに汗をかきはじめた。
それを見て、くすくす笑うラキュ、俺は「頑張れ!」と心の中で応援している。

と、ここで気付く。
まだ料理が出ていない事に……お腹すいたな。

今思う事で無い事を思い、じっと静かに鬼騎とメェのやり取りを見る俺とラキュ。
因みにこのやり取りは長く続いたのは言うまでもない。

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