どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

177

「ぜぃ……ぜぃ……」
「はぁ……はぁ……」
「あっ、あぁ……やっと、止まった……」

壮絶な戦いは長い時間行われた、そりゃもう身体と身体が幾度とぶつかり合い壮絶極まりない戦いが繰り広げられた。

そんな中、ロアにお姫様抱っこされながら騒ぎ立てる俺の声なんか耳も立てずにやり続けた。
「ぎゃぁぁっ」とか「うわぁぁぁっ」と言う悲鳴を上げたんだが全てスルーされた、少し悲しくなったぞ。

で、それが続いた結果時間が経って日が傾いた。
昼飯も食べずによくやるな……俺はお腹が空いたのとお姫様抱っこのまま振り回されたので内臓がどうにかなってしまいそうだ、くっ……はっ吐きそうだ。

「相変わらずえげつない体力しとるの、ぜぃっ……ぜぃ……」
「ロアは諦めが悪い、さっさとシルクを渡して、はぁ……はぁ……」

うっ……まずい、終ったかと思ったがまた始まりそうな雰囲気が出てる。
もう、息があがってるし髪の毛も乱れてるから止めれば良いのに。

「なぁもう止めないか? 俺達今遊んでるんだぞ?」
「ふっ……分かっておらんなシルクよ」
「そう、分かってない」

止めようと思ったら、鼻で笑われた……なんかムカつく。
何が分かってないと言うんだ?

「今わらわとアヤネはっ!」
「シルク争奪戦をしてっ!」
「遊んでいるのじゃっ」
「遊んでいるの」

おっおぉなるほど、争ってたんじゃなくて、きちんと遊んでいたと……。
そんな有り得ない事実をキメ顔で言われてしまった……でもな1つ言わせてくれ。

「俺も楽しめる様な遊びをしろ、この阿呆っ!」
「おぉっ、久々にシルクの阿呆が聞けたのじゃっ」
「暫く振り、なんか快感……」

こっこいつ等、うっとりと顔を紅くしている……人の気もしらないで何処までもマイペースな奴等だ!

「と言う訳でシルク」
「なんだよ……」

ロアが俺を見てきた、妙に笑顔なのが気になってしまう……と言うか、そろそろ降ろして欲しい。
さっきから視界の殆どがロアの胸だからな……色々と……その、不味いんだ。

「これからイチャイチャするのじゃ」
「その前に降ろせ、そしたら考えてやる」
「おっおぉっ! シルクが了承したじゃとっ」

驚いたロアは、やっと俺を降ろしてくれた、それて照れながらこう言って来た。

「でっでは、いっイチャつくのは……その、宿で……いいかの?」
「は? 俺は考えるって言ったんだぞ? やるとは言ってない」

ふっ、我ながら良い考えだと思った。
こうすればロアは言う事を聞いてくれる、初めて出し抜いてやったぞ、だまぁみろ。

「んなっ! こっ古典的な嘘をつきおってぇ……罰としてキスを……って、あっ危ないっ!」
「えっ……わぶっ!」

悔しがるロアを見て、嘲笑う俺……そしたらロアが何かに気付いた、それを指摘し俺はその方向を見た。
そしたら……白い布が見えた、見えた瞬間、俺はそれに押し当てられた……頭をがっちりホールドされた。

「ふふっ、決まった……これぞ幸せ固め」

動けない、抜け出せない……こっこれは、アヤネの仕業か? だったら俺は今……何をされている。
この顔に感じる微かに柔らかい感触は……もっもしかして……っ!!

「んっんなっ、アヤネぇぇぇっ、何を押さえ付けておるぅぅ!」
「おっぱい」

そう、おっぱ……胸だ。
ロア程では無いが、アヤネのおっぱいに俺の顔が押し当てられていると言う訳だ。

「って、何してるんだアヤネェェェっ」
「あんっ、叫んじゃダメ……感じちゃう」

かっ感じ……くっ……まっ不味い、やばい、ダメだ! アヤネめ……男に対してなんて事をするんだよ! そう言うのは好きな人にしろっ、いっいや……好きな人にもやっちゃダメだ! 色々と勘違いされるからな……。
って、そう言うのどうでも良いから離れろぉぉぉっ。

「おっおっぱ……くふふっ、そんな粗末な胸はおっぱいとは言わ……あっ、ヴァームなぜ近くにおる……え? ちょっ……あぁぁぁぁぁっ!!」

ドゴォォォォッーー
見えないがロアがヴァームに殴り飛ばされたのが分かった。

「ねぇ、シルク君……今どんな気持ち?」
「……ラキュか?」
「そう、僕だよ? 気持ちいい? ねぇ気持ちいい?」

……そうか、ラキュが側にいるのか、さっきまで側にいなかったのにな。
この状況になって現れたんだな? きっと助ける為じゃなくてからかう為だろうな……くそったれ。

「いててて……酷いめにあったのじゃ、って! まだ押し付けておるのかっ、おいアヤネっ、早く離れんかっ、シルクが窒息死……じゃなくて恥ずか死してしまうぞ!」

恥ずか死、つまり恥ずかしくて死んでしまう事だな……。
上手く言ったつもりか? と、そう思ってたらアヤネは解放してくれた、顔を見てみると妙にほっこりしていた。

「私達、1つになった」
「なってない、何1つなってない……」
「ふふ、シルクは照れ屋」

照れてないし……恥ずかしがってるんだよ。
にやにや笑いやがって……アヤネも俺をからかってるのか?

……って、今気付いた。
ロアもアヤネも笑ってるな、それに皆が近くにいる……いつの間に来たんだ?

「そろそろ飯の時間にするぞ、準備手伝えや」

鬼騎が俺達に向かって言うと皆は準備を始める。
……あの手に持ってる物は、バーベキューセットか?

「ふふふ、人間の皆様はたまに自宅の庭や広場で食事するそうですね……夏と言えばの事だそうなので私が鬼騎に頼みました」

っ! ヴァーム……いつの間に側にいたんだ? いつものメイド服を着て側に立っていたヴァームは調理の準備を始める鬼騎の元へ向かう。

「きっと楽しいんでしょうね……ふふふ」

笑顔でそう言った後、鬼騎を手伝うヴァーム、そしたら白衣を着たメェも鬼騎に近づいていった。
そしたら「うっうぉぅっ……めっめめっメェ……さんっ!」と緊張してしまう、ははっ、相変わらずだな。

そんな事を思っていると、側にアヤネとロアが来た。
そっと腕を組んできて茜色の空を見上げる。

「なに腕組んでるんだよ」
「組みたかったからじゃ」
「そう言う気分だから」

……なるほど、これも相変わらずの事だな。

「くふふふ、いつもの事じゃろ? 気にしたら負けじゃ、それにほれっ、少し遠くの光景もいつも通りじゃ」

ロアがそう言うので見てみた、そこにはラキュが鬼騎をからかう光景があった……。
いつもの様に口喧嘩が始まった、あっ……ヴァームに、止められたな。
それを見て笑うメェ、ヘッグ、リヴァイ……そう言えばこの場にノースがいない気がする、雪ダルマだから来れないのか? とそんな事よりも……。

「こんな騒がしい事がいつも通りか……」

バカバカしくて笑ってしまった俺、否定はしない……と言うか出来ない、なぜならロアの言う通りだからだ。
すると、そんな俺の顔を見てロアは微笑んだ。

「くふふ……やっと笑ってくれたの」
「え?」
「シルクよ、お主……肝試し開始時から笑ってなかったからのぅ……わらわは心配だったのじゃ」

なっ……なに、笑ってなかったのか……俺が? 全く気が付いていなかった。
と言うか、それを言うならロアもアヤネも笑ってなかったぞ。

「私も心配だった、シルクやっと笑ったね」
「アヤネ……」

そう言うアヤネも笑っていた。
俺が2人が笑顔を見せないから頑張ってたら、俺の方も笑って無かったのか……。

「笑顔にしようしてたのは俺だけじゃ無かったんだな……」

はぁ……。
なんか1人だけ突っ走った感が半端ないな、って……ロアとアヤネ、なんでクスクス笑ってるんだ?

「くふふふ、なんじゃその言葉は……もしかしてあれか? 肝試しの選択肢の事で気に病んで今の今まで気に病んでいたのかえ?」
「……っ、なっ……なにっ」
「その驚き様は図星、ふふ……シルクは優しいね、でも私はもう気にしてない、嫌な事は5秒で忘れるのが私の良い所、反省しないのがたまに傷」

にやにやした顔で俺を煽ってくる2人、なっ……なんだよそれ、俺の考えてる事が分かってたのか? どんだけ勘が良いんだよ……。

「わらわはな、シルクが必死になってアヤネを探している時点で察したのじゃ」
「……」

顔を近付けて話してくるロア、あの時、ロアはそう思ってたのか……。

「恐らく選択肢の事で悩んでおる……そう感じた、違うかえ?」
「……その通りだ」
「くふふふ、やはりな」

空いている手で髪の毛をとかし話を続ける、するとアヤネもロアと同じ様に顔を近づけてきた。
きょっ距離をとって話せ、そう言いたいが言える雰囲気じゃないよな、これ……。

「まぁ、あの件は選択肢を出したわらわ達にも非がある……じゃからシルクだけ気に病む必要はない」
「でも、私じゃなくてロアを選んだのは反省して」

なっなんだろう、この空気は……。
俺が逆に元気付けられているのが不思議で仕方ない、なんなんだこれは。

「くふふふ、そうじゃな……あの時、シルクはわらわを選んだが……もう少し自分の想いと相談して選んで欲しかったのぅ」
「そっ……それは……ごめん」

っ、そうだよな……あの時は約束がどうのより、自分の素直な気持ちで選ぶべきだった……。
だったら俺は多分、曖昧な返事を出してしまうが……それはそれでいいのか?

「くふふふふ、よしっ……反省したな? ならばこの話しは止めじゃっ、これ以上気に病む様ならコスプレパーティーを開始するのじゃ」
「それ、面白そう……気に病まなくてもしよ」
「気に病まないから止めてくれ、あとアヤネ……もう少し欲望を抑えてくれ」

……良く分からないが、2人に色々されて色々しようとした俺がバガみたいに思えてきた、そう思ったら俺は笑っていた。

「おぉ、アヤネの言う通りじゃ、早速始めるのじゃ……と言いたい所じゃが」

ロアが俺から離れて皆のいる場所を指差す。

「まだ夏と言えばの事はやっておらん……と言う訳で食事をし終わった後、暗くなったら花火をするのじゃ!」
「花火……そう言えば、ここに来てからやってなかったな」

ロアなら来て直ぐ日の夜にやるかと思った……。
でもやらなかったな、多分色々と騒がしいイベントをやって疲れたからだろう。

「でも、準備してるの?」
「心配しなくともヴァームが準備をしておる」
「ヴァームが花火の準備……大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃ、リヴァイとヘッグも協力するらしいからの……」

……あぁ、なるほど。
だいたい予想がついてしまった。
ドラゴン3人が用意する花火……それすなわち、いや……今はそれを考えるのは止めよう。

「じゃがその前に腹ごしらえしなければならぬっ、と言う訳でわらわ達も準備に向かうぞっ」
「私も手伝う」

そう言って走り出すロア、アヤネも俺から離れて走り出した。

「おっおい、待て……俺も行くっ、 あっあとアヤネは黙って見てろ!」

俺はそれを追い掛けた。
その時の俺はとても楽しいと思った……笑顔にされたのは俺だが、そのお陰でロアとアヤネの笑顔が見れた。
だからそれで良い……でも、やっぱり見透かされてたのは……恥ずかしいな。
俺ってそんなに考えてる事が読まれやすいのか? それとも……好きな人の考えは手に取る様に分かると言う奴なのかも知れない。

……っ、恥ずかしい事を考えてしまった。
えとっ、まぁあれだ、笑顔が見れて良かった! 食事の後は花火……精一杯楽しもう、きっと騒がしくなるだろうが……心の奥で楽しみにしている俺がいた。

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