どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

170

ーー時と場所は切り替わって今に至る……。

ドゴォッーー
鈍い音が響いた、あの時……喰らった所と同じ所をグーで殴られた……超……痛い。

で……殴られた僕は反動で後ろへ倒れる、そしたら地面に後頭部から頭を、ゴツンッーーとぶつけてしまう。
くっ……これもあの時と同じだ、まぁあの時は室内で痛さはマシだったんだけどね。

「アホ……バカ……へんたいっ」
「ぐっ……ごめん……」

僕はアヤネに背を向けてるけど分かる……アヤネが今、冷たい目で見下ろしている事を、でもこれで……話がそれたよね? 痛い思いをしたけど喜ぼう。

「罰として……さっきの質問に答えてもらう」

……喜べなかった、どうしても答えなきゃいけなくなった。

「……分かったよ、話すから横腹つつくの止めてくれない?」
「やだ、今はそうしたい気分」

くふふふ、出来れば止めて欲しいんだけど……どうやら無理そうだね。
声音で分かる……絶対に聞くと言う信念を感じるよ。

取り合えず僕はお腹をさすりつつ起き上がり再びアヤネの横に座る、そして微笑して話し掛ける。

「えと、質問って何だっけ?」
「……本当は覚えてる癖に」
「いやぁ、忘れちゃってさ……アヤネに殴られたからかな? くふふふふ」
「下手な時間稼ぎしてるなら……もう1発殴る」

ぐぐーー
無表情で拳を見せつけてくるアヤネ、普段はアホな癖に僕のたてた時間稼ぎして助けが来るのを待つ作戦が見破られてしまった。

「わかった、話す……話すから……拳おろそっか」

いつにもまして勘が鋭い……ここは諦めて話すしかないようだね。

「えと、優しくする理由だよね? 僕は優しくしたつもりないんだけど……」
「そんな事ない、らっ君は優しい……イジワルだけど」

……そう言う事面と向かって言われると照れるね。

「じゃ、話すよ……と言っても自分でも理由なんて分からないんだけど……ハッキリしてるのが1つあるよ」

この場は涼しい空気が漂っていたけど……一気に熱くなった。
多分、今言う言葉が恥ずかしいから身体が熱くなってるからだろうけど……とにかく熱い。

「……それ、おしえて」

ずいっーー
顔を近付けてくるアヤネ、透かさず視線を反らす僕、多分、今心臓がバクンバクンいってると思う。
曖昧にそう思うのは、それすらも分からない位に緊張してるからだよね?
……僕らしくないね。

取り合えず一旦深呼吸する、まっすぐアヤネを見てハッキリとこう言った。

「タイプだから」

一見告白の様な言葉を聞いたアヤネは固まる、それが数秒間続いた後……。

「……ふぇぁ!?」

変な声を上げて身体を後ろに反らせて驚いた。
うん、想像通りのリアクションだね……顔真っ赤にしちゃって、こんな事聞かなきゃ良かったのに。

「え? え? らっらっらららっらっ君は……私の事……好きなの?」
「いや、そうじゃないよ」

そこはキッパリと言い切る、だって"好きなタイプ"と"好きな人"は違うから。
だからハッキリ言った、そしたら今度は首を傾げた。

「……えと、なぞなぞ?」
「あぁ……なぞなぞじゃないよ」
「でも、好きなタイプなのに好きじゃないんでしょ? 私の事……嫌いなんでしょ?」
「あっ、嫌いなのは違うよ……アヤネは友達」
「……んん?」

うん、これは説明しないといけないみたいだね。
上手く分かりやすく説明できるか分からないけど……やってみよう。

「好きなタイプって言うのはさ……」
「うん」
「例えば指の綺麗な女性が好き! とか明るい女性が好き って言う女性の身体的特徴や正確の好みの事を言うじゃない?」
「……うん」

多分アヤネは一度に言ったら分からない人だと思う。
だから細かく説明しながら言おう……実際やってみたら理解したのか、コクコク頷いてる、このまま話そう。

「そう言うのはさ……本当に好きって言わないじゃない?」

僕がそう言ったらじりじり近づいてくるアヤネ、側までくると、考える仕草をとり目を見開く。

「んー……そう……かもしれない」
「でしょ? それはタイプであってその人の事が好きとは言えないからね」

どうやら分かってくれたみたいだ。
と言うかこれ……説明するのもの凄く恥ずかしい。

「で、好きな人って言うのはさ……」
「それは分かる、好きな人は好きな人だよ……ね?」
「……うっうん、そうだね」

物凄くざっくりしてるけどあってる……そう言う事にしておこう。

「らっ君の言う事理解した……そう言う事」
「分かってくれて嬉しいよ」

本当に分かったのか怪しいけどね……。
と言うか今ここでアヤネに告白するほど度胸ないよ、本人はシルク君の事が好きって散々言ってるもんね……。

「……ねぇ、シルク君」
「次はなに?」
「私の事、好きなタイプって言ったけど……どんな事が好きなの?」

……まぁ聞かれるとは思ったけどさ、聞かれたら聞かれたで恥ずかしいね。

「えぇ……それ聞いちゃう?」
「気になったから……」

あっ、そうなんだ……気になったんだね……まぁ気になったら仕方ないか。

「聞かせて、と言うか……聞きたい」
「……」

凄い言い寄って来たし凄く見てきてるね……目が言ってるよ「聞かせろ」ってね。

はぁ……。
大きくため息をつき、自分の好みを言った、何で助けに来て貰わなきゃいけない状況で自分の好きなタイプを言わされてるんだろ? ほんと……訳がわからないね。

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