どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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空気が重い、主にクーの出すネガティブ思考のせいで……。

「ね? 君は素晴らしいカボチャだよ、その事実は僕が認める! さぁ……自信を持つんだ!」

現在、僕が普段は絶対に言わない事をクーに言っている所だよ、はぁ……ねぇ、元気付けるのって難しいと思わないかい? 僕は思うよ。
なんだよ、素晴らしいカボチャって……自分で言ってて訳が分からないよ。

「でも、あたい……顔さらしちゃって……ます、こんな顔ダメです……さらしちゃっダメなんです」
「それは気にしなくて良いんじゃないかな? だってそのままのクーは可愛いじゃない」

うわっ……くっさ、有り得ない位くさい台詞を言ってしまった。
しかもウインクしながら……どこどのイケメンドラゴンじゃないんだから言う言葉は気を付けないといけないね。

……ん? クーが僕を見つめてるね、あっため息はいた。

「……あのね? ラキュ君……そこで、えっそっそんな事……ないよ? って言ってあたいが機嫌直すと思ったら……大間違いです……よ?」

そうなってくれたらどれだけ僕が救われた事か、と言うかそんな真剣に返さなくても良いじゃないか。

……にしても今回はかなり闇が深いらしいね、変な慰めの言葉よりもストレートに言った方が良いかもしれない。

「クー、取り合えず笑いなよ……ネガティブにネガティブを重ねても対してキャラはかわらないよ?」
「……ラキュ君」

虚ろな目で僕を見るクー、ぎゅっ……と拳を握り、ぽんっと僕の胸に軽く押し当ててくる。

「それは……つまりあれ……ですか? あたいはキャラが薄い日影キャラ……だから-と-を重ねても+にはならないって事……ですか? ストレートに……真実を言って来ました……ね、あははは」

うわ……悪化したどうしよ。
慰めの言葉をかけたつもりが変に解釈されちゃった……なに? そこまで心が病んじゃってるの? そんなに落ち込んでるんだね。

……うん、これはあれだね変に明るい言葉は掛けるのは逆効果、僕らしくいこうか。

「どうせあたいは日影キャラ……だから全てに……対して……上手くいきません……当然ですよね? だってあたいは地味なんですから……あぁ……地中に埋まり……きゃん!」

チョップした、ビシッ! と音が鳴るくらい強めに……。

「いたい……です」
「あんまり自分をおとしめる事言ってると……本当に埋めるよ? 」

びくっ!
身体を震わすクーは怯えながら僕を見る、いま言った言葉は割りと本気……これ以上ネガティブ発言をする様なら……くふふふふ。

「……ごめん……なさい」

頭をさするクーは暫く黙ったあと小さく頷いた。
どうやら元通りになったみたいだね、いつもなら早くに叩いてるから時間は掛からないんだけど……今回は最初に叩かなかったからね、時間が掛かっちゃったよ。
……てっ、叩いたら直ぐに治るってそれはそれで問題あるんじゃないかな?

まぁ元に戻ってもネガティブなんだけど……さっきのよりマシだからいいか。

「ラキュ君は……いつもあたいを……励ましてくれて……ありがたいです」
「励ますと言うより叩いてるんだけど……そこは良いの?」

クーはふわふわした髪の毛を揺らしながら話す。
でも言ったように励ましてるつもりはない、だからそう聞いた、クーはこくりと頷いてこたえてくれた。

「はい……良いんです、イジワルな事をしていても……ラキュ君のその行動の裏には……優しさがあります……から」

……それは考えすぎだよ? 別に僕は優しさを持って行動していない、ただ単に戸惑う相手が面白いからからかってるだけ……まぁ、ネガティブ発言してたら「自信もったら?」と言う意味を込めてからかうけど……それ以外の想いなんて他にはないよ。

「何言ってんのさ、そんなのある訳ないでしょ? それより良いの?」
「え……何が……ですか?」

僕はクーのおでこを、つんつん突っつく……突っつかれたクーは小首を傾げると考える仕草を取る。

「…………は!」

そして気付く、今自分の顔をさらしていると言う事を……。
そこからは速かった、予備動作無しで素早くアヤネの側に落ちてるカボチャを拾い上げ頭に被る。
……凄く恥ずかしかったんだね、普段は見せない速さを目にしたよ。

「そんなに恥ずかしがる事ないのに……」

そう呟いた後、僕もアヤネに近づく。
ずっとクーに構って放置してたからね、そろそろ見ないといけない。

「クー、一旦アヤネをソファーに寝かそうか」
「……あっ! そっそうですよね!」

クー……忘れてたんだね? カボチャを被っても慌ててるのが分かるよ。

「仰向けにして足の方を持って」
「あっ……はい!」

慌てた様子でうつ伏せのまま気絶してるアヤネを仰向けにした後。
がしっーー
小さな手でアヤネの足首を掴む、クーは小さいけど力はある。
別に僕1人でも大丈夫だけどクーなら絶対「何か手伝います!」と言う。
だから手伝って貰う、ここで「何もしなくても良い」と言えば……察しの通りまたあの状態に逆戻りだ。

さて、僕も持ち上げないと……と言う訳で持ち上げソファーに寝かせた。
ふぅ……後はアヤネが起きるのを待つだけだね。

「あっ……あの、アヤネさんは大丈夫……ですか?」
「ん? あぁ……大丈夫だよ、アヤネはタフだからね」

心配そうに訴えるクーはアヤネを見つめる。

「起きたら謝ろっか、アヤネなら直ぐ許してくれるよ」
「はっはい……あっ、えと……あたい、冷やす物用意してきます!」

たたたっ
小走りして冷蔵庫の方へ向かうクー、そんな様子を見ながらしゃがみこんでアヤネを見つめる。

「アヤネが来てから騒がしくなった気がするよ」

苦笑しながらほっぺを突っつく、するとくすぐったそうに顔を緩ませる。
あれ、もしかして起きてるの? と思ったけど違うみたいだ……。

「……クーを手伝おう」

このまま見てる事もないよね? よしっ、そうと決まれば……ん?

「……しる……く」
「僕はシルク君じゃないよ」

立ち上がろうとしたら手首を掴まれた……どうやら気絶してる間、夢の中でシルク君が出て来てるみたいだ。

「……どうしよ、全然離してくれない」

こてんーー
アヤネの顔が僕の方を向く、クールな顔立ちだね……中身は全然クールじゃないけど。

「しっ……る……くぅ」
「だから僕はシルク君じゃ……え!?」

呆れた顔をしてそう返した僕、その時……。
グンッーー
強い力で引き寄せられた、当然アヤネの方に……。

僕はしゃがんでいる、アヤネはソファーで寝ていて僕の方を見ている。
つまり顔の位置はだいたいおんなじ……依然僕はアヤネの方に近づいている。
もちろん止まれない、このままいけば激突する。

いや、正しく言えば……キスされてしまう。
だが悲しいかな、もうどうにも止まらない……。

ガツンッ!

「……っ!」
「っづぅぅ!!」

時間にして約2秒、唇と唇でぶつかってお互い歯と歯をぶつけた。
その結果アヤネが記を取り戻した、僕は痛さのあまりアヤネにもたれ掛かったまま悶絶した。

この数秒後、気が付いたアヤネに僕は腹パンされたのは……言うまでもない。

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