どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

16

城に戻った後、ロアは用事があると言い俺をロアの部屋に案内した後1人になった。
正直1人になったのは嬉しいがする事が無い、故に暇だ、そんな事を考えつつ椅子に深く腰掛け何もせずに過ごしていた、そうこうする内に眠ってしまい、目が覚めると……。

「ん? もう夕方か?」

いつの間にか日が暮れていた、コチッコチッーーと時計の音が鳴り響く、時間を見てみるともう午後5時だった、時間が経つのが早いな……。

「くっ…なに考えてるんだよ…」

すると昼間の事を思い出してしまう、昼間はロアと変な空気になった、いつもなら一言言ってた筈なのに何故か俺は言わなかった、更に……。

「あいつの姿と重ねてしまった…」

自分の好きな相手と姿を重ねてしまったのだ、恋した相手が魔王、なんて事ある筈も無いのにな……そんなのあるわけ無い、そんな考えを吹き飛ばす様に深いため息をつく、1度外の空気を吸いに行こう……心を落ち着けた方が良い、そう思い立ち上がってテラスへと歩く、扉を開けると夕暮れ時の城下街が目に広がった、オレンジ色に染められた街並み……とても綺麗だ、そんな景色を見つつ俺はまた深いため息をついてしまう。

「ロアはどうして俺にこだわるんだ?」

そして不意にそんな疑問が口に出てしまった、ロアは綺麗だ……寄り付く奴なんて山程いそうなのに誰も寄り付かないしヴァームに至ってはロアと俺の恋を応援している様に思える、そしてヴァームの『良く見てあげて下さいね』と言う言葉……考えれば考える程深みにはまっていく気がする、それと今俺の住んでいる街はどうなっているかな? アヤネの事も心配だ……俺がいないと知ったらどうするだろうな……。
綺麗な景色を見ても俺の心はもやもやしたまま、もう今日は寝てしまおうか? そう思った時だ。
コンコンコンッーー
扉を叩く音が聞こえる、俺が返事しようとする前に入ってくる。

「おぅ……昼間の約束覚えてるか? ちと早い気もするが面かしてくれや」

屈強な赤銅色の身体を持つ鬼騎さんが黒と黄色の虎模様の皮の服の格好で部屋に入ってきた、俺の心臓がどきんっーーと動いたのが分かる、びっくりしたぁ……まぁ突然の事だから驚くのは無理も無いか。

「あっあぁ……分かった」

突然の事に驚くも頷く、すると鬼騎は俺をじっと見てくる、なっ何だよ……一々恐ろしい奴だなぁ。

「じゃぁ行くか……って何だその服装は」

じぃーっーーと目を細めて俺の着ている服装を見る、あっあんまり見ないで欲しいな……。

「ゴスロリ……だそうだ」

俺は言葉を絞り出して答える、着たくもない服の説明をするのって何か嫌だな、この服装は白と黒を基調とした可愛らしいドレス…勿論言うまでもなくこれはヴァームにやられた、城に戻ったら強襲されて着替えさせられた…。
ヴァーム曰く拒否権は無いんだってよ……俺の苦痛の表情を見て申し訳無さそうに頬をこりこりと掻く鬼騎、そして頭を下げてきた。

「なんか、その……すまんかった」
「いや、気にしないでくれ」

鬼騎に歩みよる俺……空気が重くなってしまった、ここは話を変えるべきだな。

「鬼騎さん…これから何処へ行くんだ?」
「鬼騎で良い、案内すんのは俺の部屋だ……おっと、しぃ坊は普通に廊下を歩けなかったな」

そう言えばそうだった、あの廊下には50キロで走らないと迷い続ける阿呆見たいな魔法が掛けられてるらしいからな……全くもって迷惑な話だ。

「わしが背中に乗せてやるしかないか? それで良いか?」

そっそうするしかないよな……お姫様抱っこよりかはましだ。

「しぃ坊の場合、お姫様抱っこの方が良かったか?」
「んなっ!? 何言ってるんだよ!」

不適に笑い面白くない冗談を言う鬼騎、俺の肩をベシベシ叩いて「かっかっかっ!」と笑う、いっ痛い……ぐっ鬼騎って冗談言うんだな、まぁ全く面白くない冗談だけどな、と言うかムキムキの男にお姫様抱っこされる男の絵なんて地獄絵図だろう……。

「まぁ、話しはこんくらいにして、わしの部屋に行くぞ」
「あぁ…」

俺と鬼騎はそのまま部屋を出る、そう言えば鬼騎の部屋は此処に来てから1度も入って無いな……そこで一体何をされるんだ? 怖いから出来れば断りたかったが……断ったら何されるか分からないから怖くて断れなかった、だってあの時は物凄く眼光が鋭かったからな、断った瞬間凄く睨んで思い切りしばかれる! そんな雰囲気だった、でも鬼騎はそんな事しない! しないだろうが……どうしてもそう思ってしまうのは駄目な考えだな。

 「さて、少し待ってろ……じきに終る」

鬼騎に背負われる事数分、廊下を歩いて……いや走って直ぐの所に鬼騎の部屋があった、扉を開けるとまず目に写ったのは本だ、ここから奥には本棚が見えている、恐らく全て料理の本だろう、後はクローゼットとベットとテーブルと椅子だけ、あまり物を置かない鬼ないんだな、そう思っていると鬼騎は部屋の奥へと歩いて行く。

「取り合えず入ってくれ、あと扉閉めてくれんか?」

俺は言われた通りにする……何だろう? 急にそわそわし始めた気がするが……何かあるのか? 俺が居るのにも関わらず本の整理を始める鬼騎、ぶつぶつ何かを言いながら本を出しては入れを繰り返す、その行動に奇妙さを感じた時だ。
ガチンッーー
突如機械音が響いた、するとゴゴゴゴッーーと唸りを上げて鬼騎の前に有る本棚が回転扉の様に開く、ごくっーーと唾を飲み込みその光景を見て思う、こっこれは……もしかして、いやもしかしなくても……かっ隠し部屋と言う奴だろう。

「かっかっかっ! 驚いとるなぁ、いやぁ驚くとは思ったがここまでとはなぁ……これはわしの知り合いに頼んで作って貰った部屋だ、まぁ遠慮せず入ってくれや」

回転扉の先には部屋が見える、俺は目を輝かせその部屋に入る……。

「凄いな、まるで秘密基地だ」
「あぁ、気に入った者にしか教えん秘密のbarバーだ、しぃ坊は酒は飲める歳だろ? 一緒に飲もうや」

ニカッと笑う鬼騎、それはぎこちない笑いであったが鬼騎にとっては満面の笑みだ。

「あぁ…俺はあんまり飲めないけど、それでも良ければ付き合うよ」
「それでも良い……しぃ坊とは色々話をしたかったからなぁ」

こんな楽しい仕掛けの先にある部屋に入らないなんて勿体無いからな……この部屋は鬼騎の言った様にbarバーだ、広さはそこそこだが静かな雰囲気が良い……シックな壁紙にジュークボックス、座る席はカウンター席のみ、その奥にはコンロと鉄板、酒を入れた棚に冷蔵庫が見える、1度は入りたかった大人な店……ダンディなおじさんや綺麗なお姉さんが出入りしそうな店の雰囲気が此処にはあった。

「まぁ座れや……酒は何でも揃ってる肴も色んな物があるぞ」
「そうか」

何時の間にか鬼騎はカウンターの奥にいた、俺はカウンター席に近付いた時、回転扉が勝手に閉まる、すると店内は薄暗くなったこの暗さがまた良い雰囲気を産み出している、俺は木製の椅子に腰掛けるそして「こほんっ」と鬼騎が咳払いする。

「さて……んじゃ男同士の飲み会と行くか」

普段は怖いと思った鬼騎、この時に俺は思った、こう言う部屋を作ったり自分の料理を振る舞ったりする、笑顔は怖いけど決して怖い人ではない、俺の苦手意識は少しずつだが薄れていく。

「そうだな、俺も聞いて欲しい事もあるしな」
「かっかっ! そうだろうなぁ、だから呼んだんだ、しぃ坊とは会って日は浅い、だがそんなの関係ない、わしが話を聞いてやる気軽に話していけや」

頼りがいのある兄貴の様な人格、さど憧れる人も出てくるだろう。
俺はくすっーーと笑ってしまう、鬼騎に対する恐怖感は近々消えて無くなりそうだな……そう思いつつカウンターに手を置いた。

「じゃ、アルコール度数の低い酒を1つ、あと軽くつまめるも物も頼みたいんだが……良いか?」
「おぅ、待っとけや」

そう言うと鬼騎は素早く調理に移っていく、ふふ……何か今更だがシュールな光景だな、鬼が料理をするなんてな……。
俺は鬼騎の調理姿を見つつ思う、そして無意識に微笑えみこう思った、影で兄貴と呼ぶ事にしようかな? と……。

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