どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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頑張っている、俺は物凄く頑張っている! 劣勢になってたまるか! そんな気持ちを抱きながら必死に食らい付いていた。

「しぶといですね……そろそろ倒れて下さい」

そんな言葉を掛けヴァームはリヴァイにトスを上げる、そのボールをリヴァイがアタック!

「……はぁぁ!」

俺は両手を真っ直ぐ上げて跳んだ、空高く跳んだ、上げた手にボールが当たるように……。
バチィィンッーー
ビニールボールとは思えない程、激しい音が鳴った。
てっ手が痛い、だが……ブロックは出来た! だがこれは殆どラキュのお陰だ、ラキュが俺に魔法を掛けて身体能力を強化しているから俺は動ける。
……ラキュは本当に頑張ってくれている。

「ふぅぅっ、ふぅぅっ! 」
『にゃぁ、ふにゃぁ』

猫にたかられながら苦しみに満ちた顔をして悶絶するラキュは俺に魔法を掛けてくれる、お陰で俺はいつも以上に素早く動ける、魔法無しでは今頃砂浜に倒れ伏せていただろう……苦手な猫にまみれながらもラキュは良く頑張ってくれている。
ラキュ……過去に猫と何があってそんなに苦しんでいる? いや……今はそんな事を考えている時ではない。

「あぁぁぁっ! ぐっ! ぐぅぅぅ!」

だが、そう考えずにはいられない、だって物凄い悲鳴を上げてるのだから。
本当に良く頑張ってくれている……俺も頑張ろう、そう思い前を向く。
ボールは拾われそのボールをリヴァイがトス! 次にアタックするのはヴァームだ! またブロックしなくては……俺はまた飛び上がった。

「ふふふ、甘いですよ……」

とんっーー
それは唐突に起きた、ヴァームは強くボールを打たずに軽く打った……つまりフェイントをした。
まっまずい! 完全に虚をつかれた……俺はもう飛び上がってる、魔法のお陰で身体が軽いが流石に直ぐには着地出来ない。
まだ相手は2点だ……まだ追い付かれる点数じゃない、頭の中に過った……その時だ。

「ぁぁっ!」
『にゃにゃっ!』

ズダァァッーー
と猫を振りほどきながらラキュがスライディングして落ちそうになったボール再び浮き上がらせる。

「じるぐぐん! いまだぁぁぁっ!」

もう顔が写せない、爽やかな少年の様な顔が台無しだ。
だがラキュは必死にそう言った、そう言った瞬間また猫にたかられた。

「あぁぁぁぁっ! あっ! ぐっ……くぁぁぁぁっ!」

悲鳴をあげるラキュ、それが俺には「翔べシルク君」聞こえた……何を考えてるんだ俺は! 次じゃ駄目なんだ……今、まさに今この瞬間頑張らないでいつ頑張るんだ! 俺は浮き上がったボールを見つめる。

「っらぁ!」

気合いの掛け声と共に跳ぶ、勝ちに行くなら攻めろ! 負けたくないなら攻めろ! コスプレしたくないのなら攻めろ! 心の中で何度も何度も繰り返した……そして勢い良くアタック!

「わりぃが止めさせて貰うぜ!」

だが、そのボールはリヴァイにブロックされる……しかし、完全にブロックされていないボールはまだ生きている。

「ネット付近に持ってこい! 俺が決めてやるっ!」

リヴァイの身体なら青色のオーラが現れる、不味い……何らかの魔法を使った。
だが……それでへこたれてたまるか、負けられないんだ……勝ちにいかなきゃいけない理由があるんだ!

「っは!」
「ザボードはまっ……まがぜでぇぇ!!」

ネット付近に近付いて跳んだ! そしたらラキュが声を渇れさせ魔法を掛けてくれる、力が沸いた……イケる、リヴァイがどんな事をしてきても……俺は絶対に止めてやる!

「絶対に止める!」
「ぜってぇ打ち抜く!」

バチィィンッ!!
大きな音が響いた……ブロックは出来た、ボールはリヴァイの指先に当たり、ふわりっとリヴァイの後ろへととんで行く。
ヴァームが走る、追い付く様に素早く! ボールはゆっくりと落ちていく……ヴァームは飛び掛かった、届くか届かないか微妙な距離……落ちろっ落ちてくれ! そう思いつつ俺は次来る攻撃の為に準備をした。
来るなら来い! 今度は絶対に止める!
俺はボールを見た、するとその光景がゆっくり映る……ヴァームが手を伸ばす、ボールはもう直ぐ砂浜に着く……だがヴァームも、もう少しでボールに手が届く。

ズシャァァーー
ヴァームが盛大に砂浜に着地した、ボールは……浮き上がらなかった。

「っしゃぁ!」

ガッツポーズする、決めれた……これで9点目、次は俺のサーブ、決めれる、いや! 決めてやる!

「おい、大丈夫か?」
「えぇ……問題ありません」

リヴァイがヴァームの所へ行き手を差し出しヴァームを立ち上がらせる。
そして俺とラキュを睨んだ……まだ相手は諦めていない。

ボールが俺に手渡され俺は深呼吸する、少し前にはラキュが「ふぅぅっ」と言いながら俺に魔法を掛けてくれる。

「……しっ、やれる、俺はやれる」

何度も何度も呟いた、ここで決める……このサーブを打ってからアタックを決めて……いや違う、それじゃ駄目だ! 

「サーブで勝ちを決めてやる……」

この時点で勝ちに行かなくてどうする、サーブはチャンスだ……唯一誰にも邪魔されずに攻撃できる絶対的なチャンス!

「魔法だけじゃ駄目だ……俺自身の力も入れなきゃ駄目だ」

体力が無いからなんだ、力が無いからなんだ! 俺は男だっ、やる時はやる……だからこそ……このサーブで勝つ!

「っし!」

強く息を吐きボールを高く投げる、目線はボール、打つべき打点はボールのど真ん中! 決めるべき場所は相手コートの角! 

「舐めるなぁぁぁ!」

渾身の力と魂の叫びと共にボールを力強く打った! 魔法の力も加わりボールは弾丸の様に素早くとんで行く!

「っ!」
「……っち!」

度肝を抜くヴァーム、舌打ちをしてボールが向かう先を追い掛けるリヴァイ、ボールは、角度を変え下に落ちる、素早く的確にコートの角へ向かって……。

「……っらぁぁ!」

リヴァイが声を上げてボールに飛び付いた!
ざしゅぅぅっーー
そんな音がなって砂が飛び散った……倒れるリヴァイ、ボールの行方を探すリヴァイ……数秒後、ボールは……自分の目の前に落ちていて、角に届かなかった事を悟った。

……その時、気にもしていなかった観客から声が上がった。

「かっ勝った……」
「あのチームが勝つなんて……」

その声を聞くまで俺は呆然と立ち尽くしていた、そしてロアのこの一声で気を取り戻す。

「勝者はシルク&ラキュのチームじゃ!」

俺達の方向へ手を上げるロア……俺はラキュの方を向いた、苦手な筈の猫にまみれているのにも関わらず平然とその場に立っている。
そして、ぽつりーーと声をもらした。

「勝ったんだよね?」
「あぁ……さっきロアが言った」

身体が震えた、全身に喜びと言う感情が駆け巡った。
やった……やったんだ、俺は決める事が出来た、俺の……いや、俺達の……。

「「勝ちだぁぁ!」」

そう言い合って俺とラキュは抱き締めあった、そのせいで俺も猫にまみれたがそのなの今は関係無い……意気消沈するヴァームとリヴァイを横目に俺はこの勝利の余韻に浸った。

しょっ正直駄目かと思った! って今気付いたけど女の水着姿であんなに動いたんだよな? はっ恥ずかしい! それに熱血じみた言葉も何度も言ってしまった! こんなの俺じゃない!
だっだが……今だけは全力でスルーしよう、この場だけ素直に喜ぼうじゃないか、それに……恥ずかしがってる場合じゃない。

変な気持ちになりながらも色んな意味で泣いているラキュに俺は囁いた。

「……まだ終わりじゃない、次も勝とう」
「そう……だね」

そう、まだ終わりではない……少し遠くで微笑みながら握手をするロアとアヤネ。

「くふふふ、格好よかったぞシルク、あとラキュは良く頑張ったのぅ」
「凄い、良くやった……2人共えらい」

パチパチーー
と拍手しながら近づいてくる、表情に余裕が見える……向こうは自分が勝つ事を確信している。
だがこちらには"ラキュが魔法を使う"と言う手がある、しかし……その手は向こうも使ってくるだろう。
そして恐らくだが魔法ならロアの方が上……同じ手は通用しない。

安心しきっていた俺は気を引き締める、このチームに勝たない限り本当に勝ったとは言えない、だからここで油断する訳にはいかない! なんとしても水着コンテストの参加は阻止させて貰う! その意思があるからこそ勇気や希望、やる気が沸いてくる。
やってやるさ……ここまで来たんだ、最後に勝って笑って終わらせてやる!

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