どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

150

ビニールボールが弧を描いてリヴァイの手元へ飛んで行く。

「リヴァイきましたよ!」
「わぁってる!」

リヴァイは構えを取りボールをレシーブする! ふわりと上がったボールをヴァームがアタック! このボールをラキュが対処し俺がトスを上げた。

「いけ、ラキュ!」
「ナイスだよシルク君!」

幾ら体力が無いからと言ってもこれくらいなら出来る、まぁ……他人から見れば下手なトスだろう。
だがラキュなら何とかしてくれる、試合が始まってからずっとそうだ……。

「はぁ!」

ズバンッ! 勢い良く飛び上がったラキュは鋭いアタックを決め得点を決めた。
これで4点目、あと6点で俺とラキュの勝ちだ。

「まさかそんな手を使うとは思いませんでしたよ」
「くふふふ、魔法を使っちゃ駄目なんてルールには無かったからね」

じとっ、と睨むヴァームの視線をスルーしラキュは仇笑う。

「なりふり構わないと言う事ですか……」

そう呟いたヴァームはボールをリヴァイに渡す、そして続けてこう言った。

「リヴァイ、向こうも使ったのです……こちらも使いますよ」
「了解だ」

そう、ラキュが考えた秘策とは……魔法を使う事だ。

この試合僕1人魔法を使って動くよ

そう聞いた時は驚いた、と言うか忘れていた……ラキュ達は魔法を使える。

「……てめぇ等、覚悟しろよ?」

だがラキュが使えば当然ヴァームとリヴァイも使ってくる、勝負はここからなのだ。

「……っし!」

鋭いサーブを放ってきた! 心なしか物凄く回転が掛かっている気がする。
……いや、気がするではない、本当に回転が掛かっている!

「はっ!」

だがそのボールをいとも簡単にレシーブ、それに対して表情を歪める。

「ラキュ!」

構わずラキュにトス! 俺はこれしか出来ないからトスに全力を掛ける!

「くふふ……次はこの魔法にしよう」

ラキュは、ふわっと上がったボールを見て笑う……さぁ決めてくれよ?
バシィィンッーー
ラキュがボールを叩き付けた時、ボールが無数に増える! 戸惑うリヴァイとヴァーム、なす統べなく砂浜にボールを落としてしまう、そしたらボールが1つになる。

「……魔法に関してはラキュ様が上ですね」

悔しそうにラキュを睨む……そう、ラキュは魔王 (仮)の弟、そう簡単に負けない筈だ……いける、脳内でそんな言葉が出て来た。
だが俺はその言葉を振り払う……油断するな俺! 相手はヴァームだ……確実に何かを仕掛けてくる、気を引き締めよう……。


そんな気持ちを抱いたまま試合は進み得点は8対2となった。
全てラキュが魔法を使って点をとった、ボールが炎に包まれたり、蛇の様にぐねぐね曲がったり、色んな魔法を使った……一瞬「もうビーチバレーじゃないな」と思ったが……気にしない事にした。
ここまでずっと優勢、そんか細かい事は気にしない……だが、大きな疑問が浮かぶ。

「可笑しい……何で仕掛けてこないんだ?」

何も仕掛けてこない事に焦る……正直言って君が悪い。

「うふふふ、リヴァイ……一気にいきますよ」

とか言ってたらヴァームが妖しく笑った、その瞬間俺は身構えた。

「来るよ!」
「あぁっ!」

ラキュに言われるまでもなくヴァームは何かを仕掛ける……それが何かは分からないが俺も微力ながら対処してやる! これを止めれば俺達の勝ちだ。

しかし……仕掛けるのが遅すぎる、何でだ? いっいや気にしまい、と思っていたら……リヴァイが俺を不安にさせる言葉を呟いた。

「やっと準備出来たのかよ……遅ぇんだよ」
「すみません、結構時間が掛かるんですよ……召喚魔法は」

どくっーー
身体が震えた……きた、遂に来た。
これはラキュが予想していた事……"あの生物"の出現、それこそ唯一、この秘策が破られる事……俺はラキュの方を見てると。

「やっ奴が来る……だからさっきから何も仕掛けてこなかったんだ……くっ! 止まれ僕の身体!」

顔を真っ青にして大きく震えていた……だから俺はこう言ってやる。

「ラキュ! 少しだけで良いから動いてくれ……後は俺が対処する!」

言った後は前を向いた、小さな声で「シルク君……」と聞こえる。
これはお前が俺に任せた事……ここまで動いてくれたんだ、少しは役に立たないといけない。

「うふふふ、やる気に満ちていますね……ではラキュ様、私からのプレゼントです」

憎たらしい程優しい声音で喋るヴァームは微笑んだ後指を鳴らす、そしたら……。

「ねっ猫ぉぉぉ!?」

ぼんっ! と音を立ててラキュの足元に猫が現れた、直ぐ様ラキュに飛び掛かる猫達は「にゃぁにゃぁ」と嬉しそうに鳴く。
ラキュは「うぎゃぁぁぁっ!」と鳴く駄目になってしまったラキュ。
これを見たヴァームとリヴァイは勝ちを確信しているだろう。
当然だ、ラキュが駄目になった以上戦力にならない、体力の無い俺に成す術は無い。

だがな……教えてやるよ、逆境に打ち勝つって事をな!

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