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わらわは酷く不機嫌じゃ……それは何故だじゃと？ よかろう、ならば少しだけ話してやるのじゃ！


風呂場にいるわらわはあの後、桃源郷を垣間見ようと仕切りをよじ登って男湯を覗いた。
と、その際に気付いた……今の格好、完全に尻を丸出しにしてかなり恥ずかしいのではないか？ と……いっいや！ この際恥は捨てるのじゃ！ シルクの裸さえ見れればそれで良いのじゃ！
くふふふ……さぁ、上りきったぞ、女の子みたいな身体を見ようではないか！ そう思うわらわはその景色を見る。
そこにはシルクの霰も無い姿がわらわの目に写っ……るかと思ったのじゃがそこにいたのは。

「誰も居なくてもっ！ 俺はっ！ イケメンポーズをっ！やるっ！ 何故ならっ！ イケメンだからっさっ！」

素っ裸で妙なポーズを取っておるヘッグじゃった。
当然わらわは絶句した……そりゃそうじゃ、素っ裸の男の魔物が艶々した表情で嬉々として奇行をしているのじゃから。
とっと言うか……シルクは？ 先程声が聞こえたのじゃが……まっまさか！ 聞き間違えかえ？ いっいや……確かに聞こえた！ わらわがシルクの声を危機間違う筈が無い！

「ん？ おぉ！ 魔王様じゃないか！」

あっ、見つかったのじゃ……と言うか平気、前を隠さんか！ 見ていて恥ずかしくなるので視線を反らす。

「もしかして俺の美に満ち溢れた身体を見に来たのかい？ はっはっはっ！ 照れるじゃないか！」
「照れるな！ そんな事思っとらんわ！」

せめて隠してくれ！ と言いたかったが……言ったら変な事を言って隠さないじゃろう、そう思ってわはわは言うのを止めた。
ここは手っ取り早く聞きたい事を聞いてしまうのが良いじゃろう。

「ヘッグよ、シルクはどうしたのじゃ？」
「男の娘さんならっ！ もう出ていったよ？ ドラキュラさんと一緒にね」

髪の毛を、わぁさっーーと靡かせ語る。
出ていったじゃと？ え？ だってさっき声が聞こえていたのに……まっまさか！ すれ違いか？ すれ違いなのか？ そっそうだとしたらわらわは……不幸すぎるではないか！

「おや？ もしかして男の娘さんを覗こうとしてたんだね？ だがそれは果たせなかった……でも魔王さんは幸運さっ！ なぜなら！ クールなイケメンの華麗なる裸を……」
「帰る」

ヘッグの言葉を最後まで聞かずにわらわは降りた、そしたら声のトーンを落として「放置プレイとは……中々に辛辣しんらつじゃないか」と聞こえた、ふんっ！ 知った事か！
今はシルクの裸が覗けなかった事で頭がいっぱいなのじゃ！ と言うかシルクを覗けぬ風呂なぞ風呂ではない、ただの暖かい水溜まりじゃ！ 悲しみに涙しながらわらわは風呂場から出ていく……覗きの定番のオチを経験してしまったの。


で、そんなわらわは部屋に布団を敷きふて腐れていた。

「くっ……もっと早く行動しておれば……」

ぶつぶつーーと敷き布団を被り呟く。
あぁ……見たかった、シルクの身体が見たかったのじゃ！ 覗かれて「ちょっ！ おまっ！」と慌てるシルクが見たかったのじゃ！

「と言うかこの原因を作ったのはメェじゃ！」

とても悔しいのと未練があるのとで八つ当たりしてしまう、文句なら聞かん！

「あの豊満な胸があったからわらわはそれに構ってしまった……それさえなければわらわは……」

桃源郷を見れたと言うにぃ……うがぁぁぁっ！ こうなるのなら素直にシルクを女湯に連れ込めば良かったのじゃ！ わらわの馬鹿！

ごろんごろんっーーとのたうち回る、すると身体を軽く叩かれた、そしたら声が聞こえて来た。

「どうしたロア？」
「魔王、大丈夫？」

シルクの声じゃった、あとアヤネの声も聞こえた。
むっ……心配をかけてしまったのぅ、申し訳ないっと思って顔を出す。

そしたら心配そうに見つめるシルクがそこにいた、中腰でわらわを見つめるシルク、それな彼は今、入浴後に着る着物を着ておった、色は青、わらわはこれの赤を着ているのじゃ、どうやら男は青、女は赤みたいじゃな。

と、それはさておき……シルク本人は気付いていないじゃろうが……シルクが着ておる着物、今胸元がはだけておる……そのせいで胸チラしているのじゃ、男の娘の胸チラ……こっこれはこれで眼福じゃのぅ、それを見てわらわはホッコリしてしまう。

「風呂を出てからずっと布団にうずぐってるが……どうした？ って……なんだよその顔……妙ににやにやしてるな」
「くふっくふふっ……いっいやっ！ なんでもないのじゃ」

裸は見れんかったが良い物を見れた、なので由とするのじゃ。
と、自己解決した事でわらわはシルクの腕を掴んで自分の方に引き込む！ そしたらシルクは「うぉっ」と声をあげる。

「シルクっ！一緒に寝るのじゃ！」

ガッチリと身体に抱き付き離れないようにする、そしたらシルクは顔を真っ赤にして「あっ阿呆か！」と言って気た、くふふふ……いつもの反応じゃが、これはいつ見ても飽きない反応じゃのぅ。
そんな微笑ましい光景を邪魔する様にアヤネもわらわの布団に入ってくる。

「シルクと寝るのは私、あっち行って」
「何を抜かすか！ そっちこそあっちへ行け！」

まったく、アヤネは邪魔しかしないのぅ……これではシルクとイチャイチャ出来んではないか！ 只でさえ最近2人きりでイチャイチャしておらんと言うのに。

ぎゅぅっーー
とシルクに胸を押し当て断固として離れない事を主張する、そしたら向こうはシルクの背中に貧相な胸を当て同じ様に主張してきおった、わらわとアヤネは睨み合う。
今日は必ず譲ってもらうのじゃ……なんせ旅行での初夜じゃからのぅ、思い出作りの為にも2人で寝たいのじゃ。
アヤネはその辺で寝ていれば良いのじゃ！

「……まえら」

ん？ なんじゃ？ 声が聞こえたのぅ……って、どう考えても今のはシルクの声じゃな。

「どうかしたかえ？」
「どうしたのシルク？」

お互いに同じ様な台詞を言ってしまった。
……ん？ なんかシルクの顔が何時も以上に赤くなっておらんか？ まるで林檎じゃ！ しかも小刻みに震えている様に見える。
まじまじと見ていたらシルクは大きく息を吸い込んで……。

「お前等！ さっきから胸が当たってるんだよ！」

と、叫んだ……夜に大声とは……いけない奴め、これはお仕置きが必要じゃな。

「くふふふ……安心しろシルク、こう言う事をするのはソナタだけじゃ」

そうシルクの耳元で囁いた後、わらわはシルクの耳を甘噛みした……その刹那「ひゃうっ！」と可愛らしい声を発した。

「ずっずるい！ 私もする！」

そう言ってアヤネもわらわの真似をした、くっ……どこまでも邪魔な奴め！ 負けてたまるか！ そう思ってわらわは夜明けるまでシルクの耳を甘噛みし続けた、それにしてもシルクの反応は小動物みたいで一々可愛いのぅ。