どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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黒の半袖、ピッタリとした短パンと言った服装のアヤネといつもの服のラキュ……2人が仲良くクローゼットから出てきた、つまり先程までの話を聞かれてたと言う事だ。

「変態魔王、あまりシルクをたぶらかさないで」
「なっなんじゃとっ! いきなり出て来て何をぬかすか!」

今のロアの言葉は正しい、いきなり出て来て何を言う! と突っ込む前にだ……この状況を詳しく聞き出さなければいけないだろう。

「これはどういう事なんだラキュ?」
「あー……えっとね、詳しく話すと……」

気まずい顔をしつつラキュが説明を始めた、それは朝ラキュがアヤネに城下町の案内をしに外へ出掛けた時まで遡る。

「外へ出て色々な建物を案内したんだよ」

傘をさしてねと付け加えて続けて話すラキュ、あっ……因みにラキュは俺の横に座っていてロアとアヤネは睨み合いの喧嘩が勃発している。

「中央通りの案内が終わった時にね……アヤネが言ったんだよ」

ほぉ……何か変な事を言ったんだな? 

「なんて言ったんだ?」
「シルク君の貞操の危機かも知れないから城に戻ろう……って言ったんだ」

あながち間違っていない……かな? いや間違ってる? まぁどうでも良い。

「で、何でそこからクローゼットに?」

まだその辺の話を聞いてない……何かラキュが珍しくそわそわしてるが構わず聞いてみた。

「……っ」
「ラキュ?」

妙に口ごもるラキュ、こんなラキュを見るのは初めてだ、何かあったんだな。

「それについては私が説明する」
「ぐぬぅ……降りろアホ女ぁぁ!」

ロア床に押さえ付けアヤネがこっちを見てくる、説明する前にロアを解放してやれ。

「えとね……あの時私はもががっ!」

ん……アヤネが話そうとしたらラキュが素早い動きでアヤネの背後に回って口を押さえたな、えっ偉く暴れてないか?

「アヤネ、その事は良いんじゃないかな?」
「もがご?」

すっごい汗掻いてる、確実に取り乱してるな……珍しい、するとロアがゆらりと立ち上がりラキュを羽交い締めする! 当然暴れるラキュ、それを制して床にうつ伏せになり上に乗って押さえ付け言った。

「わらわの弟がこんなにも面白い反応をするとは面白い! アヤネ言ってしまうのじゃ!」
「ちょっ、姉上っ!」
「魔王に言われると不服だけど……言うよ」

何か凄い事になったなぁ、助けてやりたい、でもごめんな……俺には力がないんだ、だから助けられない、俺はそっとラキュから目を背けアヤネの言葉に耳を傾ける事にした、正直に言えば何があったか聞きたいのだ、だから助けなかった……とは口が裂けても言えない。

「私、ラキュにね……」
「わぁーっ、あっアヤネ! その先は言っちゃいだだだだだぁっ!」

ロアがラキュの顎を持って上に持ち上げた、痛そうだな……そこまでしなくても良いんじゃないか?

「魔王城に戻る様に言った……そしたらラキュが頷いて棺桶を取り出したの、突然出て来たからビックリした」

あぁ棺桶ワープの事だな、そりゃ初見はビックリするだろうな、俺も驚いたから……。

「むぎぎっ……ぐっ……っ……」

あぁ……ラキュが物凄い抵抗をしてる、顎を引っ張られてるのに凄い奴だ。

「それでねビックリした私はラキュを突き飛ばしちゃったの……」
「あぁ……成る程、話が読めたのじゃ」

俺にはさっぱり読めてないんだが……つまりどういう事だ? 

「頭に? がいっぱいのシルクにご教授してやるのじゃ! アヤネはラキュを突き飛ばした……そしたら運悪く棺桶に当たりそのまま棺桶と共に倒れまたまた運悪く棺桶の扉が開いた……違うかアヤネ?」
「ん……正解」

えと、つまり……だめださっぱり分からん!

「それでアホであるアヤネはラキュが心配になって棺桶に飛び込んだ!」
「それも正解……」

聞けば聞くほど訳が分からなくなってくるな。

「それでクローゼットの中へ転移してしまったと……これはあれじゃな、転移場所を設定してる時に邪魔されて座標が可笑しくなったパターンじゃろうな」

あっ今のは辛うじて分かる、もうそう言う解釈をしておいた方が良いかも知れない、そんな事を考えていたらロアは意地悪な表情でアヤネにある事を聞いた。

「で? そなたは何時からいたのじゃ?」
「魔王が変な事を提案してた時から……」

それほぼ初めからじゃないか? やばい……顔が紅くなってきた……まてよ? という事はラキュとアヤネは密室で2人きりでいた事になるのか?

「ほぉほぉほぉ……ふーん、なるほどぉ……へー」

必要以上に納得した様子を見せるロアはラキュを悪戯な笑みで見つめる、これ……普段の仕返しをしようとしてるんじゃないか? やめとけよ……多分返り討ちにされるぞ?

「どうやらわらわの知らぬ間にイチャイチャしてたようじゃのぉ弟よ……どうじゃ? アヤネと一緒にいて? 何か起きたかえ?」

うわっ……子供みたいにからかってる。

「まさか何も無かったのかえ? そんな事は無いじゃろう? わらわに散々言って自分は何もしなかったのならわらわは笑い転げてしまうわ!」

既に笑ってると思うんだが……と言うかこれ、ロアは調子にのりまくってる、ラキュも明らかに怒ってるよな? 額に青筋が浮き出てるぞ?

「ほれほれ何とか申してみよ……アヤネとキスしたか? 胸を揉んだか? 顔を舐めたか? 耳を甘噛したか? はっ……もしや本番までいっのかえ?」

ピシッーー
多分気のせいだろうが、何かがキレる音がした。

「いい……加減に……しろ!」
「なっ……ぐわっ!」

物凄い力でロアを吹っ飛ばし立ち上がる、尻餅をついたロアをチラリと睨んで直ぐ視線を反らす。

「僕がっ……僕がこんな恥辱を受けるなんて……くっ屈辱だよ……姉上、この仕打ちは近い内に必ず変えさせて貰うよ」

そう言ったラキュは顔を真っ赤にしたままこの部屋から消えて行った……ラキュもあんな顔するんだな……そんな事を思った俺は失礼ながらも「可愛い所あるなぁ」と思ってしまった……ごめんなラキュ。
この後、ロアが突然謎の失踪をした直後……耳をつんざく様な悲鳴が聞こえた、ラキュにやられた声だろう……ロアよ、これを気に深く反省しあまり調子に乗らない様にするんだな。

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