どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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わらわは走る、どんどん走る……アヤネが急に変な事をしだしたが構わず走る、景色は変わらず左に城壁、右に木々と言う感じじゃ。

「ふふっこれでスピードがアップした……必ず抜いてやる」

なんかアヤネが笑いながら言ってくるが……ぶっちゃけ言うとあれからスピードは全くもって変わらんスピードと言っても良い……何故アヤネはこんなにも勝ち気なのじゃ? アホなのか? あぁ……アホじゃったな。

「好き勝手言っておる様じゃが……勝つのはわらわじゃ」

まぁその事には触れずに結論だけ言ってやる、そしたらアヤネは頬を膨らまして来る。

「私は秘策を使った……だから私が勝つ」
「おっおぅ……そうか」

自信満々じゃな……ならばもう何も言うまい、結果を見せてアヤネを納得させるしか無い様じゃな、と言うかそろそろ画面の前の奴等にアヤネの今の格好を教えなければなるまい……それを簡単に言うとするかの。
ずばりアヤネの格好は……胸にサラシ、下半身は……安心しとくれちゃんと普通にズボンをはいておる。
まぁあれじゃろう……少しでも纏うものを脱いで走る速さを上げようと言う安直な考えじゃろうな……そんな事あるわけなかろう! 布1枚脱いだだけで走る速さが上がるわけないだろうが! って言ってやろうとしたが止めた……絶対に理解してくれないからじゃ、はぁ……何でわらわはこんな奴と勝負しているじゃろう?はぁ……何か虚しくなってきた。

「どしたの?疲れた顔してるね……」
「いや、そんな顔しとらん」

勝負相手に心配か……変わった奴じゃな。

「そう、なら本気出して走るね」
「そっそうか……ってうぉい!?」

呆れながら答えたらアヤネがスピードを上げおった! くっ……このまま離されてなるものかぁぁ! わらわもスピードを上げる、必死にアヤネのスピードに着いていく。
ゴールまでの距離は……うーんと、外周の半分を大分越えて……恐らくあとちょっとじゃろうな。

「ふふ……追い付いて来たね?なら、最後の封印を解き放ーー」
「それはまじで止めるのじゃ!」

アヤネと再び横に並び、サラシを外そうとするアヤネの手首を掴む!

「何するの?」

不満げに睨んでくるがそんなの関係無い、同じ女としてこれ以上は阻止せねばならんのだ!

「今脱いだら……シルクに嫌われるぞ!」

だから適当な理由を言う、アヤネなら当然の様に……。

「え……それはやだ、じゃぁ止める」

ほれ、止めてくれたのじゃ……安心して手首を離してやる、そしたら脱いだ!なんて事はなく黙って走り出すアヤネ……いっ以外と素直なんじゃな。
よし、そろそろスパート掛けるかのぅシルクを待たせてはいかんからのぅ、ではスパートを掛けるのじゃ! わらわは脚に力を入れる……それに気付いたアヤネもスパートを掛けてくる、そろそろこの勝負にも決着がつく……勿論結果はわらわの勝利、アヤネに勝ちは譲らんのじゃ!


「きぃ君きぃ君、何で無視するですか?無視はいけないですよ!」

無垢な瞳で訴えるメェ、ぴったりと鬼騎の胸元にくっついている。

「ほらほら鬼騎ぃ、言われてるよ?無視は駄目だよ?何か言ってやりなよ」

まるで悪魔の様に笑い鬼騎をからかうラキュ、本当に容赦ないな……。

「ぐっ……ぐぐぐぐっ」

鬼騎、相当恥ずかしいんだな……仁王立ちだ、仁王立ちで必死に耐えている「ぐっぐぐぐぐっぐっ」って苦しそうに呻いてるけどがんばって耐えている、カオスだカオスが起きている……。

「いやぁ……ラキュ君も相変わらず悪戯好きだね」
「あぁそうだな……」

変わらず呆れ顔のヘッグ、俺も同じ顔をしている……うん、そろそろ止めた方が良いだろう。

「おいラキュ、そろそろーー」

止めろ……そう言おうとした時だ。

「ぬりゃぁぁぁぁぁっ!」
「はぁぁぁぉぁぁぁっ!」

気合いの叫びが聞こえた、この声はロアとアヤネだ! 良かった、これでこのカオスに終止符が着く!
俺は声のする方を見る、そこにはロアとアヤネがこっちに向かって走ってくる。
スパートを掛けているのか凄いスピードだ……って、んん? 何か様子が可笑しい気がするな……目を凝らして良く見てみよう。

「…………!?」

そしたら驚いた! ラキュもメェも鬼騎もヘッグもそれを見て驚いた! だっだって……ロリ化したロアと胸に包帯を巻いた姿のアヤネが並んで走ってるからだ!

「こっちもこっちでカオスじゃないか!」

あぁ、思わず突っ込んでしまった……なんでロアはロリ化してるんだよ!する意味なんて無かっただろう! で、アヤネっお前も何で服を脱いでるんだ! お前は女である事を自覚しろ!

「はっはっはっ……いやぁ、流石の俺もこの状況には笑うしかないね」
 
ヘッグはそう言って高らかに笑う、いや笑ってる場合じゃないだろう……そんなやり取りをしてる内にロアとアヤネは近くまでやってくる、ゴールまであと50メートル程……2人共必死な顔をしてる。
でもな……そんな格好じゃ何もかもがぶち壊しだ!

「アヤネが前に出たね」
「え?」

何かそんな事を考えてたら勝負に変化が訪れた……ラキュの言う通りアヤネが本の少し前に出たぞ? このままだとロアは負けてしまう……。

「ふふっ……勝った」
「……っ」

それでも必死に食らい付くロア、だが距離は縮まらない……俺がそんな事を思ってる内に2人はゴール間近だ……本当にちょっとの差なのに、これじゃ逆転は無理だ……どうやらこの勝負アヤネの勝ちみたいだな。

「まだ、まだ終わりでは無いのじゃ!」
「っ!」

そうロアが叫んだ、いや叫んだ時だ……急に身体が元に戻った!

「なっ!」

あまりに驚いて声が出た! 歩幅が大きくなったロアは大きく脚を踏み込んで前に出る!

「おりゃぁぁ!」

雄叫びを上げてゴールの線に脚を踏み込んだ! アヤネも同時に踏み込む、よって勝敗は……。

「よっしゃぁぁぁ!」

ロアの勝ち? 何か微妙な感じだぞ? と、さらっと簡単に思っているが……何か今の様子に呆気に取られて上手く表現が出来ないのだ。

えっえと……ロアの勝ちで良いんだよな?

「異議有り、私が先にゴールした!」
「くふふふ……そんな言い訳は無駄じゃ、わらわが先にゴールしたんじゃからな」

俺にはほぼ同時に見えたけどな……。

「失礼ながら魔王様……俺にはほぼ同時にゴールした様に見えたよ?」
「んなっ!そんな訳なかろう!」

どうやらヘッグも同時にゴールした様に見えたらしい……。

「ラキュはどうだ?」
「んー……僕も同時に見えたよ」
「わしもだ」
「きー君と同じくです!」

そっそうなると困った事になったぞ? 皆ほぼ同時にゴールした様に見えたなら勝敗の着けようがないじゃないか!

「アヤネ、それは間違いじゃ!わらわは身体を元に戻した故歩幅的に考えてわらわの勝ちじゃ!」

ほっ歩幅的? ロアの言葉に疑問を感じてしまった、あれか?歩幅が大きくなったから先にゴールの線を越えたと言いたいのか?

「違う、私は服を脱いで足が早くなった、だから私の勝ち」

意味が分からない……何故服を脱いで足が早くなると思った? 何故それで勝ちと思った? それともう1つ、服を脱いだ理由はそれか、物凄く阿呆な理由だな……。

「わらわの勝ちじゃ!」
「私の勝ち!」

変な理屈と阿呆な理屈を言い合いお互いに譲らない……困った、非常に困った。
そんな時だ……上から勢い良く誰かが降りて来る、そして静かに着地して身に着けていたスカートを2回払う、そいつの正体はヴァームだ、そう言えば空から監視するって言っていたな……。

「お困りの様ですね?」
「あっヴァーム、そなたならどっちが勝ったか見えていたじゃろ?」
「答えてむーちゃん!」

直ぐ様ヴァームに寄り添う2人、それを見たヴァームは微笑んで「こほんっ」と咳払いする。

「はい、しっかり見えていましたよ」
「ほっほぉ……して、どっちじゃ?わらわじゃろう?」
「違う、私だよね?」

ぐいぐいヴァームに近付く、そんなに近付かれたらヴァームが困るだろう……と思ったのだがそうでも無いらしい……ヴァームの表情は変わらず微笑んでいる。

「ではお答しましょう……」

2人の肩をそれぞれもって落ち着かせる。

「良い女3本勝負、マラソン対決……勝ったのは!」

ごくりーー
生唾を飲む、この判定で勝敗がつく……これで厄介な事から解放される、さぁ勝者は誰だ!

「勝ったのは……ロア様です、憎たらしい事に胸の差で勝ちやがりました」
「やったぁぁ! って憎たらしい? そっそれはどう言う事じゃあいたたたたっ! かっ肩が……肩が潰れるのじゃぁぁ!」

えーと……ヴァームによるとロアの勝ちみたいだ、嬉しそうに笑うロア、だが何故か肩を潰しにかかるヴァームによって苦痛の表情に早変わる、何か個人的な怒りに感じるのは……俺だけか?

「うふふ……本当に憎たらしい、いえ嬉しい限りですよロア様」
「いたいっいたいのじゃ!行動と表情が矛盾しておる!」

確実に個人的な怒りだな、と言うか胸の差で勝つって現実に起きる事なんだな……本で良く見る話の様な決着だな、唖然とした顔で思った時、ふとアヤネを見てみる、そしたら下を向いていた……落ち込んでいるのは一目瞭然だ、勝負に負けたのだ、仕方ないだろう。

「……負けた」

一言だけ呟いた後、アヤネはがくっと地面に座り込む、だが直ぐにアヤネは立ち上がる、そして……。

「おい魔王!」

大きく叫んだ……そんな事をしたら皆驚いた、周りの視線がアヤネに向けられる。

「言いたい事があるから……向こうで話しよ」
「えっなっ……なんじゃ?」

そう言ってアヤネはロアを連れて俺達から離れて行く……勝負に負けて落ち込んだと思ったら直ぐに自分に勝った相手と話? なっ何か知らないが物凄く心配だ。

「あっアヤネ」
「シルクは来ないで」

だから着いていこうとしたら断られてしまった……なっなんだろう……俺、アヤネのやる事が分からない、皆も俺と同じ事を思っているだろう……皆が遠く離れた2人をじぃと見ている、そしたら急に叫び声が聞こえた……その叫び声の主はロアだ「にゃにゃにおぉぉっ!」って叫びだった、そうとう驚いたのか尻餅を着いてる……なっ何を話されたんだ? きっと変な事なんだろうな……そう思ってため息を吐く、新たな何かが始まるとも知らずに……。

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