どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

110

さて俺達は何故か魔王城の入り口手前に何時の間にか用意された椅子に座る。

「ではルートの説明を致します」
「うむ」
「はーい」

ヴァームから説明を受けるロアとアヤネ、その間俺達は勝負が始まるのを待っている、最後の勝負がマラソンって……ふざけてんのか? って言いたい位に阿呆みたいな勝負内容だ、第一良い女対決なら料理、掃除ときたら他にもあるだろう……例えば洗濯とか。
言ったアヤネもそうだが、それを承諾したロアもどうかしてる……まぁそんな事を言っても仕方無いか、あいつ等が良いならそれで良いだろう。

「スタートする場所はここです、ここから真っ直ぐ走って城下街から出ます」
「ふむふむ」
「うん」

スタートはここね……それから城下を出る、どうやら大規模なマラソンみたいだな。

「そこから時計回りの城壁を一周してまた門をくぐってここに戻ってきてゴールです」

城壁一周ってここ相当な距離があるが……大丈夫なのか? 俺なら途中で息切れ起こしてダウンする自信があるぞ。

「はい」
「何ですかアヤネさん?」

と、変な事を思ってたらアヤネが真っ直ぐと手を挙げた、何か質問があるのか?

「時計回りって右左どっち?」
「……右です」

ヴァームは瞬時に呆れた顔をして答える、アヤネ……それくらい分かっててくれよ、真剣な顔してたから何を聞くのかと思っただろう。

「くふふふ、馬鹿じゃのぅ、それ位の事が分からんとは……」

けらけら笑うロアにむっとした顔を向ける、するとラキュが俺を突っついて来る。

「何だ?また変な事を言うんじゃないだろうな?」
「違うよっ何でそんな事を聞くのさ」

……それは昨日の自分を思い出せば分かると思うが……まぁ何も言わないさ。

「……別に何でもない、で?なんだよ」
「何か気になる言い回しだね、まぁ良いけどさ……いやね? アヤネってさ、残念に加えてアホの娘要素があって僕好みだなぁって思ったんだけどシルク君はどう思う?」
「……うん、ごめん分からん」

やはりか……やはり変な事を言ったか、本当に昨日から様子が可笑しいな……ラキュ、頭でも打ったのか?

「分からないだなんて勿体無い!僕は素敵だと思うよ!」
「そうか、良かったな」

お前まで変な奴になってしまったら俺は泣いてしまうぞ? ここはスルーしよう、きっとラキュは調子が悪いんだ。 
 
「右……」

と言うやり取りをしてたらアヤネが自分の両手を見る、どこか疑問に満ち溢れた表情かおをしている、まっまさか……いや、まさかな? さっ流石にあれは言わないよな?

「右ってどっち?」

言った……言っちゃったよ、皆がざわざわしてるだろう、しかも俺の隣の奴が「くふっくふふふ……」って顔を手で押さえて笑ってしまってるだろう、何か笑い方が妙に嬉しそうだな……何が嬉しいだか訳が分からないな。

「お箸持つ方です」
「じゃ、こっち?」

そう言ってアヤネは左手を挙げた、そっか……お前は左利きなんだな? そうだよな? 決して間違えた訳じゃ無いよな?

「そちらは左手です」
「そう、じゃぁこっちか……」

左手を下ろして右手をじぃーっと見つめるアヤネ、もう何か色々と阿呆過ぎて笑えてくるな。

「アヤネさん……もう良いですか?」
「うん、良いよ」

ぐっと拳を握り親指を立てる。 

「でしたらもう始めましょうか」

若干困った顔をし微笑むヴァーム…あんなヴァームの顔を見るのは初めてかも知れない。

「では、ここに立ってください」

だがそんな表情かおも一瞬にして何時もの表情かおに戻し2人を先導する、そして走る構えを取る2人、どちらもクラウチングスタートの姿勢……マラソンなのにその体制、可笑しくないか?

「では、用意っ!」

そんな思いは通じず、2人は腰を上げる……いよいよ始まるな、何か始まるまで色々あったが……無事始まって良かった。

「スタートっ!」

ヴァームは大きな声でその言葉を言った……その瞬間、物凄い速さでスタートダッシュをする! それをしたのは……アヤネだ。

「なっなにぃ!」

驚きの声を上げるロア、「へぇ……」と呟くラキュ、皆が皆アヤネのスタートダッシュには驚いていた、ロアも速かったがアヤネには届かない……既にアヤネは城下街の真ん中位を走っている、必死で追い付こうとロアはスピードを上げる、スタートから手の汗握る展開になっているな……ごくりっと唾を飲み込んでその様子を見る。

「では、不正をしないか空から見てきますね」

するとヴァームがそんな事を言い出し、背中の翼をはためかせ空高く飛び上がる……。

「シルク君」
「今度は何だ?」

そしたらまたラキュが話し掛けて来た、次変な事を言ったら殴ってやろう。

「アヤネって体力はあるの?」

あっ……普通の質問だった、変に身構えてしまった。

「あぁあるぞ、小さい時から力が強かったな」

幼少期に小さな熊をハイキック一発でしずめたのは今でも語り次がれてる……本人は忘れてるだろうけどな。

「そう、良かった」
「良かった?」
「あっ、気にしないで……個人的な事だから」

ラキュは手を振りそう言ってくる、んー……何が良かったのかは知らないが……まぁ、本人が気にするなと言うなら気にしない様にしよう。

「……」

そして俺は黙って考える、この勝負一体どうなるのかと…どっどんな決着が着いても一波乱起きそうだ、うっうぐぐぐっ胃が痛くなって来た、どっどんな結果になるか今は分からないし、どっちが先にゴールするか分からないが……まぁその喧嘩だけは止めて欲しいな、そしてこの勝負、何か一言言ってくれと言われたら俺が言えるのはこれだけだ……どっちも頑張れ! だって……2人共何するか分からない奴だししていますそう思った俺は大きなため息を吐いてこの勝負の無事を深く願うのであった。

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