FORSE

巫夏希

ブリーフィング後。

「さらっと言ったけど15年間出来なかったことを俺らにやらせるってどういうことなんだよ」

サリドとグラムはキャンプの廊下を話ながら歩いていた。

「でもグラム。考えてみりゃ成功したら英雄だぜ? プログライトは力こそないもののその『結界』のせいでいわば最強と呼ばれてる。結界さえぶち壊せばこっちのもんだよ」

「サリド、お前はどんだけ楽観主義者なんだよ……」

グラムは項垂れながら、サリドはグラムがなぜ項垂れているのかわからないまま、廊下を歩く。

「おっ、姫様」

サリドの声に気づいた姫様はさりげなく笑顔を振り撒く。

「……たしか、サリドに…………誰だっけ?」

「グラムです! グラム・リオール!」

グラムは今まで項垂れていたのが嘘みたいに大声で言った。

「そう。グラムだったね。覚えたよ。じゃあわたし訓練があるから」

そう言って姫様は去っていった。

「……で、どうすりゃいいんだよ?」

談話室のような部屋で巨大な消しゴムのようなレーションを口に入れ、グラムはサリドに尋ねた。

「ブリーフィングどおりで行くとなるとなんとかフロートの中に入って結界を生み出す源を壊す、だね」

「……生身でヒュロルフタームぶっ壊すよりマシか?」

「さあ、どうだろうね」

「そういやサリド。これって資本四国と社会連盟による戦争なんだろ? どうしてレイザリー以外来ていないんだ?」

「敵も味方もそれぞれ別の戦争で忙しいんだろ。グラディアの一件みたいに」

「……実質一騎討ち?」

「うんにゃ、違うよ。実際は『チェス』みたいなもんさ」

「チェス?」

「うん」サリドは手に持っていたコーヒーを一口飲み、「つまり、王――ここでいえばプログライト皇帝を捕まえればいい。資本四国が先か、社会連盟が先か、ってね」


「どういうことだよ。資本四国と社会連盟がぶち当たるんじゃねぇのか?」

グラムの質問に、サリドはため息をつく。

「だったらプログライト帝国の本拠地となる『ビッグ・フロート』を攻め込まなくていいよね?」

「あ、ああ……。そうだな……」

グラムはようやく理解したようだ。

と、同時に甲高くサイレンの音が鳴り響く。

「まさかまたこの音をきくはめになるなんてね」

「サリド、その通りだ」

二人はそう会話を交わし、談話室をあとにした。


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