FORSE

巫夏希

そのころ、乾いた大地には二体のヒュロルフタームが蠢いていた。

ひとつは、陸も海も川も山もある程度の力を発するスタンダード型。俗に言う『第1世代』。

かたやこちらは地上戦に特化した『第2世代』。

この二体が組むことによってなかば戦局は決まったようなものだ。


なぜか?


相手は一体しかいないから。しかもヒュロルフタームじゃない。劣化版“と見られている”ものだ。

「……手を引っ張らないようにお願いしますわね。オホホ」

とか、お嬢様のように笑っているのは『蟻蜂の騎士』アリア・カーネギー。

「あなたこそ第2世代という力に振り回されないようにね?」

眉間に皺を寄せながら、言うのが『姫』。

ヒュロルフタームさえ抜きにしてしまえばただの可愛い喧嘩で済んでしまうがヒュロルフタームがあるために、それは、世界を滅ぼすことにもなりかねないのだから。


ところで、姫様が乗っているヒュロルフターム・クーチェ、と蟻蜂の騎士が乗っているヒュロルフターム・ユローにはたくさんの差違がある。

まずは足下。クーチェは海上でも楽に行けるようにフロートが簡単に装着できるように普段地上から2mほど浮かせている。これは『地球は巨大な磁石である』という学説に基づいて考えられたものであって足の底に強力な電磁石を組み込むことによって浮かべる。

それに対してユローにはそんなものはない。なぜなら、地上戦に特化したヒュロルフターム。クーチェも浮上の理由が海上時のフロート装着時なので、ユローはフロートを装着する必要がないからだ。

次は武器。クーチェはスタンダード型と言われているくらい平均になんでも装備が可能だが、そこまで“グレード”の高い武器を装備することができない。

グレード、とは武器の威力を示していて、これが高ければ高いほど、強い武器である。

一方ユローは装備できる武器の種類が限られる代わりにグレードの高い武器を装備することができる。

この二つにこんな違いがあるのは、ただ造られた国の技術の問題ではない。

ただ、“進化”しただけ。既にレイザリーでも第2世代はできている。

ならば、なぜ?


ノータは、一つのヒュロルフタームにしか乗ることが出来ず、二つ以上のヒュロルフタームに乗ることは難しい。

ヒュロルフタームを発表したヨシノ博士の論文の一節である。

ヒュロルフタームとノータはノータが操るため、ヒュロルフタームが放つ微弱電波とシンクロする必要がある。

そのためにノータはヒュロルフタームに精神の波を合わせる必要があるのだ。そんな簡単にできることではない。とてつもない時間にとてつもない苦労、とてつもない精神的疲労がかかる。

要するにヒュロルフタームはノータさえいなければただの赤ん坊。考えることも出来なければ、本能のままに行動する。


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