FORSE

巫夏希

撃ち放ったのはコイルガン。

コイルガンとは電磁石のコイルを用いて弾丸となる物体を加速、発射する装置のことだ。このヒュロルフタームに使っているコイルガンの原理はとても簡単で、弾丸を走らせる細長い管を包み込むように一定間隔にして複数個のコイルが設置されており、そのコイルに電流を流すことで発生する磁力を利用して弾丸を素早く引き、段階的に速度を上げ、射出する。といったものだ。


まるで音速の戦闘機が走ったあとに発生する、ソニックブームのような衝撃と音があたりに響いた。

それはビッグ・フロート内にいた二人にも例外なくやってきた。

「……なんだ。今の轟音」

「グラム。ここから外が見えるみたいだ」

サリドとグラムはあのニンジャに連れられ、ひたすら長い螺旋階段を上っていた。なんでもここが一番警備が薄いんだとか。

窓を開けるとそこに見えたのは、ヒュロルフタームが二体と、グラディアで見たような擬きが一体。

数から行けば勝てる筈なのに。

なぜかそこにはところどころボロボロの二体があった。擬きだけが綺麗な姿を保っている。

「おい、グラム」

不意にサリドが呟いた。

「どうした。もしかしてこの風景に圧巻されてるとか?」

「馬鹿野郎。そんなわけないだろ。擬きの足跡を見てみろよ」

「は?」

グラムがサリドに言われて、足跡を見ると、

そこには、“なにもなかった”。

「足跡が……ない……だと?」

「そう」サリドは笑って頷き、「おかしいことだと思わないか。あの二体ですら空気の急激な射出とかで足跡は出来てるにも関わらず、擬きにはできてない」

「まさか……」グラムは一つの結論に辿り着いた。

どうやらそれはサリドも同じようで、

「あぁ。そうかもしれない」

一息。

「あれは幻影で、本体はどっかにあるよ」


「ちょっと待てよ。そしたらあの二人はそれを知らないで……」

「だろうね。あのまま無駄にエネルギーを射出し続けて空っぽになった隙を……窺っているのかも」

「おいサリド。このままじゃまずいぞ。どうするんだ?」

「どうするもこうするもないよ」

サリドは通信機に手をかけて、言った。

「僕らがどうにかするしかないだろ?」

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