FORSE

巫夏希

16

そして、混乱も収まり、休暇も終わりを告げた。

「あー。なんだか、長いようで短い休みだったなー」と欠伸をしながらグラム。

「だって一週間のうち2日は戦闘。3日は清掃。残りの2日もリーフガットさんの始末書を書くのを手伝ってたからねぇ。休みなんてないようなもんだったよ」となんかの雑誌を見ながらサリド。


「というか、サリド。おまえ、何読んでるんだ?」

「あぁ。ヒュロルフタームのミリタリー雑誌。オリハルコンとか人工プラチナとかの新素材を特集してるみたいだから一冊買ってみた」

「へぇ。それいくらなんだよ…… 3万ムル?! なんでこんな100ページもない雑誌がこんな高いんだーっ!!」

グラムの怨念にも似た叫びを聞いて、サリド。

「ああ。なんだかね、これが付いているみたいだから」

そう言ってグラムに手渡したのは……サイコロほどの大きさの小さな立方体。

「……なんだこりゃ?」

「なんでも『クロムプラチナ』って言うらしいよ。硬度で最高を誇るプラチナと柔軟性に長けた炭素を組み合わせたとか。ヒュロルフタームの関節とかに使われてるんだと」

「……こんなもん販売しないと思うがな」

グラムは胡散臭そうにそれを眺めていた。




サリドたち二人がいた部屋に、リーフガットがノックもせずに入ってきたのは、それからしばらくしてだった。

ティータイムを優雅に迎えていた二人にとってはこれ以上の邪魔はないだろう。

しかし彼女は二人にとっては上官。命令は絶対服従なのだ。

「リーフガットさん……? どうしましたか?」

サリドがまず声をかける。

「どうしたもこうしたもない。また戦争が始まるからあんたらを回収しにきたのよ」

「へぇ。つぎはどこなんですか? 個人的にはリフディラだけはちょっと……」

「どうして?」

「ほら。ちょっとリフディラって気候はいいから過ごしやすいんですけど、レジスタンスが活発に活動してるじゃないですか。これまで以上に泥沼な戦いはあまり……」

「そうかー。リフディラがいやなのかー」

リーフガットはわざとらしい口調で言った。

「残念だ。ホントに残念だ。リフディラは南半球だから夏だぞ? 楽しいバカンスになるかもなぁ」

――その後その二人が快諾したのは言うまでもない。





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