FORSE

巫夏希

リーフガットは医者を呼んでいた。医者といっても部隊に備え付けの軍医だが。

「ふむ……」

医者は聴診器をあて、怪訝な表情を示した。

「どうですか?」

リーフガットが心配そうな目で見詰めていた。

「芳しくありませんね。薬を投与しても治らないならば風邪ではないのかも……」

「風邪でなければ……」

「透明病」

医者はしばらくして、呟くように言った。

「……透明病、ですか?」

「聞いたことがないようですな。たしかにレイザリーでは縁も所縁もない病名でありましょうからな」

「その……透明病、とはなんですか?」

リーフガットが医者に丁寧に尋ねる。

「簡単だ。早い話が消えてなくなってしまうのだよ」

医者は何の躊躇もなく話した。

「消えて……なくなる」

「あぁ。そうだ。この症状の進み方から行けば……1ヶ月くらいでそうなってしまうんじゃないのかね」

「助ける方法はないのか。あなたは医者なのだろう?」

「と言われてもねぇ。僕は神でもないから。確かに僕は何千人もの人を救ってきた。だから『生と死の番人』とも喚ばれるが、さすがに今回ばかりは……いや、」

話が不意に途切れた事に思わずリーフガットは目を合わせる。

「そういえば、まだいましたね。透明病の毒を吸い取り、ある程度の条件つきだが、治してくれるところが」

「どこですか?!」

そして、医者は呟く。

「……シスター部隊」

と。


「シスター部隊……」

「えぇ。そこならば姫様を助けられる筈です」

医者はすっかり髪のなくなった頭を撫でながら言った。

「……まて。ならばシスター部隊はどこにいる?」

「今は全国を回っている筈ですからリフディラの何処かにいるかと」

「阿呆。リフディラと言っても単純計算でレイザリーの半分はあるんだからね……。そこを虱潰しに探すといっても1ヶ月で済むかどうか」

「大丈夫です。大体場所は把握しています」

医者はまるで直射日光の太陽のように爽やかに笑う。

そして、医者は静かな口調で言った。

「ここから北へ60km離れた首都ウェイロック……。そこにシスター部隊は駐留しています」

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