FORSE

巫夏希

14

その頃。

リーフガットは漸く片付け等から解放され、久々の睡眠を取っていた。

もはや戦いはないだろうという判断の上でのことだが、警備のため数名の人間は起こしてはいるものの。

夜も更け、生きとし生ける物全てが寝静まった頃のことだった。

虚空に乾いた銃声が響いた。

リーフガットはそれに気づき急いで立ち上がり、外に出た。

廊下を駆け足で歩くと、慌てた顔で部下と思しき軍人が出てきた。

「上官! お目覚めですか!」

「御託はいい!! いったいどうしたんだ?!」

「西南の方角から発砲! ライフルと思われます! 数はおよそ10~20!」

その軍人は端的に敵の情報を告げる。

「ここにいる全員を叩き起こせ! ライフル班と光学兵器班を攻撃に回せ!」

リーフガットの命令に、軍人は即座に敬礼をした。

リーフガットはその軍人に命令をしてから自分の部屋には戻らずその廊下の突き当たりにある部屋へと向かった。

扉を開けるとすでに命令がされていたかのように、机にここ周辺の地図が置かれていたり必要となるレーダー等が駆動していた。

「ご苦労。ライズウェルト・ホークキャノン凖尉」

リーフガットは部屋に入るや否や直ぐに傍の計器を見つめている女性に謝罪の意を表する。

「別に問題ないですよ。リーフガットさん」

「……私を本名で呼ぶのは家族以外にあの問題児どもとあんただけだ」

リーフガットはため息をついて忌々しげに呟く。

しかし、当の本人、ライズウェルトは曇りない笑顔で、

「あんた何してんの? 指揮官なんだから指揮しなさいよ」

「あ、あぁ……」

こういうのが昔から嫌いだったが、今の関係を維持出来ているのはリーフガットの堅実かつ峻厳な性格とライズウェルトの温厚な性格に衝突がなかったことも言えるのだろう。彼女が果たして温厚と呼べるのか、そうには思えないが一番そう形容すべきとリーフガットが判断を降したためであったりするのだが。

「……状況は?」

「芳しくないね。西南に17の生体反応。その何れもがグラディア軍の通信機のチャンネルに設定してある」

「……軍の、リフディラ軍の、クーデター?」

「そうは考えられない。第一、もしクーデターならばもっとたくさんの人員と武器がきてるはず。なのに彼らは少数で行動してるし武器はライフル一択みたいだし。たぶんレジスタンスによるものが正しいかな」

「やっとお出ましってわけね」

リーフガットは、怪しげに笑った。

「さぁ……。レジスタンスとやらの実力、見せてもらおうじゃないの」

リーフガットは笑みを崩さずに管制レーダーを見て呟いた。

それを見たライズウェルトはほくそ笑んで、レーダーに視線を注ぎ、

「久しぶりに見たわね。あなたのそんな熱い顔」

リーフガットにぽつりと、聞こえるか聞こえないか微妙なくらい小さな声で呟いた。

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