FORSE

巫夏希

2-4

そのころ、フランシスカは海を泳いでいた。因みにではあるが、競技の服装はノータの服装――すなわちヒュロルフタームパイロットスーツ――を着なくてはならない。それは義務である。

だから今ではノータの服装にいろいろとスポンサーの名前が描かれていたりしている。

しかしひとつ疑問が生じてしまう。

それは『資本主義国以外は誰が出場しているのか?』ということだ。

答えは簡単で、ただ実力者のみが出ていることになる。

社会主義国、特に神殿協会や大神道会などはヒュロルフタームの戦争運用に反対している。

何故ならば、彼らの信義とは人と人が戦うのはいいが、その代行者として人が決して適わない存在と戦わせるのは残虐かつ非人道的な行為である、と述べているのだ。

しかしそれを資本主義国がまともに聞くことはなく、今現在も戦争にヒュロルフタームが用いられているのだった。




現在フランシスカは中継地点である群島の脇を泳いでいた。

ノータ――ヒュロルフタームという人造人間兵器のパイロット――とはいえ、元は人間だ。体の仕組み上、限界が存在する。

「……バカめ。あんなところで休んだら体力が持たないだろうに」

フランシスカは呟いて後ろに見える群島を一瞥して言った。

何故ならあの群島、実際には小さな岩に一つの人工的に形成された島がぽつんとあるだけだが、はもともとの中継地点で、ちょうど彼処で半分となる折り返し地点だった。

だから一度そこで休んで、休むといっても水からは出ないで呼吸を落ち着かせたりするだけだが、また半分の距離を泳ぐのだった。

「……全くだよ。どうしてあの人たちは彼処で休むのかな? 僕にはまったくわからないよ」

「……ロゼ。いつの間に?」

「いやぁ? 僕はずっと君の後ろに気味が悪いくらいぴったりとくっついてたんだけど?」

ロゼは泳ぎながらも言う。よく考えると、この二人は水で泳ぎながら話をしているということになる。常識的に考えるとさっぱりよくわからない。これがノータなのだろう。

「……ほんとノータってやべぇな。あいつら口動かしてるってことは、喋ってるってことだろ?」

その向こう、クルーザー用コースを進むクルーザーの上に乗っていたグラムは双眼鏡でフランシスカの方を眺めていた。

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