FORSE

巫夏希

3-11

サリドは射撃場の外――なるべく他の人間に聞こえないように、敵が何処にいるかはわからないからだ――に行き、端末を起動した。

『なんだ。サリド? まさか私の休暇をぶち壊しにきたとか言うまいな?』

「申し訳ないですけど、その通りです。緊急事態が発生したもので」

『緊急事態?』リーフガットはうんざりそうな口調で、そう言った。

「神殿協会が“聖戦”と称して開戦宣言をしたのは聞いてますよね?」

『まぁ、一応な。そういうのは軍の特別連絡網で知らされるからね。で、それが?』

「奴らの目的が判明しました。確証は取れてないですけど、多分これで合ってるかと」

『……話せ』

リーフガットは今までの口調を改め――軍人としての、リーフガットになり、言った。

「彼等の目的は『オリンピアドーム』の破壊と殲滅です」

サリドは唐突に話を開始した。

『……、』

リーフガットは何も返さなかった。暫く、無言の時が流れた。

『……なるほど。ならば、益々開戦宣言を承諾、相互の宣言を行い“戦争としての処理”を行ってはならないな』

リーフガットが暫くして、サリドの報告に答えた。

「いえ、ただこのままでは開戦宣言を相互承諾しない限りでは選手への妨害も続くことでしょう。今回の襲撃で、それは明らかになったことです」

『それはお前の言う通りだ。だが、どうすべきだ? 開戦宣言相互承諾を行わなくても駄目、相互承諾を行えばあちらの思う壺……』

リーフガットはサリドに尋ねた。

「……開戦宣言を明日、行ってくれませんか。ただし、戦場はオリンピアドーム内に限り、資本主義国と社会主義国との戦いに一団体として神殿協会も参戦を行う……ということで」

『ん? しかしそれでは、社会主義国と戦う必要がないと思うが? 戦うのは神殿協会だけで充分だろう?』

「いえ、それはどうでしょうか? たしかに本当の敵は神殿協会のみです。……ですが、僕にはそうは思えないんです」

『……共謀がいる、と?』

「はい。たぶん」

『……なるほど。確かにその可能性も考えられる……。解った。明日の正午開戦、資本主義国と社会主義国及び神殿協会の戦争、でいいんだな?』

「はい。それだけ解ってくれれば結構です」

そう言ってサリドは通信を切った。


「ふぅ……。一先ずこんなところでいいか……」

サリドは通信を終えるとひとり、溜め息をついた。

「ワァァァァァ」

その直後に背中の方にある射撃場から歓声が沸き起こった。

「おっと、急いで見に行かなきゃな」

そう言ってサリドは振り返り、射撃場の方へと走っていった。



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