FORSE
4-14
代わりに答えたのは、サリドだった。
「やっぱ姉さんは変わってないな……。人を平気で切り捨てる所とか、特に」
「……何が言いたい?」
「姉さんとの戦いにさっさと決着を着けたい」
「奇遇だな。私も実はそう思っていた。だが、実際弟相手に躊躇いも少しあった。……だがお前の今の言葉で目が覚めた。こちらも……本気で行かせてもらう」
「そうでなくっちゃ」
サリドは何故かこのピンチの中でそれに似合わない、まるで戦いを、これから始まる戦いを楽しんでいる(実際は始まっていないので楽しみにしている、の方が文法的に正しいのかもしれない)ように、笑った。
そして、
無言のゴングが鳴り響いた。
†
レイシャリオはまず手を合わせ、目を瞑った。サリドはそれが好機だと思ってレイシャリオに突っ込んだ。
「いや、まずい!! サリド、退くんだ!!」
その、言葉を発したのはリーフガットだった。しかしサリドの耳にそれは届いていなかった。
「……、」
レイシャリオは無言で念じ、そして放った。
レイシャリオの手から放たれたのは、冷気。まるでこの世の全てを凍りつかせようと言わんばかりのそれは、容赦なくサリドに打ち付けられた。
しかしながら、サリドが凍ることは、なかった。
なぜか?
「……何故だ?! 何故……凍らない?!」
レイシャリオは呻き声にも似た声で呟いた。
「姉さんなら解っていると思ったんだけど、」
サリドは溜め息混じりに呟いた。それは希望を募らせていて、その希望が思わぬ形で風船のように萎んでしまったような、そんな気持ちをも含んでいた。
「体は一繋がりではあるけれど、実際分けてしまえばただの細胞の集合体に過ぎない。人間の細胞は液体と固体の間あたりの密度だから、直ぐに凍りついてしまう。……しかしその細胞密度を、自由に操れる、そんなことが出来るとしたら?」
「……武術を相伝したのは伊達ではないということだな……」
レイシャリオは呟いた後、ふてぶてしく舌打ちをした。
「……こうなれば!」
レイシャリオは一瞬考えて、そして放った。
耳をつんざく、悲鳴にも似た絶叫を。
「~~~~~!!!!」
レイシャリオが放ったのは絶叫――声によって生み出された波力ではなく、超音波――何かとその放った絶叫が反響し、不協和音を示したようにも感じられた。
しかし、それでも人間の耳に、相当のダメージが降ることになる。
即ち、その超音波を受けた人間は聴力を、一時的ではあるものの、失うことに、なる。
「……っ……!!」
キィィィン、と金属と金属を擦りあわせた、言うならばとても不愉快な音が耳の中を支配していた。
しかし、人間には視力があるのだ。
「……この程度で何が出来るってんだい? 姉さん」
「侮ってもらっちゃ困るね。まだまだ私のターンは終了してない!」
そう言ってレイシャリオは炎を先程自らが凍らせた氷の数々に撃ち始めた。
「一体何を……!!」
「見れば解るでしょう? 氷を“融かしている”のよ?」
「まさか……!!」
サリドはレイシャリオがしようとしていた事に気づき、走り出した。
しかし、遅かった。
既に辺りは白い霧に包まれていた。五里霧中とはこのことだ、とサリドは思ってまた舌打ちをした。
「やっぱ姉さんは変わってないな……。人を平気で切り捨てる所とか、特に」
「……何が言いたい?」
「姉さんとの戦いにさっさと決着を着けたい」
「奇遇だな。私も実はそう思っていた。だが、実際弟相手に躊躇いも少しあった。……だがお前の今の言葉で目が覚めた。こちらも……本気で行かせてもらう」
「そうでなくっちゃ」
サリドは何故かこのピンチの中でそれに似合わない、まるで戦いを、これから始まる戦いを楽しんでいる(実際は始まっていないので楽しみにしている、の方が文法的に正しいのかもしれない)ように、笑った。
そして、
無言のゴングが鳴り響いた。
†
レイシャリオはまず手を合わせ、目を瞑った。サリドはそれが好機だと思ってレイシャリオに突っ込んだ。
「いや、まずい!! サリド、退くんだ!!」
その、言葉を発したのはリーフガットだった。しかしサリドの耳にそれは届いていなかった。
「……、」
レイシャリオは無言で念じ、そして放った。
レイシャリオの手から放たれたのは、冷気。まるでこの世の全てを凍りつかせようと言わんばかりのそれは、容赦なくサリドに打ち付けられた。
しかしながら、サリドが凍ることは、なかった。
なぜか?
「……何故だ?! 何故……凍らない?!」
レイシャリオは呻き声にも似た声で呟いた。
「姉さんなら解っていると思ったんだけど、」
サリドは溜め息混じりに呟いた。それは希望を募らせていて、その希望が思わぬ形で風船のように萎んでしまったような、そんな気持ちをも含んでいた。
「体は一繋がりではあるけれど、実際分けてしまえばただの細胞の集合体に過ぎない。人間の細胞は液体と固体の間あたりの密度だから、直ぐに凍りついてしまう。……しかしその細胞密度を、自由に操れる、そんなことが出来るとしたら?」
「……武術を相伝したのは伊達ではないということだな……」
レイシャリオは呟いた後、ふてぶてしく舌打ちをした。
「……こうなれば!」
レイシャリオは一瞬考えて、そして放った。
耳をつんざく、悲鳴にも似た絶叫を。
「~~~~~!!!!」
レイシャリオが放ったのは絶叫――声によって生み出された波力ではなく、超音波――何かとその放った絶叫が反響し、不協和音を示したようにも感じられた。
しかし、それでも人間の耳に、相当のダメージが降ることになる。
即ち、その超音波を受けた人間は聴力を、一時的ではあるものの、失うことに、なる。
「……っ……!!」
キィィィン、と金属と金属を擦りあわせた、言うならばとても不愉快な音が耳の中を支配していた。
しかし、人間には視力があるのだ。
「……この程度で何が出来るってんだい? 姉さん」
「侮ってもらっちゃ困るね。まだまだ私のターンは終了してない!」
そう言ってレイシャリオは炎を先程自らが凍らせた氷の数々に撃ち始めた。
「一体何を……!!」
「見れば解るでしょう? 氷を“融かしている”のよ?」
「まさか……!!」
サリドはレイシャリオがしようとしていた事に気づき、走り出した。
しかし、遅かった。
既に辺りは白い霧に包まれていた。五里霧中とはこのことだ、とサリドは思ってまた舌打ちをした。
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