FORSE

巫夏希

エピローグ

こうして世界トライアスロン中に発生した神殿協会のクーデターは神殿協会自身が撤退したことで幕を閉じた。

この後神殿協会は資本主義国から悪の存在と見られ敵視されることになるが、それは少し後の話になる。

この後の競技は全て中止となり、優勝なども選ばれることはなかった。会場側はフランシスカの優勝を望んでいたが、レイザリー王国は「戦争を、このクーデターの為に開始したことの謝罪のため、優勝を辞退する」との文書を発表した。

斯くして世界トライアスロン史上最も忙しい14日間は、幕を閉じたのだった。





「疲れたな……。結局」

サリドはレイザリー王国へと帰る飛行機の中、グラムと話をしていた。

「あぁ。結局、どうしてこうなってしまったのかね? トレーナーをやってるだけで普通に何もかもが終わると思ってたんだがな」

「神殿協会のクーデター……だっけ? 表向きに報じられてるのは」

「あぁ。さすがにほんとの内容は言えねぇだろ? といっても見ていた人間が沢山いた。そいつらには箝口令敷いて、金払って今回の話は無しにしたそうだ。まったく、そんなのでうまくいくのかねぇ」

サリドとグラムがそんな話をしていると、携帯端末がメールの受信を知らせる電子音を発した。

「……お前のか?」

「いや、違うよ。君のじゃないの?」

「俺はあんな無機質な電子音を使っちゃいねーよ」

「ってことは……」

サリドとグラムは半ば同時に視線を同じ方向へと向けた。そこにあったのは、ベッドだった。

ベッドでは一人の少女がすやすやと寝息を立てて、眠っていた。そしてその脇に置かれていた携帯端末はランプが光っていて、何かが来たことを知らせていた。

「やっぱ、そうだったか……」

グラムはそんなことを言いながら少女――フランシスカの携帯端末を手にとった。

「ちょっと待てよ。そんなことをしたら彼女が……」

「大丈夫、大丈夫。問題ないって。……えーと、誰からだ?」

グラムが端末を起動してメールを見ると、グラムはそのまま固まってしまい静かに気付かれないように端末を閉まった。

「どうしたんだ? いったい」

「何でもない。特にないから大丈夫だ」

「片言になってるけど? 何があったのかはっきりと言ってみろよ」

「いや……言わない方が本人のためだ……。忘れろ」

「今の今までメールを無断で見ていたグラムが言う権利はないと思うんだけどね?」

サリドは何処と無く笑って、言った。





そして、レイザリー王国。

ある手紙が、

世界を揺るがすことになるとは、

このときまだ誰も思ってはいなかった……。

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