FORSE

巫夏希

その頃、サリドとグラムは街を歩いていた。なんていったって、暫く世界トライアスロンで休みなんてなかったし、この前のも休みはないようなものだったので、純粋な休みは今回が初めてになる。

「いや~、休みってのはいいもんだ。だって働かなくて済むんだからな!」

「それで働いてたら休みの定義に反すると思うんですけど?」

グラムとサリドはそんなことを軽く言い争いながら、街を歩いていた。

「……でも、今日一日だけとは、ちょっとめんどくさいな。まとまって休みが欲しいくらいだが」

「そんなの人の勝手だろう。俺らはどちらかといえば労働者の位置にあたる人間だぜ? 労働者が勝手気ままに休みを決めていたら資本主義の大部分が崩壊しちまう」

「……あー、サリドくん。小難しい話は今度にしてゲームセンターに入らないかね」

「はいはい。グラムがゲームセンターに行きたがってるのはよ~く解りました。……行きゃいいんだろ?」

「さすが解ってるな」

「何度も死地を一緒に経験すると相手の色んな場所が解るもんだよ……」

サリドは何処と無くつかれたようにゆっくりと息を吐いた。





このゲームセンターは王都でも一二を誇るゲームの種類を所有していて、言わずもがな遊ぶ事が出来る。そのため、わざわざ境を越えてまでやって来る人間もいるくらいなのだ。

「……なんだかんだですごい造りだなー。遠くから何時間かけてでも来たい気持ちが何となく解るな」

サリドは開口一番にそう呟いた。


「……その口調からして、サリド、お前ゲームセンターに入った事がないな?」

グラムが質問する。何となく目の奥に鈍い光が見えたのは気のせいだろうか。

「……う、うん。エンパリヤークにはなかったし、こっちに来ても叔父さんが駄目だって言うし……。で、軍に行ってもなんだかんだで学校に戻れないし。……叔父さんは世界のために頑張れ、なんて張り切ってるけどね。……あぁ、話が逸れたね。つまり僕はゲームセンターの経験ゼロなんだ」

「ぐむむ。途中で謎の話が入ったが、まさかサリドがゲームセンター初心者とは……」

グラムは急にウズウズし出した。もう一度言うと、何故かは解らない。

「よしっ! こうなったら俺が! ゲームセンター初心者のお前に! ゲームセンターの面白さを教えたる!!」

グラムは妙に張り切っていたが、ここで水を差したら悪いとサリドは思って何も言わなかった。

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