FORSE

巫夏希

30

9990年8月17日。

まずディガゼノンに構えていた基地の屋根が爆発を起こした。その一瞬の騒動で、兵士達には緊張が走った。

「なんだ! 今のは!」

「解りません! 火元不明の爆発です! やぐらのほうからも外部から攻撃を受けたように見えない、と申しております!」

そう言って兵士は上司に敬礼をした。

「“見えない攻撃”だと……?! そんなの、有り得る訳がない!! 科学に解明出来ない何かがあるっていうのか?!」

「で、ですが……、それは仕方のないことでして……。櫓の方の情報を元に述べた迄です」

「解る……。だが、それが現実とは思えん。科学に解明出来ない力だなんて……」

「……やれやれ、科学崇拝か。虚しいものだな」

突然、兵士の声色が変化した。

覇気のある若々しい声から嗄れた老人の声へと。

「……な……!!」

そして、兵士はその上司を剣で一閃した。血飛沫ちしぶきが切り離された下半身から噴水の如く吹き出していた。

「……誤った科学崇拝には鉄槌を加えなきゃね。あんたらが言う異能の力でな」

刹那、基地全体が衝撃に包まれた。





その衝撃は当然リーフガットやラインツェルにも伝わっていた。

「……なんだ?!」

「これは……何か怪しい揺れだな。一体どうしたというんだ……」

ラインツェルが言い切る前のことだった。

目の前の世界が崩壊を始めた。

目の前の世界が、突然現実から、変わり果てた。

「これは……どういうこと……」

リーフガットは絶句した。

何故ならそこにあったのは、

獣。

異形の塊、としか形容できない獣が立っていた。


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