FORSE

巫夏希

「……どうした。急に? 我々を呼んで、何かあったというのか?」

突然、部屋の椅子の一つから人間が“生み出された”。

「いや、呼んだのは“闇潜おうせん”……ストライガーではありませんよ」

女将は生み出されたそれに小さく呟いた。

「ふん。そうでもそうじゃなくても私は今ムカムカしている。なんだ? 誰が我ら使徒を呼び寄せた? この“龍風たつかぜ”を呼ぶ重大に足る事か? そんなこと使徒結成……いや少なくとも闇潜が使徒として認められた10年前から有り得ないことだ」

「存じております。龍風。だが、それは今口論すべきことではない。そうだろう? 今集合が決されたのであるから、それに反することはしてならぬはずだよ」

「ふん。若者が」

龍風はストライガー――闇潜の言葉を聞き、苛立ちを隠せないものの、何も言うことはなく自らの席に座った。

「……まだ全然来てませんね。……闇潜、座ってお待ちください」

女将の言葉に闇潜ストライガーは頷き自らの決められた席へと座った。

「なんだぁ? 闇潜も、龍風も随分早いなぁ」

その荘厳な雰囲気をぶち壊す陽気な笑い声が聞こえてきたのは、闇潜が座ってすぐのことだった。


「なんだ、式神しきがみか。来ていたのか?」

「いやぁ、龍風。何年ぶりだ? お前さん変わんないねぇ~!」

「お前もな。式神」

龍風は式神、と呼んだ青年と会話に花を咲かせていた。

「さて……龍風、式神。そろそろ席に着いてもらってもいいかな?」

気づくと闇潜から見て一番向こうにある席には人が座っていた。否、既に“全ての席が必然的に埋まっていた”。

「おっ……水神みなかみか。……いや、欠番アインとでも言うべきか。今は」

「龍風。今は呼び名に関してどうこう言うものではない。私の《欠番》就任はもう五年も前のことだ」

水神は自らが装着している眼鏡をかけ直し、

「……さて、では始めるとするか」

「大神道会の全てを決める、会議を」

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