FORSE
8
「そうだ。オール・アイ。彼女がその全ての元凶だ」
「つまり……、どうする? そいつを倒せばいいのか?」
龍風は犬歯を剥き出しにして、まるで遠吠えでもしそうな感じに呟いた。
「まぁ、それが僕らに出来れば簡単に話は済んでしまうよ」だが、水神は微笑んで、「僕が言いたいのはそこではない。結論から言えば倒せないんだよ。倒そうとしたらそれは木偶さ。大量のダミーが彼女にはある。倒すにもそれを倒さねば、話は始まらない」
「ならばどうする。本体を倒せば済む話ではないのか」
「いいえ、違います」水神は紙を出して机に広げる。「これは、オール・アイの側近だった女性に聞き出したものです。あくまでも“合法”に聞き出しました。それが、このケント紙に書かれてます」
むむ、と闇潜が目を見張って読む。そこに書かれていたのは、
『オール・アイは不老不死に成功した。毎朝林檎を欠かさず、パンを食べ、ワインを飲むのだ』
「……なるほど。神を自らの身に堕としたのか」
「どういうことです? 龍風」
「ワインは血、パンは肉。これが混ざることにより人間は生まれる。そして、林檎。林檎は神の実として叡智の象徴とする宗教もあったらしい。たぶん、そこから来ているんだろう」
「つまり、オール・アイは神になろうとしているのか? 生きている人間全てを消し去ろうとしてまでも?」
「その可能性はある。現に彼女はまだ一度も戦場には出向いていない。もしかしたらまだ奥の手があるのかも――」
――しれない、と言おうとしたそのときだった。
ドガッ、ドガガガガガ!! と不定期に震動が訪れた。その場所だけではなく、全体が揺れるそれが。
「……なんだ?! 一体何が訪れるというんだ!!」
「……闇潜、モニターを回せっ!」
「はい!!」
もう上下関係などなかった。木隠が闇潜に指示し、闇潜はその指示の通りにモニターを繋いだ。
モニターのカメラは地上の電波塔に繋がっていた。煙突に模したそれは彼らの通信手段のひとつだった。
そして、モニターはその惨状を写した。
「……これは!!」
そこに広がっていたのは、先ほどの豊かな状態を嘘かと疑う程の瓦礫だった。
瓦礫は大地を包み込み、茶色の地面すらを飲み込んでいた。
つい数分前にあったジャパニアの区々はそこにはなかった。
「ど、どういうことだ?! いったい、何があったと言うんだ……!!」
そう狼狽えていたのは先程まで余裕の塊だった龍風だった。
「……あれだ」
水神が冷静に判断を下し、モニターの左端を指で軽く叩き、
「こっちに、映してくれ」
闇潜は小さく頷き、モニター下部にあるキーボードを両手で素早く叩く。
ポロン、と軽い、どこか懐かしくも思える、電子音が鳴るとモニターが映していたその地形、瓦礫は右へスライドした。
「これは!!」
そして、そこに映し出された光景を見て思わず闇潜も驚いて口に手を当てた。
そこに映し出されていたのは、獣。それも、予想を大きく裏切るほどに、巨大な。
それは一歩歩むごとにズシン、と重々しい音を出し、ゆっくりながらも確実にモニター――正確にはモニターが受信している信号の送信機であるカメラである――の方へと向かって来ていた。
「……どうやら、我々と戦いたいようだな?」
平静を取り戻した龍風がまた余裕そうな表情で呟いた。
「つまり……、どうする? そいつを倒せばいいのか?」
龍風は犬歯を剥き出しにして、まるで遠吠えでもしそうな感じに呟いた。
「まぁ、それが僕らに出来れば簡単に話は済んでしまうよ」だが、水神は微笑んで、「僕が言いたいのはそこではない。結論から言えば倒せないんだよ。倒そうとしたらそれは木偶さ。大量のダミーが彼女にはある。倒すにもそれを倒さねば、話は始まらない」
「ならばどうする。本体を倒せば済む話ではないのか」
「いいえ、違います」水神は紙を出して机に広げる。「これは、オール・アイの側近だった女性に聞き出したものです。あくまでも“合法”に聞き出しました。それが、このケント紙に書かれてます」
むむ、と闇潜が目を見張って読む。そこに書かれていたのは、
『オール・アイは不老不死に成功した。毎朝林檎を欠かさず、パンを食べ、ワインを飲むのだ』
「……なるほど。神を自らの身に堕としたのか」
「どういうことです? 龍風」
「ワインは血、パンは肉。これが混ざることにより人間は生まれる。そして、林檎。林檎は神の実として叡智の象徴とする宗教もあったらしい。たぶん、そこから来ているんだろう」
「つまり、オール・アイは神になろうとしているのか? 生きている人間全てを消し去ろうとしてまでも?」
「その可能性はある。現に彼女はまだ一度も戦場には出向いていない。もしかしたらまだ奥の手があるのかも――」
――しれない、と言おうとしたそのときだった。
ドガッ、ドガガガガガ!! と不定期に震動が訪れた。その場所だけではなく、全体が揺れるそれが。
「……なんだ?! 一体何が訪れるというんだ!!」
「……闇潜、モニターを回せっ!」
「はい!!」
もう上下関係などなかった。木隠が闇潜に指示し、闇潜はその指示の通りにモニターを繋いだ。
モニターのカメラは地上の電波塔に繋がっていた。煙突に模したそれは彼らの通信手段のひとつだった。
そして、モニターはその惨状を写した。
「……これは!!」
そこに広がっていたのは、先ほどの豊かな状態を嘘かと疑う程の瓦礫だった。
瓦礫は大地を包み込み、茶色の地面すらを飲み込んでいた。
つい数分前にあったジャパニアの区々はそこにはなかった。
「ど、どういうことだ?! いったい、何があったと言うんだ……!!」
そう狼狽えていたのは先程まで余裕の塊だった龍風だった。
「……あれだ」
水神が冷静に判断を下し、モニターの左端を指で軽く叩き、
「こっちに、映してくれ」
闇潜は小さく頷き、モニター下部にあるキーボードを両手で素早く叩く。
ポロン、と軽い、どこか懐かしくも思える、電子音が鳴るとモニターが映していたその地形、瓦礫は右へスライドした。
「これは!!」
そして、そこに映し出された光景を見て思わず闇潜も驚いて口に手を当てた。
そこに映し出されていたのは、獣。それも、予想を大きく裏切るほどに、巨大な。
それは一歩歩むごとにズシン、と重々しい音を出し、ゆっくりながらも確実にモニター――正確にはモニターが受信している信号の送信機であるカメラである――の方へと向かって来ていた。
「……どうやら、我々と戦いたいようだな?」
平静を取り戻した龍風がまた余裕そうな表情で呟いた。
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