FORSE

巫夏希

19

その頃、サリドたちは瓦礫の中から人間を助ける所謂当たり前な行動を開始していた。生きている人間にはレーション(この際、味には我慢してもらう)をあげて栄養をとってもらい、死んでいた人間には細やかではあるが花を捧げて土へ埋める。この工程を何度も何度も繰り返していた。

「生存者25名、死亡者170名……。人が死にすぎだ……!!」

「まるで地震のような衝撃だったし、ここはレイザリーやシャルーニュとは違って木造建築、家屋に押し潰されて死んでしまうというのが多いね」

こんな中でもサリドは冷静に分析をしていた。

「そこで何をしている」

サリドはその声を聞き、驚いた。ただ人がいた、それも生きているという簡単に普通な驚愕ではなく、人には考えられない靄のようなもの――オーラとか陽炎がそれに近い――が真後ろに立たれているだけで感じる、その“非日常”な驚愕、それをサリドは感じていた。

そこにいたのは、おかっぱ頭の年端もいかない少女だった。色褪せた薄紫色の浴衣のようなものを着ていた。

ただ、そこにいたのは明らかに“人と呼べるもの”ではなかった。

なぜそうと感じられるか? それは、先程に書いた人とは違うオーラ、というのもあるだろう。だがしかし、それだけではない。

そこにそれがいる、と感じさせるだけで周りの人間は死の恐怖に襲われる。訳も解らぬまま、人は戦わずしてそれに恐れ戦く。

そうしてそれは戦わずして勝利を得続けたのだろう、サリドは背中にじわじわと感じる汗をただ何もすることなく流させていた。

「……もう一度尋ねようか」少女はため息をついて、「なぜ、ここにいる?」

その時、明らかに冗談ではなく、衝撃が二人の体に伝わった。二人の体にさらにどっと汗が浮かぶ。明確な“死”の気配、それを二人は感じていた。

「木隠、どうしました?」

次に聞こえたのは、気づくと木隠の隣に立つ人間からだった。しかしその声はサリドにとって少し懐かしい声でもあった。

「……ストライガー……か?」

サリドは思わずその名前を口にした。ストライガーはそれに気付き、言った。

「……久しぶりですね。サリド・マイクロツェフ。ようこそ、“神の国”ジャパニアへ」

ストライガーは笑って言った。

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