FORSE

巫夏希

28

そのころ。

「おいサリド。どうやらフラれちまったみたいだな?」

「何だよグラム。急にやってきて」

「解るんだよ。俺には『アネモネの花言葉にはもうひとつ意味がある』って事をさ。あれは確か……」

「やめろ。お前に言われると吐き気がする」

「まぁ、気障なやり方だねぇ? どうして口で言わないのやら?」

「……、」サリドは顔を赤らめながら、「気障じゃなくて、口で言うのが恥ずかしいだけだ」

サリドの答えに、グラムは思わず吹き出しそうになったが、吹き出したら殴られそうな気がしたので必死に押さえていた。

『……という訳なんだが、これでいいかな?』

そのころ。フランシスカたちも作戦会議を終え、最後の休息をとっていた。

「……ええ、いいわ。単純かつ素晴らしいわね」

「……いいと思う」

「さすがですね。やはりシャルーニュのエースだけあります」

三種三様にロゼの作戦を褒めちぎる。

『ありがとう。けれど本当に褒めてもらうのはこれが成功してからだな』

フランシスカもロゼの話を聞いて頷いた。

『じゃあ作戦についてもう話すことはない。……ウィンドとリリーはちょっと席を外してもらえるかな』

「りょーかい」

「解りました」

ふたりはそれぞれの反応をして通信を切った。

「……どうしたの? 急に」

『……さっき、彼、サリドがアネモネを渡したでしょう?』

「ああ」思い出したのか再び顰め顔になるフランシスカ。「あいつ、これから戦いに行くのに『薄れゆく希望』が花言葉の花を渡すだなんて信じらんないわ」

『……そうかな?』

少しの沈黙があって、ロゼは答えた。

「……何が言いたい?」

『アネモネの花言葉はいっぱいあるよ。確かその中には「薄れゆく希望」みたいに悲観的なものもある。けれど、もう一つ意味があるんだ。そう、例えば』

――“あなたを愛す”とかかな?

フランシスカはロゼに言われ、驚いた。彼女には電撃が走ったような衝撃に襲われた。

「じゃあ……あれは……」

『所謂告白ってやつじゃないかな? 彼は今頃落ち込んでるんじゃない?』

「……ロゼ、少し時間あるかしら」フランシスカは少し考えて、呟いた。

『手短に。そして後悔のないように』

そう言ってロゼはフランシスカを見送った。

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