FORSE

巫夏希

前編

「そういえば、今日って四月一日か?」

「そうですけど?」サリドと修一がそんな話を始めたのは、サリドがヒュロルフタームの修理を始めた頃だった。

「それじゃ知ってるか? 今日は俺の誕生日なんだよ」

「えっ、まじですか?! おめでとうございます!!」サリドは焦って、言う。

だが、修一はカラッと夏の陽射しのような、笑顔で言った。

「ああ、残念ながら嘘だ」

「なんで嘘つくんですか!」

「旧時代ではこの日を『エイプリルフール』って言ってだな。嘘をついていい日なんだよ」

それを聞いてサリド。

「へえ……。それは面白い日ですね」

何かを思いついたのか、爽やかな笑みを零して言った。





「なあ、フランシスカ」

「どうした、サリド」

「知ってるか。今日は俺の誕生日だ」

「……分かっていた。はい」

そう言ってフランシスカは花を差し出した。

「……トルコキキョウ?」

「あなたがアネモネを差し出したように、私も花を返す」

「たしか、トルコキキョウの花言葉、って……」

サリドが花を受取りつつ、言う。

「『永遠の愛』……らしいよ? リリーが言ってただけでほんとかどうかは解らないけど」

「……へえ。で、さ。フランシスカ、もう一個言うことがあるんだ」

「どうしたの?」フランシスカはわざとらしく首を傾げて言う。

「実は……今日エイプリルフールなんだ。嘘をついていい日なんだよ」

「……そうか」

サリドはそのときちゃんとはフランシスカの顔は見なかった。だが、覇気というか怒っている感じは顔を見なくとも感じられた。

「あ、あの、フランシスカさーん……?」

刹那、サリドの頬にフランシスカの張り手が炸裂した。

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