現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第83話、穐斗は、ようやく自分の変調に気がつきました。
穐斗は祐也の背中しか見えなかったので解らなかったのだが、穐斗のいた場所は、穐斗の実父の広大な館、通称『妖精の館』である。
穐斗は物心ついてからは一度も入ったことがなく、知っているのはガラハッドとウェイン。
特に細かく覚えていたガラハッドは、
「ここだろうな、多分?」
と言いつつも、案内してくれたのである。
しかし、わらわらと様々な生物?が行く手を阻み、女の子の紅は当然ウェインが庇いつつ進んでいったのである。
帰りは、ほとんどおらず、その上逆に後ずさるものもいる。
が、
「私の花嫁を返せ‼」
出てきたのは、金髪緑の瞳の端正な青年。
しかし、
「何でだ?花嫁にするならMEGでもしろよ」
「そうだよ。それに穐斗は男の子だよ?」
「違う‼代々のあの家の子供には我ら、妖精の血を引いた半人半妖精が生まれる。母親は人間、つまり父親の血が妖精になる。近年、この人間界の変化か、妖精は妖精は生まれるが、我らエルフの出生が減っているのだ‼その為に、アルテミスを妖精界に招いたが、妖精の血は薄く変化はなく、かえってもらったのだ。代わりに、子供をくれと……」
「は?アルテミス卿に?」
「そうだ。その代わりに、子供をくれたら、代わりに彼の望むものを与えると……アルテミスの子供はたくさんいるが、送ってきても送ってきても、子供を産まなかった。一人、モルガーナと言う娘は、送られず、そして、この子が生まれた。期待した。しかし、母親が連れ去ったんだ‼」
祐也はウェインに穐斗を預けると、人形のような存在に近づき、
「はぁ食いしばれ‼何様だ‼あぁ?」
拳を振り上げ、溜めた力をそのまま頬にぶち当てる。
吹っ飛んだ妖精の王子にすたすたと近づき、胸ぐらをつかむと持ち上げる。
「つまり……お前は、穐斗のお姉さんになる人間を、父親からもらい受けて、この世界から連れ去って、散々もてあそんだって、いってるんだよな?何人も何人も」
「ひほんはへひはへへは(子孫ができなければ)」
「そんなんで、子孫を残すくらいなら、滅びろ‼」
「なっ‼」
目を見開く王子に、ゆっくり繰り返す。
「人間を、女性を、命を弄び、利用して、苦しめておいて、子孫?お前に子供を残す資格はない‼人間を……女性を、子供を、命をバカにするなぁぁ‼」
もう一度殴り付け、床に放り出した祐也は、目の前にたつ、一人の美しい青年に気がつく。
人形のような青年よりも生命力に満ちた、蒼い瞳をしている。
「申し訳ありません。私の愚かな息子が、仕出かしたあやまち、謝罪では足りませんが、お伝えします」
深々と頭を下げる。
「フェアリーは人間界に存在し、我々エルフはほぼ妖精の世界におり、長いときを生きるのです。ごく稀に、子供は生まれてもごくわずか。生まれる方が珍しいのです。ですが、昔、この侯爵家に取り替え子があり、その子は成長し、エルフの娘と結婚し子供が生まれ、その子孫がその少女であり、青年です。それは愛を知ることにより、長命を捨てた娘が遺した愛情と、力の残滓。それは、恋は知っても愛を知らぬ……愛を知ってしまうと恋愛遊戯や日々の遊びが失われると言う戒めともなりました。しかし、偶然にも私と妻に命が生まれ、その命に、周囲は興味を示すようになりました。私は……知りませんでした。エルフの恋愛遊戯に人の子を巻き込むとは‼」
「知らなかった?」
「歪みがひどくなっているのです。命が、バランスが崩れると、フェアリー、そして私たちにも影響が……私はなるべく影響を押さえようと、奥の間に……」
目を伏せる。
それはどことなく、穐斗の写真のように美しかった。
「責任を……」
「あなたは知らなかった。それはわかった。じゃぁ、聞く。この穐斗の姉になる女性たちはどうなっているんだ?」
「……エルフは気まぐれだ。人はその優しさで、気まぐれなエルフを赦し、裏切られを繰返し、病んでしまう……」
「何人?」
祐也の声に、エルフの王は答える。
3人は愕然とする。
数の多さと、座り込んでいるエルフの王子と、穐斗の実父の犯した罪の深さを……。
「すぐに‼叔母たちを還してください‼母は白魔女です‼私の領地で叔母たちの療養を希望します‼」
ウェインは言い切る。
「だが……」
「遊びの恋など、人間は望んでいない‼欲しいのは一人の心‼還してください‼」
「そして、この男に、重い処分を。心を弄び、苦しめた存在に……」
「それに、すぐには無理かもしれませんが、僕たちが、皆さんの苦しみを歪みを正していきます‼だから、お願いします‼僕のお姉ちゃんたちを還してください‼」
頭を下げた穐斗の肩から布が落ち、単からはうっすらと、男性ではない体躯が見えた。
「わぁぁ‼」
祐也が慌てて布を巻き付ける。
「わぁぁ~‼ミイラじゃないよ~‼それになんか変……?」
「な、何が?」
「うぅぅ……お腹が痛い……」
祐也にしがみついた穐斗の背後の異変に気がついたウェインは、慌てて、腰にひっかけていた布を巻き付けた。
「祐也‼先にトラックに‼い、一応、母に聞いたけど、体を暖めておいた方がいい‼」
「わかった」
「うぅぅ……」
穐斗を抱き上げて早足で出ていったのだった。
穐斗は物心ついてからは一度も入ったことがなく、知っているのはガラハッドとウェイン。
特に細かく覚えていたガラハッドは、
「ここだろうな、多分?」
と言いつつも、案内してくれたのである。
しかし、わらわらと様々な生物?が行く手を阻み、女の子の紅は当然ウェインが庇いつつ進んでいったのである。
帰りは、ほとんどおらず、その上逆に後ずさるものもいる。
が、
「私の花嫁を返せ‼」
出てきたのは、金髪緑の瞳の端正な青年。
しかし、
「何でだ?花嫁にするならMEGでもしろよ」
「そうだよ。それに穐斗は男の子だよ?」
「違う‼代々のあの家の子供には我ら、妖精の血を引いた半人半妖精が生まれる。母親は人間、つまり父親の血が妖精になる。近年、この人間界の変化か、妖精は妖精は生まれるが、我らエルフの出生が減っているのだ‼その為に、アルテミスを妖精界に招いたが、妖精の血は薄く変化はなく、かえってもらったのだ。代わりに、子供をくれと……」
「は?アルテミス卿に?」
「そうだ。その代わりに、子供をくれたら、代わりに彼の望むものを与えると……アルテミスの子供はたくさんいるが、送ってきても送ってきても、子供を産まなかった。一人、モルガーナと言う娘は、送られず、そして、この子が生まれた。期待した。しかし、母親が連れ去ったんだ‼」
祐也はウェインに穐斗を預けると、人形のような存在に近づき、
「はぁ食いしばれ‼何様だ‼あぁ?」
拳を振り上げ、溜めた力をそのまま頬にぶち当てる。
吹っ飛んだ妖精の王子にすたすたと近づき、胸ぐらをつかむと持ち上げる。
「つまり……お前は、穐斗のお姉さんになる人間を、父親からもらい受けて、この世界から連れ去って、散々もてあそんだって、いってるんだよな?何人も何人も」
「ひほんはへひはへへは(子孫ができなければ)」
「そんなんで、子孫を残すくらいなら、滅びろ‼」
「なっ‼」
目を見開く王子に、ゆっくり繰り返す。
「人間を、女性を、命を弄び、利用して、苦しめておいて、子孫?お前に子供を残す資格はない‼人間を……女性を、子供を、命をバカにするなぁぁ‼」
もう一度殴り付け、床に放り出した祐也は、目の前にたつ、一人の美しい青年に気がつく。
人形のような青年よりも生命力に満ちた、蒼い瞳をしている。
「申し訳ありません。私の愚かな息子が、仕出かしたあやまち、謝罪では足りませんが、お伝えします」
深々と頭を下げる。
「フェアリーは人間界に存在し、我々エルフはほぼ妖精の世界におり、長いときを生きるのです。ごく稀に、子供は生まれてもごくわずか。生まれる方が珍しいのです。ですが、昔、この侯爵家に取り替え子があり、その子は成長し、エルフの娘と結婚し子供が生まれ、その子孫がその少女であり、青年です。それは愛を知ることにより、長命を捨てた娘が遺した愛情と、力の残滓。それは、恋は知っても愛を知らぬ……愛を知ってしまうと恋愛遊戯や日々の遊びが失われると言う戒めともなりました。しかし、偶然にも私と妻に命が生まれ、その命に、周囲は興味を示すようになりました。私は……知りませんでした。エルフの恋愛遊戯に人の子を巻き込むとは‼」
「知らなかった?」
「歪みがひどくなっているのです。命が、バランスが崩れると、フェアリー、そして私たちにも影響が……私はなるべく影響を押さえようと、奥の間に……」
目を伏せる。
それはどことなく、穐斗の写真のように美しかった。
「責任を……」
「あなたは知らなかった。それはわかった。じゃぁ、聞く。この穐斗の姉になる女性たちはどうなっているんだ?」
「……エルフは気まぐれだ。人はその優しさで、気まぐれなエルフを赦し、裏切られを繰返し、病んでしまう……」
「何人?」
祐也の声に、エルフの王は答える。
3人は愕然とする。
数の多さと、座り込んでいるエルフの王子と、穐斗の実父の犯した罪の深さを……。
「すぐに‼叔母たちを還してください‼母は白魔女です‼私の領地で叔母たちの療養を希望します‼」
ウェインは言い切る。
「だが……」
「遊びの恋など、人間は望んでいない‼欲しいのは一人の心‼還してください‼」
「そして、この男に、重い処分を。心を弄び、苦しめた存在に……」
「それに、すぐには無理かもしれませんが、僕たちが、皆さんの苦しみを歪みを正していきます‼だから、お願いします‼僕のお姉ちゃんたちを還してください‼」
頭を下げた穐斗の肩から布が落ち、単からはうっすらと、男性ではない体躯が見えた。
「わぁぁ‼」
祐也が慌てて布を巻き付ける。
「わぁぁ~‼ミイラじゃないよ~‼それになんか変……?」
「な、何が?」
「うぅぅ……お腹が痛い……」
祐也にしがみついた穐斗の背後の異変に気がついたウェインは、慌てて、腰にひっかけていた布を巻き付けた。
「祐也‼先にトラックに‼い、一応、母に聞いたけど、体を暖めておいた方がいい‼」
「わかった」
「うぅぅ……」
穐斗を抱き上げて早足で出ていったのだった。
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