現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第65話、結納です。
「簡単にと言うよりも、手渡したら式をいつにするかにしまへんかな?」
キッチリとした印象の嵐山の一言に、
「式……考えてませんでした‼」
と、風遊の一言に、紫野は弟を見る。
「お~い、醍ちゃん。かまへんのかな?」
「構いますわ‼風遊はん‼せっかく穐斗も言いましたやんか?ですから?実家の方と、うちの方でやりまひょ‼」
「え、エェェェ?ひ、ひとつで、お願いします‼」
「あきまへん」
櫻子が鼻息も荒く参戦する。
「京都だけではあきまへん‼あてらは、醍醐はんが言うてはったほたるをぎょうさんみたいんどす‼その中でお式‼なんてロマンチックなんや……」
うっとり……。
「は、はぁ?ですけど……」
「お父さん」
醍醐はスマホを示し、
「この間、お寺さんに電話したんどす。お父さんのお友だちの住職さんに『ほたる祭りの時に初めてあって、一目惚れやって、プロポーズしたんです。周囲の人の前でも構いませんので結婚式させてください』って。そうしたら、そりゃすごいって、言ってましたよ?他の人に聞いてみるって」
「大袈裟になってしまう~‼」
「スゥ先輩も子供が生まれたらするんですよね?」
「ウフフ~‼実は、もうひとつ隠しイベントがあるんです~‼当日まで内緒‼」
糺はクスクス笑う。
「まぁ、今回は仲人さんもおらんさかいに、こちらをお渡しいたします。ご確認のほどを」
嵐山に手渡された結納品を、おし戴いた麒一郎に、紫野は、
「一応確認しておくれやす。また何かあったら、あきまへん」
「がめついと言うか……醍醐は息子ですし……はぁぁぁぁ~!」
中に書かれていたものに、目を見開く。
「どうしたん?……ひぃぃぃ‼」
「あ、それは不動産です。この部屋で生活もいいですが、近くにマンション買いました。それと、川沿いの土地ですが、今度、祐也くんとひなが何か考えているらしくて、すぐに。そういったものです。他には……預金通帳と、あぁ、そうどした」
部屋のすみにおいていた箱を持ってくると、
「これは風遊はんに」
「えっ?」
中身をあけた風遊は本気で腰を抜かす。
「ちょ、ちょっと……こ、この子は……」
「あてとこの……実家の倉におりましたんや」
櫻子がはんなりと言う。
「それが、両親も兄はんも興味がない言わしまひて、じゃぁ、おくれやすともろて帰りましたんや。風遊はん。多分、あての実家にはまだありましたわ。式の前の挨拶の時に全部結婚のお祝いにおくれやすと言うてかましまへん」
「……え、エェェェ?お、お母さん‼こ、こんな、ヴィンテージ越えた、テディベアがそがいにおるんですかぁぁ‼穐斗が‼穐斗が元気になったら行かせてください~‼お願いします‼これは、全部シュコ社のテディベアで、うちも見たことがのうて……」
「全部、風遊はんのもんや。あての実家は興味がないさかいに、全部引き取ってほしいて言うてましたわ」
「ふぁ、ファーネル社のテディベア……それにシュタイフ社のヴィンテージ‼しかも白タグ……」
目の色を変えてテディベアを見るが、それはお金を見るのではなく、子供の名前を確認しているようで、
「アァァァ……夢みたい。イエスノーベアもあったぁぁ」
「ふ、風遊さん、そんなに珍しいんですか?」
「エェ!シュコ社……シュコー社はもうないんです。それに……」
小さいテディベアの頭を持つと、スポンと抜く。
周囲は青ざめるが、
「これは香水ケースなんです。こっちは、首の部分を触ると……」
胸が開き、
「鏡とファンデーションが入っています。こっちは口紅で……」
「き、奇抜や……けったいな……」
「で、この子はファーネル社のテディベアで珍しいんです‼最低でもオークションだと10万以上します。ですからここにいる子達……ほ、本当に戴いても?」
櫻子は、あっさり、
「あての実家はオークションのおのじもわからしまへん。安心しなはれ。それに、そうやって風遊はんに可愛がってもろたら、えぇわ」
「ありがとうございます‼お母さん‼」
「と言うか、あの倉の中のもん。あてが斎王代に選ばれたときに、送られたもんどすのや。あてのものは風遊はんのもんや」
豪快な母と、テディベアオタクの将来の妻がタッグを組んで、母の実家に乗り込んでいく姿が目に浮かんだ醍醐に、兄は……、
「がんはりなはれや。醍ちゃん。テディベアと醍ちゃん。喧嘩するとどっち選ぶ言うてテディベアになりましたよって実家に帰ってこんようにせなあかんで?」
「かえりまへんわ!お父さん!なんとか……」
「いやぁ……畑の手入れと田んぼと、ハーブ以外は、元々風遊は大人しかったんで、穐斗とお人形遊びが多かったなぁ……」
「穐斗はよう熱だしよったけんね。テディベア抱っこさせて、お話ししたり……」
「が、頑張ります‼」
醍醐は決意するのだった。
キッチリとした印象の嵐山の一言に、
「式……考えてませんでした‼」
と、風遊の一言に、紫野は弟を見る。
「お~い、醍ちゃん。かまへんのかな?」
「構いますわ‼風遊はん‼せっかく穐斗も言いましたやんか?ですから?実家の方と、うちの方でやりまひょ‼」
「え、エェェェ?ひ、ひとつで、お願いします‼」
「あきまへん」
櫻子が鼻息も荒く参戦する。
「京都だけではあきまへん‼あてらは、醍醐はんが言うてはったほたるをぎょうさんみたいんどす‼その中でお式‼なんてロマンチックなんや……」
うっとり……。
「は、はぁ?ですけど……」
「お父さん」
醍醐はスマホを示し、
「この間、お寺さんに電話したんどす。お父さんのお友だちの住職さんに『ほたる祭りの時に初めてあって、一目惚れやって、プロポーズしたんです。周囲の人の前でも構いませんので結婚式させてください』って。そうしたら、そりゃすごいって、言ってましたよ?他の人に聞いてみるって」
「大袈裟になってしまう~‼」
「スゥ先輩も子供が生まれたらするんですよね?」
「ウフフ~‼実は、もうひとつ隠しイベントがあるんです~‼当日まで内緒‼」
糺はクスクス笑う。
「まぁ、今回は仲人さんもおらんさかいに、こちらをお渡しいたします。ご確認のほどを」
嵐山に手渡された結納品を、おし戴いた麒一郎に、紫野は、
「一応確認しておくれやす。また何かあったら、あきまへん」
「がめついと言うか……醍醐は息子ですし……はぁぁぁぁ~!」
中に書かれていたものに、目を見開く。
「どうしたん?……ひぃぃぃ‼」
「あ、それは不動産です。この部屋で生活もいいですが、近くにマンション買いました。それと、川沿いの土地ですが、今度、祐也くんとひなが何か考えているらしくて、すぐに。そういったものです。他には……預金通帳と、あぁ、そうどした」
部屋のすみにおいていた箱を持ってくると、
「これは風遊はんに」
「えっ?」
中身をあけた風遊は本気で腰を抜かす。
「ちょ、ちょっと……こ、この子は……」
「あてとこの……実家の倉におりましたんや」
櫻子がはんなりと言う。
「それが、両親も兄はんも興味がない言わしまひて、じゃぁ、おくれやすともろて帰りましたんや。風遊はん。多分、あての実家にはまだありましたわ。式の前の挨拶の時に全部結婚のお祝いにおくれやすと言うてかましまへん」
「……え、エェェェ?お、お母さん‼こ、こんな、ヴィンテージ越えた、テディベアがそがいにおるんですかぁぁ‼穐斗が‼穐斗が元気になったら行かせてください~‼お願いします‼これは、全部シュコ社のテディベアで、うちも見たことがのうて……」
「全部、風遊はんのもんや。あての実家は興味がないさかいに、全部引き取ってほしいて言うてましたわ」
「ふぁ、ファーネル社のテディベア……それにシュタイフ社のヴィンテージ‼しかも白タグ……」
目の色を変えてテディベアを見るが、それはお金を見るのではなく、子供の名前を確認しているようで、
「アァァァ……夢みたい。イエスノーベアもあったぁぁ」
「ふ、風遊さん、そんなに珍しいんですか?」
「エェ!シュコ社……シュコー社はもうないんです。それに……」
小さいテディベアの頭を持つと、スポンと抜く。
周囲は青ざめるが、
「これは香水ケースなんです。こっちは、首の部分を触ると……」
胸が開き、
「鏡とファンデーションが入っています。こっちは口紅で……」
「き、奇抜や……けったいな……」
「で、この子はファーネル社のテディベアで珍しいんです‼最低でもオークションだと10万以上します。ですからここにいる子達……ほ、本当に戴いても?」
櫻子は、あっさり、
「あての実家はオークションのおのじもわからしまへん。安心しなはれ。それに、そうやって風遊はんに可愛がってもろたら、えぇわ」
「ありがとうございます‼お母さん‼」
「と言うか、あの倉の中のもん。あてが斎王代に選ばれたときに、送られたもんどすのや。あてのものは風遊はんのもんや」
豪快な母と、テディベアオタクの将来の妻がタッグを組んで、母の実家に乗り込んでいく姿が目に浮かんだ醍醐に、兄は……、
「がんはりなはれや。醍ちゃん。テディベアと醍ちゃん。喧嘩するとどっち選ぶ言うてテディベアになりましたよって実家に帰ってこんようにせなあかんで?」
「かえりまへんわ!お父さん!なんとか……」
「いやぁ……畑の手入れと田んぼと、ハーブ以外は、元々風遊は大人しかったんで、穐斗とお人形遊びが多かったなぁ……」
「穐斗はよう熱だしよったけんね。テディベア抱っこさせて、お話ししたり……」
「が、頑張ります‼」
醍醐は決意するのだった。
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