現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第55話、普段温厚なウェインでも、怒ってしまいました。
会場には先にウェインの父が向かったと聞き、出掛けていく。
「そう言えば、ウェインのお父さんの名前を聞いてなかった」
「ガラハッドだよ」
「えっ?聖杯伝説の?」
『ゆうにいちゃん。ウェインさん、何々?』
紅は、兄の祐也に窓にベッタリはダメと言われ、渋々パディントンベアをだっこしていた。
『あぁ、ウェインのお父さんの名前を聞いてなくてビックリしたんだ。ガラハッドさんって言うんだって』
『アーサー王伝説の?ランスロットの息子の?ウェインさんもアーサー王の甥のガウェインですよね?偶然ですか?』
『偶然と言うか、父方の祖父が付けてくれたんだ。僕の家は代々長男の名前は、祖父がつけるから』
『へぇ……素敵ですね。うちの家なんか、上の兄ちゃんは一番目だから一平。うちは生まれたときに、ほっぺたが赤いから最初は赤にするって、で、母さんが「ぼけ~‼そんなんで名前になるかね‼何考えよんよ‼」って怒鳴り飛ばして、で赤から紅になったんよ。それと、年子の妹は、丁度、兄ちゃんが七五三の準備をせないかん言うたときに生まれたけん、そこの神社の神様からもろたんよ』
方言もあり、祐也が通訳をする。
『へぇ……神様の……』
『言うても、動物園のアフリカゾウの女の子もおんなじ媛ちゃんや。見たことあるけどかわいいんよ?』
『アフリカゾウ……』
『うん。日本の動物園は特にアフリカゾウの高齢化が問題なんやって。でね?愛媛県のとべ動物園っていうところにアフさんっていうお父さんぞうとリカさんていうおかあさんぞうがおって、子供が生まれたんよ。でもねぇ、リカさん、子育てできんかって、生まれた赤ん坊が危ない言うて、人工飼育で育てたんよ。で、その子の名前が媛ちゃんや。でももっとすごいんは、飼育員さんや』
目をキラキラさせる。
『何かあんまりうちにはわからんのやけど、ゾウさんてお母さんをトップにした家族が中心で群れを作るんやって、で、人工飼育の媛ちゃんが、自分の子やって思い出すようにって、仕切りの向こうから触れさせて、わからせるようにしたんやって。その上、砥夢くんて子供が生まれてな?子育て大丈夫か‼言うて心配しよったら、次は自分で子育てして、媛ちゃんとも一緒に生活できるようになったんやって』
『それは、周囲の努力の賜物だね』
『そうなんよ。やけんね。生きるってすごいなぁって思うわ』
にっこり笑う。
『ウェインさんも、ゆうにいちゃんみたいにいっつも笑顔でおるけど、大変なことも一杯あると思う。そういうときは、うちは弓道で、上の兄ちゃんと媛は柔道しよるけん投げ飛ばして発散しよるけど、ゆうにいちゃんもウェインさんも大変やったら、愚痴でもおいいよ?……考えよってなんも言わんのを、そばでみよるんも辛いんで?』
『紅……』
二人ははっとした顔をする。
すると、
『あぁぁ、ゆうにいちゃん、ウェインさん。ヨォ考えたら、お腹すいた~‼』
『向こうで、食べられるよ?』
『本当?やったぁ‼』
丁度その頃、婚約を控え、その前にと仕事で訪れていたイングランドで、日本の取材陣に囲まれているのは……祐也の実の父親である。
知人のつてをたより、今回のパーティに向かったのは仕事のつてや、正式に婚約する京都の女性にこういう友人がいると写真等で知らせたかったのもある。
それなのに……。
『お話を聞かせてください‼』
『10年ほど前の、貴方がオーストラリアでいらっしゃった頃に、ある事件が明るみになりましたよね?』
『ご存知でしたか?』
『はぁ?どういうことでしょう?私はこれから……』
電話がなり、相手が婚約者の電話だと気がつき取ると、
『すんまへんなぁ……』
『あぁ、お父さん。どうされました?』
『どうされましたも、あらぁへんわ‼あてらの誇りをズタズタに、あての娘や、あてらの家が今どないなんかわからしまへんのか‼』
『ど、どういうことでしょう?』
『そこの取材陣に聞いてみなはれ‼婚約はなかったことに‼ほなな?』
ガチャン‼
電話が切れ、折り返すも、
『お客様の電話はお繋ぎできません……』
となる。
どういうことだ⁉
婚約もほぼ決まり、順風満帆の道が開けたはずなのに……。
『10年前‼日本人の少年が、オーストラリアで行方不明と警察に通報があり、捜索すると、首都の反対側で発見保護された事件は覚えていらっしゃいますか‼』
『その少年の父親があなただというのは本当ですか?』
『しかも‼その少年を、当時の奥さんやその子供さんとで虐待したというのは‼』
青ざめる。
どういう事だ?
その話は揉み消しているはずだ。
それなのに、どうして……。
と、一台の車が入ってきた。
扉が開かれ現れたのは、有名な若手俳優のガウェイン・ルーサーウェインと、そして……。
男は、周囲の注目を忘れ、かき分ける。
『このくそがきがぁぁ‼又貴様か‼貴様のせいでぇぇぇ‼』
振り返った青年は、目を見開き、ザァァっと血の気がひいた顔で立ちすくむ。
『貴様のせいで‼お前の母親とは遊びだった‼子供ができたから結婚してやったと言うのに‼子供を残して逃げ出しやがってぇぇ‼』
「あ、あぁぁ……」
首を振り、嫌だと言いたげによろめく青年につかみかかり、殴り付ける。
「何をするんだ‼僕の親友に⁉」
もう一度殴ろうとした男を引き剥がし、羽交い締めにしたのはガウェイン。
「ヤードを‼すぐに‼僕の友人は無抵抗の留学生だ‼早く‼」
『ゆうにいちゃん‼やぁぁ‼』
意識を失い、倒れ込んでしまった青年を、お人形のように可愛らしい少女が、
「head‼brother head‼」
片言の英語で、頭を打ったと訴える。
周囲は騒然となったのだった。
「そう言えば、ウェインのお父さんの名前を聞いてなかった」
「ガラハッドだよ」
「えっ?聖杯伝説の?」
『ゆうにいちゃん。ウェインさん、何々?』
紅は、兄の祐也に窓にベッタリはダメと言われ、渋々パディントンベアをだっこしていた。
『あぁ、ウェインのお父さんの名前を聞いてなくてビックリしたんだ。ガラハッドさんって言うんだって』
『アーサー王伝説の?ランスロットの息子の?ウェインさんもアーサー王の甥のガウェインですよね?偶然ですか?』
『偶然と言うか、父方の祖父が付けてくれたんだ。僕の家は代々長男の名前は、祖父がつけるから』
『へぇ……素敵ですね。うちの家なんか、上の兄ちゃんは一番目だから一平。うちは生まれたときに、ほっぺたが赤いから最初は赤にするって、で、母さんが「ぼけ~‼そんなんで名前になるかね‼何考えよんよ‼」って怒鳴り飛ばして、で赤から紅になったんよ。それと、年子の妹は、丁度、兄ちゃんが七五三の準備をせないかん言うたときに生まれたけん、そこの神社の神様からもろたんよ』
方言もあり、祐也が通訳をする。
『へぇ……神様の……』
『言うても、動物園のアフリカゾウの女の子もおんなじ媛ちゃんや。見たことあるけどかわいいんよ?』
『アフリカゾウ……』
『うん。日本の動物園は特にアフリカゾウの高齢化が問題なんやって。でね?愛媛県のとべ動物園っていうところにアフさんっていうお父さんぞうとリカさんていうおかあさんぞうがおって、子供が生まれたんよ。でもねぇ、リカさん、子育てできんかって、生まれた赤ん坊が危ない言うて、人工飼育で育てたんよ。で、その子の名前が媛ちゃんや。でももっとすごいんは、飼育員さんや』
目をキラキラさせる。
『何かあんまりうちにはわからんのやけど、ゾウさんてお母さんをトップにした家族が中心で群れを作るんやって、で、人工飼育の媛ちゃんが、自分の子やって思い出すようにって、仕切りの向こうから触れさせて、わからせるようにしたんやって。その上、砥夢くんて子供が生まれてな?子育て大丈夫か‼言うて心配しよったら、次は自分で子育てして、媛ちゃんとも一緒に生活できるようになったんやって』
『それは、周囲の努力の賜物だね』
『そうなんよ。やけんね。生きるってすごいなぁって思うわ』
にっこり笑う。
『ウェインさんも、ゆうにいちゃんみたいにいっつも笑顔でおるけど、大変なことも一杯あると思う。そういうときは、うちは弓道で、上の兄ちゃんと媛は柔道しよるけん投げ飛ばして発散しよるけど、ゆうにいちゃんもウェインさんも大変やったら、愚痴でもおいいよ?……考えよってなんも言わんのを、そばでみよるんも辛いんで?』
『紅……』
二人ははっとした顔をする。
すると、
『あぁぁ、ゆうにいちゃん、ウェインさん。ヨォ考えたら、お腹すいた~‼』
『向こうで、食べられるよ?』
『本当?やったぁ‼』
丁度その頃、婚約を控え、その前にと仕事で訪れていたイングランドで、日本の取材陣に囲まれているのは……祐也の実の父親である。
知人のつてをたより、今回のパーティに向かったのは仕事のつてや、正式に婚約する京都の女性にこういう友人がいると写真等で知らせたかったのもある。
それなのに……。
『お話を聞かせてください‼』
『10年ほど前の、貴方がオーストラリアでいらっしゃった頃に、ある事件が明るみになりましたよね?』
『ご存知でしたか?』
『はぁ?どういうことでしょう?私はこれから……』
電話がなり、相手が婚約者の電話だと気がつき取ると、
『すんまへんなぁ……』
『あぁ、お父さん。どうされました?』
『どうされましたも、あらぁへんわ‼あてらの誇りをズタズタに、あての娘や、あてらの家が今どないなんかわからしまへんのか‼』
『ど、どういうことでしょう?』
『そこの取材陣に聞いてみなはれ‼婚約はなかったことに‼ほなな?』
ガチャン‼
電話が切れ、折り返すも、
『お客様の電話はお繋ぎできません……』
となる。
どういうことだ⁉
婚約もほぼ決まり、順風満帆の道が開けたはずなのに……。
『10年前‼日本人の少年が、オーストラリアで行方不明と警察に通報があり、捜索すると、首都の反対側で発見保護された事件は覚えていらっしゃいますか‼』
『その少年の父親があなただというのは本当ですか?』
『しかも‼その少年を、当時の奥さんやその子供さんとで虐待したというのは‼』
青ざめる。
どういう事だ?
その話は揉み消しているはずだ。
それなのに、どうして……。
と、一台の車が入ってきた。
扉が開かれ現れたのは、有名な若手俳優のガウェイン・ルーサーウェインと、そして……。
男は、周囲の注目を忘れ、かき分ける。
『このくそがきがぁぁ‼又貴様か‼貴様のせいでぇぇぇ‼』
振り返った青年は、目を見開き、ザァァっと血の気がひいた顔で立ちすくむ。
『貴様のせいで‼お前の母親とは遊びだった‼子供ができたから結婚してやったと言うのに‼子供を残して逃げ出しやがってぇぇ‼』
「あ、あぁぁ……」
首を振り、嫌だと言いたげによろめく青年につかみかかり、殴り付ける。
「何をするんだ‼僕の親友に⁉」
もう一度殴ろうとした男を引き剥がし、羽交い締めにしたのはガウェイン。
「ヤードを‼すぐに‼僕の友人は無抵抗の留学生だ‼早く‼」
『ゆうにいちゃん‼やぁぁ‼』
意識を失い、倒れ込んでしまった青年を、お人形のように可愛らしい少女が、
「head‼brother head‼」
片言の英語で、頭を打ったと訴える。
周囲は騒然となったのだった。
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