現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第53話、パディントン駅は、テディベアファンには垂涎の聖地です。

パディントン駅は、ロンドンのパディントン地区にある駅である。
世界的に有名なテディベアのお話は、『くまのプーさん(WINNIE the pooh)』、『パディントン・ベア』、『ルパート・ベア』等があるが、これは3つともイングランドのお話である。

それぞれテディベアであり、ディズニー映画のプーさんはぬいぐるみっぽくアレンジされているが、元々テディベアであり、原作のイラストもテディベアである。
パディントンも、くれないの今いるパディントン駅でいた熊(テディベアから着想している)を家族に迎えた一家と、駅の名前をつけてもらったパディントンが巻き込まれ、巻き起こすとても楽しい物語である。



しかし、プーさんは有名だが、パディントンベアをあまりよく知らない……もしくはプーさんのディズニーのイラストはしっていても、原作は知らないという人もいる。
紅もその一人で、

「熊や……何で熊がおるんかなぁ?」

兄の祐也ゆうやを待っている間に、豪快な妹の紅が、熊のぬいぐるみ……テディベア……や銅像をみる。
それで、近くを歩いていた女性に突撃し、身ぶり手振りで、

『Hi! bear、pretty、name please‼』

指で示し尋ねると、ニッコリと、

「『熊のパディントン』よ?」
「『熊のパディントン』……キュート‼book……」

たどたどしくではあるが、本を読んでみたいと言った紅に、女性は本屋に連れていって、示す。

「わぁ!可愛い‼それに……『くまのプーさん』『くまのルパート』……わぁ、可愛い。でも、皆熊ですか?」
「皆テディベアよ。いらっしゃい」

一冊を女性がもって、奥に入っていくと、本とその奥に飾られていたパディントンベアを購入し、

「パディントンを可愛がってね。それと絵本も、読んでみてね」

と手渡された。

「えぇぇぇ‼お金……」
「構わないわ。それよりも、イングランドの旅を楽しんでね?お嬢さん」

じゃぁと手を振って別れた女性に、

「あ、ありがとう‼」

と手を振り返す。
渡されたぬいぐるみを持つとごつごつしており、がっしりしっかりその上小さいのに想像以上に重く、

「テディベアって言ってたよねぇ。テディベアって……熊のぬいぐるみやろ?ぬいぐるみはフワフワやのに、やけど、この子はガッシリや。でも、かっこえぇなぁ。パディントンベア‼本も読んでみたいけど、ゆうにいちゃんまっとこかなぁ……」

パディントンベアをだっこして、ナデナデしつつ待つ紅の前に、豪華な車が止まる。
出てきたのが、二人の青年。
一人が、道行く人が振り返るこのイングランドの若手実力派俳優、ウェインに、その弟のお騒がせ俳優ではなく、一人の青年。

『わぁぁん‼ゆう兄ちゃん‼』
『ここで喋りよる暇はない‼中はいれ~‼』

と、急いで3人は入って車は出ていった。

『わーん‼ゆうにいちゃぁぁん‼会いたかったよー‼』

兄に飛び付く妹に、

『それよりも、お前なぁ?突撃するなや。お前、英語ほとんど喋れんやろが』
『それは笑顔と、単語で乗り越えたらすむ‼あ、そうや~‼ゆうにいちゃん。みて‼あのね、あの駅の熊みて、あの子はって単語と身ぶり手振りで教えてもろたんよ。そしたらね』

バッグの中から、『熊のパディントン』の第一巻の原書と、テディベアを出す。

『本を見たい言うて頼んだら、本屋さんに連れていってくれて、可愛い~‼って言うたらうてくれた‼』
『はぁぁ‼初対面の人に、そんなこと頼んだんか‼』
『違うよー‼お金払いますって言いかけたら、パディントンベア可愛がってね、本も読んでみてねって言ってた……多分‼』

多分……その一言に、祐也にウェインも方言はわからないにしろ、ある程度聞きとり、呆気に取られる。
勇者である。

『す、すごいね。えっと、紅ちゃんだっけ?僕はガウェイン。ウェインって呼んでくれるかな?』
『……ゆうにいちゃん‼ガウェイン日本語しゃべれるん?』
『あぁ、標準語はある程度』
『えぇぇぇ‼もっと高慢ちきで、根性悪のあのアホ弟と一緒やとおもとった~‼』

その一言に、落ち込むウェインに、慌てて、

「ごめん‼ウェイン‼家の妹、気が強くて、負けず嫌いで、嫌いだって思ったら、とことん嫌うタイプで、モルドレッドをテレビでみて、キモッ……気持ち悪いって思ったみたいなんだよ‼」
『だって、アイツ、ブッサイク‼演技も下手、根性悪い。うちとおない年の癖に、あの態度‼ぶん殴ってやりたいわ‼あきちゃんいじめて‼ゆうにいちゃん‼良いやろ?最近なぁ、おばちゃんの前の旦那の写真をまとに貼り付けて、練習しよったら、センセに『集中力が上がって良いですね‼』って誉められたわ』
『的?』
『あ、ガウェインさん。うち、弓道……日本の弓やね。習いよるんよ。国体……毎年行われる、国の体育大会に出場したんよ。今17やけん、来年、高校卒業したら、大学いくんよ。家の兄弟は、ゆうにいちゃん以外、特待や、頭悪いんばっかりやけんな』

アハハ‼

笑う少女。
その横で、祐也が、説明する。

「一応、俺には二つ上の兄貴の一平いっぺいと、二つ下のこの紅と、その一つ下にひめがいて、俺は普通に受験したんだよ。でも、兄貴と妹二人は高校も大学も特待……その得意な競技を打ち込んでくれる代わりに、本来の入学試験とかなしで進学できる生徒に選ばれてるんだ」
「それはすごいね。あぁ、父の屋敷だ。紅ちゃんのドレスもあるかな?」

車は屋敷の門をくぐったのだった。

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